政府は、2025年までに男性の育休取得率50%を目指しています。
そんな中、7月31日に厚生労働者が発表した「令和5年度雇用均等基本調査」の結果によると、大幅に増加し30%を突破しました。
数値の上では目標に近づきつつありますが、その実態はどうなのでしょうか?
今回は現場の当事者である公式LINEアカウントに登録している2500人のパパたちに、この結果を受けて感じていることを聞きました。
厳しい意見が続出!現場のパパたちの実感
もう長年日本の課題になっている男性の育休取得率増加。
様々なメディアでも取り上げられる機会が増え、徐々にではありますが、広がりつつあるように感じます。
政府も取得率増加のために様々な施策を講じていて、結果として数値の上では増加傾向が著しい現状です。
今回は、そんな数値を受けて、現場の当事者であるパパたちが感じていることや、見えている実態をアンケートしました。
まずは、このデータについて、パパたちは率直にどのように感じているのでしょうか?
男性の育休取得率30%突破、どう思う?
- それはいいことだ!:31.5%
- 全然まだまだ:42.8
- 本当?もっと少ないでしょ!:18.5%
- 本当?もっと多いでしょ!:1.9%
- その他:5.6%
前の年から17ポイント近く増加ということは、これまでの経緯を考えるとすごいことではあります。
だからこそポジティブな意見も3割ほどありますが、一方で「まだまだ」という、さらに上を目指す声があることも、前向きに受け止められると思います。
それぞれの意見について具体的なコメントを抜粋しました。
それはいいことだ!
- ぐんと上がることで、世の中の流れが変わる!(40代)
- 増えていることについては率直に喜んでいいと思う。(30代)
- 周りに育休をとる男性が増えてきた(40代)
- まだまだとも思いますが、前進していること自体、まずは評価して良いと思います。評価するところから気運が醸成され、さらなる取組が進むと思います。(40代)
- 全国調査で数値が上がっていることは、企業の意識が少し変わってきているという印象を受けます。一方で母集団がどういう企業なのかが気になります。業種によって取りやすい業種とそうじゃない業種があるので、その割合が気になります。(30代)
- 育休取得率が増えてきたという報道が続くことで、さらに育休を取りやすくなる環境への後押しになると思うので。(40代)
全然まだまだ
- まだ周囲で上司から嫌味言われた、祖父母から嫌味言われたなどの声を聞く(40代)
- 所属している会社では90%を超えているため(30代)
- 男性の育休取得は、家族だけでなく、会社も地域も幸せにする。100%目指しましょう!(40代)
- 個別の事情はあれど、70%は育児の大部分をパートナーに任せているということになるでしょうか。仕方ない面もある一方でもっと向上する必要も感じます。(30代)
- 割合は増えているのは良いことだが、依然として3ヶ月未満の短い人が多い。せめて産後クライシスを乗り切れるように3ヶ月程度取れる人が増えてほしい 30代
- 取るべきと言いながらも、結局は男性が育休を取ることはあまり良い目で見られないから。(30代)
- まだまだ環境整備(職場環境、インフラ含め)に積極的に取り組む企業がすくない(30代)
前向きな意見とともに、厳しい意見、ネガティブな印象もあるようです。
一方で気になるのは、「本当?もっと少ないでしょ!」という感想が2割近くいること。
こちらについてのコメントも見てみましょう。
本当?もっと少ないでしょ!
- 有給取ったのに育休取得率の計算に入れられていた。 (30代)
- 大企業のような、恵まれているところの特権。(50代)
- 企業がアピールのために数字を操作しているとしか思えないから。(50代)
- 周りの乳児パパさんできちんと取れている人10人に1人くらいだから。(40代)
- 身近にパパになった人はいても、育休をとっている人はいない。 (30代)
- とるだけ育休のケースが実際に多い事を把握しているため。 (30代)
さらに、その他の声も見ると...
その他
- 取得率より中身でしょう。私の周囲には社会保険料免除を狙って、月末だけ1〜2日育休を取る人が多いです。(40代)
厳しい意見のオンパレード...これもまたひとつの実態だと思います。
続いて、周囲の空気感の変化についてどう感じているのかも聞いてみました。
男性の育休は取りやすくなってきたと感じますか?
- はい:74.1%
- いいえ:25.9%
周囲に育休を取っている男性が増えているという感覚はありますか?
- ある:72.2%
- ない:27.8%
あくまで肌感覚的なものですが、「育休が取りやすくなった」「周りに増えている」という印象についてはいずれも7割を超えています。
裏を返せば、それだけ「取りにくかった」「周りにいない」と感じていた人が多かったとも取れますが、空気感が変わりつつあることは間違いなさそうです。
続いて、取得期間について。
こちらも以前から短期間の育休取得の多さは指摘されてきたところです。
今回は最新の結果から2週間未満が4割近くいることについて感想を聞きました。
男性の育休取得期間2週間未満が37.7%についてどう思いますか?
