かつては当たり前のようにあった父親の単身赴任について、母親への負担や子育ての影響などで賛否が出ています。
そんな中、ようやく単身赴任が終わり子育てのブランクを埋めようと頑張りたいパパからのご相談。
子育てに関われなかった期間があった分、今後どのように家族に関わって行けば良いか。
アドラー心理学を基にしたアドラー式子育ての熊野英一さんから、アドバイスを聞きました。
単身赴任に捉われず、家族とありのまま向き合う
これまでなかなか関わることができなかった分、パパとして夫として頑張って挽回していきたいと思うのですが、どんな心構えで臨めばいいかアドバイスをください!
まずは単身赴任お疲れ様でした。
家族から離れて暮らすことについて、いろいろな思いがあったことでしょう。
また残された家族にもきっといろいろな思いがあったはずですが、それでも前向きに取り組もうとしている姿は素晴らしい!
お役に立てればと思います!
未来志向のアドラー心理学は環境のせいにしない
アドラー心理学の大きな特徴のひとつに「未来志向」があります。
貧しい家庭で育ったから、運動神経が悪かったから、など過去の環境や状況に原因を求めて現状を憂うことは「解説」にはなっても「改善」にはつながりません。
過去の様々な要因のせいにするのではなく、ここからどうするか?ということに着目して前向きに取り組むことを「建設的な対応」と呼びます。
まさに質問をくれたパパは、この「建設的な対応」に向けてのアドバイスを求めている状況だと思います。
乳幼児期において、関わる時間が少ないことは親子関係を築く上ではとても難しい状況だと思えるかもしれません。
また、それは夫婦関係でも同じことだと思います。
もちろん、離れていてもしっかりとコミュニケーションを取ることで保てる部分はあると思いますが。
ただ、だからといって絶対にこの先もいい関係を築けないかというとそうではありません。
世の中には、数年間どころかもっと長い間一緒に暮らしていなくてもいい関係を築けている親子や夫婦はいます。
「単身赴任でいなかったからわからない」と簡単に投げ出すのですはなく、知ろうとすればいいだけです。
前向きに取り組んでいれば、いつの日かそのブランクなどどうでもよくなる日はきっとくるはずです。
人と人が仲良くなるために大切なこと
関係を築くための心構えとして、基本的なことをもう一度考えていきましょう。
人と人が仲良くなるために大切なのは「お互いがありのままの自然体でいられること」です。
大事なのは「お互いに」ということ。
どちらか一方が自然体でいるのではなく、相手が自然体でいることも受け容れられる状況でなく、ガマンをしているのはいい関係とは言えません。
また、相手が条件を満たした時だけ受け容れるというのも違います。
例えば、言うことをちゃんと聞いたときだけ相手と仲良くするといった親子では、よくみかけるような関係も違います。
そういった条件付きの関係はビジネスでは必要ですが、家族では不要です。
ありのままの自然体というと、まるで好き放題やっていいように感じるかもしれませんが、それもまた違います。
他のメンバーへの思いやり、気遣い、配慮することも必要です。
むしろ自然体でいるために、その場所を大事にするからこその協力体制を、大人も子どもも一緒に作ること、アドラーで言う「共同体感覚」が大切なんです。
いいパパになって挽回しよう!と考えない
家族と言えど人と暮らすのはなかなか難しい
質問のパパに伝えたい心構えの一つ目は「家族を尊重するのを忘れないこと」。
おそらく単身赴任中はひとり暮らしだったと思います。
きっと寂しいと感じていたと思いますが、一方で自分のペースで自分のやりたいことが出来る環境の気楽さや居心地の良さもあったと思います。
妻や子ども、特に乳幼児と暮らすときはそのペースを守ることができないケースもたくさんあります。
3年という期間に慣れてしまった一人のペースを手放すのは簡単ではないかもしれませんが、妻や子どもの行動や感情、言動などを尊重することはとても大切なことです。
自分の期待とは違うことも多々あるでしょう。
それでも、尊重することができるか?それこそ心構えをしっかりと持っておくことが必要になると思います。
自分も自分らしく自然体で
また、周りを尊重するがあまりガマンしてばかりだとストレスがたまっていってしまいます。
長い目で見れば自分もありのままでいるための努力が必要です。
そのために持っておいてほしいもうひとつの心構えは「挽回しようと頑張りすぎないこと」です。
質問からは3年間家族と離れてしまったことに対して、どこか後ろめたいと思っている印象を受けました。
もちろん、その期間を乗り切ってくれた妻や子どもに対して、当たり前に思わずに感謝をすることは大切ですが、必要以上にパパが負い目を感じることはありません。
また、そのために「いいパパになろう」「挽回しよう」と思うと無理をしてしまいがちです。
誰かが無理をして築いた関係は長続きしません。
無事に単身赴任を終えて家に帰ってきた喜びを存分に感じる自分の姿を見せることや、家族を愛しているというありのままの姿勢や思いを等身大で伝えていっても充分に伝わると思います。
「ブランクを埋めたい」という思いを持っているのは家族でパパだけです。
それを必要以上に振りかざして「こんなにやっているのに!」と押し付けるようなことにはならないように注意するようにした方がいいと思います。
例え一緒に過ごしている家族でも、尊重し合って生活できる環境を作ることは簡単ではありません。
すぐに結果を求めずに、時間がかかることを認識したうえで一歩ずつ進んでいってもらえたらと思います。
熊野さん、ありがとうございました!
改めておさらいすると…
ポイント
- 単身赴任でいなかったからできない、と諦めずに前向きに取り組む
- 目指すのは、家族全員がありのままの自然体で過ごせる環境
- 家族みんなの思いや行動が望んだものでなくても尊重する
- 自分自身も無理をしていいパパになろう、挽回しようと思いすぎない
「今まで何もしてなかったからできない」というパパの声を聞くことがありますが、そこからだってできることはあるという考えには納得です。
子育てはずっと続くものですから、うまくいかない時も先のことを見据えてゆったりと構えていきましょう!
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