子育てをしている20代〜50代のパパ200人に、LINE参加型アンケートコミュティ「パパしるべ総研」で毎週アンケートを実施。パパたちのリアルな声を見てみましょう!
日本では、2020年4月に子ども虐待防止の強化を目的とした児童福祉法、児童虐待防止の改正法案が施行され、親などによる体罰は法律で禁止されています。
そんな中、前回お伝えしたように、パパしるべ総研で行ったアンケートの結果、約5割のパパが子どもを叩いてしまった経験があることがわかりました。
今回はその叩いてしまった理由を中心に、叩いてしまうのをやめたい親へのアドバイスも含め、児童虐待に詳しい認定子育てアドバイザーの高祖常子さんにお話を伺いました。
親に叩かれた子どもの気持ちを考えてみる
今回のアンケートでは「子どもを叩いたことがある」と答えた方々には、その理由を聞きました。
ここからはその理由に注目していきます。
今回は、思わず手が出てしまった様々な理由のコメントが寄せられました。
まずはその一部を紹介します。
- 何度言っても立派な口ごたえをするので、ついかっとなってしまいました。(40代)
- 子どもが話を聞かず、動かなかったから。(40代)
- 食べ物を粗末にした。(40代)
- 勢いよく駆け寄ってきた実家の犬を叩いたのを見て、「かわいそうじゃないか」とかっとなって。(40代)
- 絶対に怒られないと思って失礼な態度をとってきたから(40代)
- パーティ中、飲み物をこぼした。(50代)
- きょうだいゲンカした時に理屈の通らないケンカを売ったので(40代)
- 何度言っても辞めないので。ちなみにうちは自分も痛みを感じるよう頭突きをするという自分ルールがあります。(40代)
- 日中からずっと訳もなくグズグズ言うことを聞いてくれず、お風呂でもわざと困らせるような態度だったときに、思わずお尻をパチンとしてしまった。(40代)
- 子どもがかんしゃくを起こし、小さい弟や物、壁、親などに当たっているとき、カッとなってしまい。(40代)
このような理由について、高祖さんはどのように感じているか聞きました。
叩くなどの体罰をする場合、ほとんどはしつけのためというのが理由です。
まず“言うことを聞かないから”や“言っても動かないから”“かんしゃくを起こしたから”など本当に多く聞きますが、そもそもしつけというのは、どういうことなのかを考えてみてください。
叩いて言うことを聞かせるのは根本的な解決になりませんし、子どもを育むことにはつながりません。
痛みや恐怖で制することは子どもの成長・発達に良くないだけでなく、暴力を正当化することにもつながります。
“言うことを聞かない人は叩いていい”と考えてしまうようになった場合、友だち同士の間でも同じような行動をとってしまう可能性も考えられます。
そして、大きなポイントは“子どもの気持ち”です。
なぜ子どもがそのような行動をとったのか?という理由に寄り添う必要があります。
言うことを聞かないのも、動かないのも、かんしゃくを起こすのも、子どもにだって言い分があるのに、コミュニケーションを取らずに痛みや恐怖で制されてしまう。
子どもの気持ちは置いてきぼりです。
子どもも自分の気持ちを伝えることができず、結局何度も同じことの繰り返しになってしまいます。
なので、親たちは子どもたちの気持ちを聞いたり、しっかりと観察して「○○で嫌だったんだね」と言葉にすることが大切です。
その上で、どうしてもやってはいけない場合は、その理由と内容を伝えます。
伝え方は『近づいて短くさっぱり』言うことが原則。それが一番伝わります。
また、パパ自身が自分の中で“これは絶対にダメ”という個人的なルールとして決めてしまっていることがあって、そのルールを破ったときは叩くことを容認している場合もあります。
そもそも子どもが“なぜ良くないか?”ということを理解していないケースがありますし、パパ自身が作ったルールを破ったからといって、叩いていいということにはなりませんよね。
これは今、言われているブラック校則を思い浮かべていただけると分かりやすいと思います。
髪型や服装などさまざまな校則がありますが『決まっていることなんだから、守るのが当たり前だ!』と言った時点で、子どもは考えることをやめてしまいます。
『決まっていても、私はこう思う』という気持ちの表現(意見表明)を奪っているということにつながっているのです。
“食べ物を粗末にする”“動物を叩く”“失礼な態度をとる”“物などに当たる”ということは、確かに大人から見ればしつけとして、ダメだと伝えるべきですが、叩く必要はなく、言葉で伝えることは必ずできます。
叩かれたことでその瞬間だけ反射的に困った行動をやらなくなるかもしれません。
でも、叩くことで恐怖や不安を植え付けてしまっていることも知っておくことが必要です。
しつけが目的であるのならば、時間はかかるかもしれませんが、根気強く伝えて、子どもがどう行動したらよかったのかを自分で考えて理解していくことの方が大切ではないでしょうか?