- 短いと思う:59.3%
- それでも取っただけいいと思う:20.4%
- 実際はもっと短い人が多いんじゃないかと思う:14.8%
- その他:5.6%
「短いと思う」が6割。
やはり同じパパという立場でもモヤモヤするところのようです。
ただ、これは「もっと取りたい」とパパ自身が思っていても、取得できないケースも多くあるものだと推測します。
取得率が今以上に上がったとしても、この「期間」という課題はまだまだ残りそうですね。
政府の目標、男性の育休取得率50%についてはどう思う?
「産後パパ育休」などここ数年で制度も少しずつ変わってきています。
日本政府が掲げる目標は2025年までに50%を突破することですが、この目標値についてはパパたちはどのように感じているのでしょうか?
政府の目標「2025年までに50%」は達成できると思いますか?
- 思わない:46.3%
- 思う:38.9%
- わからない:14.8%
最も多いのは「思わない」で、およそ半数。
こちらもコメントを抜粋しました。
思わない
- 育休中の給与の手取り減少による経済面での打撃が大きすぎるから(50代)
- 年齢、立場、職場環境(人員)等でなかなか取れないと思うから(40代)
- (取得率が高い)大企業の割合をみれば半分はない(50代)
- 方針決定層が育児してきた人達じゃないのに、リアルな声が分かるわけがない(40代)
- 個人的な感触で言えば、育児に関わりたくない・あまり積極的ではない男性にとって「取らなくても普通」という状況が最も望ましいものなのではないかと思ってしまいます。ということはそんなにスムーズに進む話でもないでしょう。(30代)
- 政府は目指していても、それを実行する企業側の努力が必要。(30代)
「企業の規模」「経済的」「企業の努力」というところが多くみられました。
一方で、「思う」と答えた4割近い人たちのコメントはどうでしょうか?
思う
- 取得率が上がらなかった一番の要因は空気だと感じている。自分事でないことは真剣に考えない。取得率が上がったことがニュースになり、世間の空気(これは取らせる側も取る側も)も取らせたほうがいい、取ったほうがいいと、意識が変わる。意識が変われば自分事になり、どうすれば取らせられるか、取れるかと、取る方向に意識が前向きに変わる期待があるから。(40代)
- 数値としてはいくらでもやりようはあるので達成すると思います。(30代)
- 数日の育休をカウントする限り達成すると思います。(40代)
- 余裕でクリアして欲しいという思いも込めて。(40代)
- 公務員は50%を超えるでしょう。民間企業も新規採用を確保するためには、今以上に努力すると思います。(50代)
「達成すると思う」という声は前向きだと思いきや、その中には「数値」への不信感も。
こういった声に共感する人も多いかもしれません。
また「わからない」と答えた人の声がこちらです。
わからない
- 大企業は良いが、人数が限られる中小企業がどこまで対応できるか、また正社員以外の方がどこまで取れるか(心理的に)と思うので。(30代)
- 企業側の努力が感じられない。特に大手企業で。(30代)
- 今のままでは数字だけは達成できても、中身は伴わない(パパが育児にコミットしない、結局ママに育児の負担が片寄る)と思う(30代)
こちらもやはり厳しい見方が中心。なんとなく実態が見えてきたかもしれません。
では、そもそもこの「50%」という目標についてはどう感じているのでしょうか?
男性の育休取得率50%は達成した方がいいと思いますか?
- 絶対達成した方がいいと思う:66.7%
- 出来れば達成した方がいいと思う:25.9%
- 達成する必要はないと思う:7.4%
「絶対」「出来れば」と合わせて9割を超えています。
やはり取得率が上がることについては、少なからず必要性を感じていることは確かであると感じます。
絶対達成した方がいいと思う
- 頭が硬い層にも有無を言わさず育休を取ることは悪じゃない、との認知が広がる(日本人的な、まわりがやるなら......の効果)(40代)
- 休業期間に関わらず、取得の要件として仕事の効率化が前提になるから。(40代)
- 経験しなければ絶対に分からないことがあると思うから。(30代)
- 今手を打っていかないと、これから子どもを授かる世代が本当に可哀想なことになると思う。共働きが当たり
- 男性が育休を取らない限り、女性への子育ての負担が大きすぎ、男女平等とは言えないと思います。(40代)
- 人生の一大事を向き合わないでどうする。(50代)
- パパの子育てがホンモノになるために、中身は別にまずは数値を上げるべきだと思う。(40代)
- 好きで結婚して子ども産んで、妻に投げっぱなしなんてカッコ悪すぎるでしょ(40代)
- 子どもの成長への影響が大きい時期だから(30代)
- 育児(とくに乳児期)が親にとってとても貴重な時間だと思うからです。ありていに言えば、自分の子どもに積極的に関わるつもりがなくて親になる人の気持ちがわかりません。(30代)
- いろいろあるが、我が国の産後の女性の自殺率の高さを考えてほしい。(30代)
- 6ヶ月までの大変さを知ったから(30代)
出来れば達成した方がいいと思う
- パパが育休を取ろうと思う意識、会社がパパに育休を取らせる意識が高くなることはいいことだと思うから(30代)
- 強制は良くないと思う。「取りたい」「自分は取る必要性が有る」と思った人が取った結果が50%以上なら嬉しい。義務は良くない。(40代)
- 当たり前感を醸成できる(40代)
- 数字で世の中の空気が変わるなら達成するに越したことはないと思う。(30代)
- 休んでやることが1番だが、生活費に不安がないように制度が出来てない。若しくは制度が整っても、非正規には、厳しいと思う(50代)
- 子どもと一緒にいられる時間が増えるし、役割分担がしっかりできるから(40代)
一方で、「必要はない」という人たちの声とは。
必要はない
- 50%という数字が1人歩きするのではなく、実態が大切な為(30代)
- 国、企業のアピールのみであり、金銭面でのデメリットがクローズアップされていないから(50代)
- 下々の者には関係ないから(50代)
ここでも厳しい声。そしてやや諦めを感じる声もありました。
最後に、男性の育休について総じて感じていることを聞きました。
男性育休について思うこと
- 「育休をとらなきゃいけない」の義務感ではなく、「育休を取りたい」というワクワク感を持つパパの割合はどのくらいでしょうか?(30代)
- 2週間程度は育休と言えるのだろうか、と思ってしまう(3ヶ月取得した身でも短いと思っている)(30代)
- ありがたいが、女性と同じく給付金が入るまで時間がかかるのがなんとかならないのか(30代)
- パパ同士で集まる場所が必要です(30代)
- まだまだ取りやすい風土や、社会とは言えないと思う。でも確実に今取り組んでいただいている取り組みのおかげで、自分は会社で初めての男性育休を取得でき、今もちゃんと復職し、後ろめたくなく仕事ができています。(30代)
- まだまだ特別なことのように見られる風潮がある。とって当たり前だよねと世間がなっていくのにはまだまだ時間がかかるのだろうと思う。管理職の育児参加してきてないオジサンたちが辞めるのを待つしかないのではとも思ってしまう。(30代)
- 安心して暮らせる給与や、休んでも困らない施策がないと取得は厳しいと思う(50代)
- 会社はとりなさいと言うけど、現場は人員、立場(業務内容)から他の人に負担を強いてしまうと思うと取れない。(40代)
- 会社は取れ、周囲は冷ややか、なところ(40代)
- 強制でないと無理(30代)
- 教育現場の教員の取得率はまだ一桁であり、取得できても教員のなり手不足のため代替教員が確保できない。業界によって取得率に差が大きい。(40代)
- 雇用側も心苦しい判断があるように思う。そこにもなんらかの手助けを。(30代)
- 今は数字だけが先行して中身が伴っているか疑問があるが、ないよりマシだろうと思っています。一方で「子持ち様」という新たな揶揄ワードが出るなど、妙な軋轢が増えていると感じているので、より中身を伴った体制の整備を進めていくべきと思います。(30代)
- 子どもとのかけがえのない温かな時間をぜひ、多くのパパに味わってほしい。(40代)
- 自身は1週間しか取れていないので偉そうなことは言えませんが、今後は長期の育休ありきで皆がキャリアを考えるのが当たり前になって、育休を取る難しさや罪悪感みたいなのが少なくなればいいなと思っています。そのために自分が管理側になった時には全力で応援できるようなマインドや仕組みを作っていかないとなと思います。(40代)
- 実際に育休取得をしましたが、職場の雰囲気は微妙だったように感じます。何故か育休を取る理由を説明する必要があり、男がどうするの?という考えが根底にはあるのではと感じました。(30代)
- 取得率について目安にはなるが、本質的にはあまり意味がないと思っている。男女限らず、育休をそもそも取らないのもあり。単なる取得率ではなく、各家庭の取りたいように取れる率が100%になることのほうが大事。取る取らないの選択が男女含めて自由になってくれれば良いと思う。(40代)
- 職場の業務プロセス改革のキッカケとして欲しい。(40代)
- 全体として充実したものになるか、形骸化するかの過渡期にあると思います。(30代)
- 大企業の育休の埋め合わせは下請けの中小企業が犠牲になっているだけ。報道を見ても大企業のことしかやっていない。身分制度のひとつ。(50代)
- 復帰支援が課題 (40代)
同じ日本で働いているはずの人たちなのに、風土や空気感について「広がっている」「全然まだまだ」という極端な声があります。
これほどギャップがあるのは、きっと全体に幅広く浸透していないからかもしれませんし、また企業やコミュニティによって状況がかなり違うということを反映しているようにも感じます。
育休についてもパパが、そして社会が二極化しているのかもしれません。
取得率という数値についての捉え方は様々。
より多くの人に変化を感じてもらうためには必要なものかもしれませんが、実態や肌感覚が伴わない限りは不信感を募らせることになってしまいます。
パパたちだけでなくママも子どもたちも、そして経営者層も上の世代も実感を伴う数値になっていくことを願い、また必要性を感じている人たちが積極的声をあげていくことで能動的に変えていくことに繋がればと思います。
今回もご協力いただきありがとうございました。
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