子どもへの体罰とそうでない行為の違いは?
一方、想像しただけで思わずヒヤッとするこんなコメントから。
- ベランダから飛び降りようとした(50代)
- 他の人にけがをさせそうな場合や命の危険がある場合(50代)
- 小さい妹に対して度が過ぎる悪ふざけ(首に紐を巻くなど)があった時に、とっさに手をあげてしまいました…(30代)
パパやママ向けのセミナーをしている中でもよく質問されることなんですが、こういったコメントのように、子どもの安全を確保するために強く手を引いたり、とっさに強めの口調で制止することは、体罰には当たりません。
これは安全確保です。
子どもをケガや事故から守ることも親にとって大切なことです。
ただし、考え方として、”危険な行動を制する”ときだけです。
また、最後の方のように、小さい子の首に紐を巻くような行動については、その場で制して安全を確保する必要はありますが、その後に叩く必要はありません。
この場合は、年齢にもよりますが、紐のようなものを子どもの手の届く範囲に置かないというように環境を整えることで回避することができます。
もちろん、話が分かる年齢なら子どもに”息ができなくなってしまうから、こんなことは絶対にしてはいけない”と、きっぱり伝えることが大事です。
大切なのは、子ども自身が、なぜ制されたのか?危ないから止められたということを理解することです。
また、少数意見ではありましたが、このような理由もありました。
- 子どもにもふざけてたくさん蹴ってきたとき、足をぶった。(30代)
- 子どもに蹴られたから(30代)
- 暴力を振られたから(40代)
- 朝起こすときに、顔面を打たれて反射的に押し倒してしまった。(20代以下)
こちらについてはどうでしょうか?
やはりやり返してはいけないでしょうか?
朝起こすときに反射的に押し倒してしまったというのは、体罰ではありませんね。
パパ自身、身を守るための防衛反応として反射的にはねのけたのでしょう。
ほかは、叩かれたから、叩き返しているということですね。
これもまた“やられたらやり返す”ことを正当化し、子どももそういう価値観を持つようになってしまう可能性があります。
人によっては“痛みをわからせる”と言う人もいますが、それは言語道断。
やけどをしたから、熱いものに触らなくなったという人もいますが、熱いものに触らない人全員がやけどの経験があるわけではありませんよね。
やってはいけないことを学ぶために、痛い思いをさせる必要はないのです。
そして、もう一つ。子どもに暴力を振るわれたときに、やり返さずにずっと受け止め続けるという親の話も聞きます。
やり返してはいけないと思っているからこそ、こういう行動をとってしまうのかもしれませんが、実はこれもよくありません。
子ども自身が“叩く”という行動を通じて、自分のモヤモヤをスッキリさせることを容認することに繋がるからです。
そうなると、子どもはイライラしたり何かうまくいかないときに暴力を振るって発散させるようになります。
物に当たるという行動も同じです。
とにかくこの場合は叩くことを制して、“叩いてはいけない”と、伝えることが大切です。
そして、『さっきワーってなっちゃったけど、そういう時にはクッションになら叫んでいいよ』など、子どもと相談して解決方法を見つけるようにしましょう。
子育てをしていく中で思うようにいかないことも多く、イライラしてしまうこともありますよね。
繰り返しにはなりますが、だからといって子どもを叩いていいということにはつながりません。
まずは親自身が怒りをクールダウンする練習をしましょう。
怒りをぶつけることは子どもの成長・発達に悪影響を及ぼすのです。
わが子の将来を思うのであれば、叩くことなく、子どもの気持ちを聞きながら、一緒に困りごとを解決していくようにしましょう。
上から威圧するのではなく、子どもの横に立ち、子どもを応援していく関係性を親は作っていかれるといいですね。
アンケートにご協力いただきありがとうございました。
さて!
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<高祖常子>
認定子育てアドバイザー、キャリアコンサルタント。資格は保育士、幼稚園教諭2種、社会教育主事(任用)ほか。
NPO法人ファザーリング・ジャパン理事、NPO法人子どもすこやかサポートネット副代表、認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事、NPO法人タイガーマスク基金理事ほか。子育て支援を中心とした編集・執筆や、叩かない子育て講座ほか、子ども虐待防止や家族の笑顔を増やすための講演活動も行う。
著書は『男の子に厳しいしつけは必要ありません!』(WADOKAWA)、『こんなときどうしたらいいの? 感情的にならない子育て』(かんき出版)ほか、編著は『新しいパパの教科書』(学研)、『ママの仕事復帰のためにパパも会社も知っておきたい46のアイディア』(労働調査会)ほか。3児の母。