男性の育休取得率が伸び悩む中、議論が進む育休義務化。
2022年の4月からは、妊娠・出産を届け出た社員に対して育児休業制度を説明し、育休の取得を働きかけるよう企業に義務化されます。
そんな中、当事者のパパたちはどのような意見を持っているのでしょうか?
賛成?反対?それとも?
なかなか表には出にくいパパたちの「育休義務化」に対する熱い思いを、LINEコミュニティ「パパしるべ総研」のメンバーに聞いたアンケート結果をご覧ください。
パパたちの8割が「男性の育休義務化」に賛成!
厚生労働省が発表した最新2020年度のデータでは12.65%だった男性の育休取得率。
2019年度の7.48%からは劇的に増えていますが、政府が目標として掲げた13%には届きませんでした。
この現状を変えようと議論されているのが「男性の育休義務化」。
これに対して、当事者であるパパたちはどのように感じているのでしょうか?
男性の育休義務化について、賛成ですか?反対ですか?
賛成:76.6%
どちらともいえない:17.0%
反対:6.4%
賛成が8割近くとなりました。
世の中の流れを象徴するような結果だと感じます。
ちなみに今回のアンケート答えてくれたパパたちの年代がコチラ。
年代を教えてください
- 20代以下:6.4%
- 30代:34.0%
- 40代:40.4%
- 50代:17.0%
- 60代以上:2.1%
30代から40代が7割以上を占めています。
自身が育休を取得するか?というところも含め、同僚などが取得することで影響を受ける世代でもありますが、その世代がこれだけ義務化を支持しているという結果です。
育休義務化へのパパたちの知られざる思いとは
賛成が多いとはいえ、理由は様々。
どんなポイントで選択したのでしょうか?
- 女性の産休の様に義務化しないと会社は動かない、世間は理解しないから。(50代)
- 男女のギャップを埋めるためには義務にする必要がある。(40代)
- そうでもしないと普及しないから。(50代)
- 進まないから。進んで価値観が変化したら廃止にすればいい。(50代)
- 義務化にしないとまだまだ休暇が取れない所がたくさんある。(60代以上)
- パパや企業(主に所属部署)の意識を変えるためにやむを得ないと思います。(50代)
- 義務化しないと本気で取り組まないから。(40代)
- 少子化対策、働き方改革の推進を目的に、時限立法、取得日数の柔軟化など。企業事情に配慮した形なら、効果が見込めると思うため。(40代)
- これまでの施策では成果もあがりにくいので、ある程度の強制力が必要だと思います。(40代)
もはや“仕方ない”という論調の意見が最も多かったです。
一方で、義務化することによる具体的な変化を期待する声も。
- 義務化することで認識、理解のスピードが格段にあがるので。(50代)
- 取りたいけど取りづらいという人が、取りやすくなるのであれば。(30代)
- 育休取得希望の若手男性が多数いる現実を知っているから。(30代)
- 男性は育休を取りづらいので、会社の義務にしてでも取らせたほうが良い。(30代)
- 企業への義務化は女性活躍と一緒で、日本のジェンダー平等推進には必要な施策。(50代)
政策などは周知されても理解が進まないことも多いところがありますが、確かに義務化で多くの人に理解されるチャンスにつながりそうです。
また、4人1人が経験しているという調査結果もあるパタハラの対策につながるという見方もありますね。
続いては、企業や社会ではなく家庭への影響を期待する声。
- パートナーや子どもとの関係構築がこの時期大切だから。女性のキャリア自律には欠かせない要素(パートナーの育児家事チーム化)。 (40代)
- 男性にも平等に家庭の役割を持たせることが大事だと思います。(40代)
- 取る事に抵抗があるし、実際産後の様子から見て妻1人ではとても大変そうだったから。(20代以下)
- 産後の女性が体を休めるためにも、男性がパパとしてアップデートしたり子育ての楽しさを感じるためにも、育休を取得した方がいい理由がたくさんあるから。(30代)
- 効果のない男性もいるだろうけど、一時的にでも義務化することで家事育児に参画する男性の割合が増えれば良いと思う。(30代)
もちろん今回はおそらく実際に育休を経験した男性からも多くの声が届きました。
経験者はどのように考えているのでしょうか?
- 意識ある人は公休でも有給でも育休する。そうでない人は義務化して、いちど体感してほしい。(40代)
- 育休を取って、子どもがいるという新しい家族の形に慣れることができたので。(30代)
- 義務化後の数年間は混乱があると思うが、長いスパンで育休取得が当たり前になったり、家事負担の夫婦差が改善されたり、より子育てを楽しむパパが増えるきっかけになると思う。義務と言われると抵抗感があるが、育休取得した男性の絶対数が増えることで子育てへの意識や育てる環境の変化が起きやすくなる。
自分自身が会社で初めての男性育休取得者になったが、後に続く社員や前向きに検討する社員が増えた気がするので、まずは絶対数を。それからパパの子育ての質を高める順番でいいと思う。(30代)
熱い思いが止まりません。
それほどご自身にとって育休取得がいい影響となったことが感じられます。
そして、20代以下の若い世代からも熱い声が届きました。
- 制度としてあるものの、使用するには正直抵抗があるから。
実際に実務に戻るのも、取得前と同じポジションは難しかったりとか、積み上げてきたものがなくなってしまう恐怖がある。
でも実際それは本人次第であって、多少1、2年で業界の動向、組織の方針転換などあろうが、前者は自身のキャッチアップ、後者は育休中であれ定期的に会社から情報提供していれば解決できる課題だろうと思う。
かつ、義務化されれば、多少抵抗感を持っている自分自身も割り切れるし、社会もそれを当然のものとして徐々に変わっていってほしいという願いを込めて。
義務化されることで抵抗感を感じて出産を避ける男性もあるかもしれないが、それよりもだったら産みたい!と思う人間の方が多いと思う。(20代以下)
単なる賛成だけでなく、自身の不安を踏まえた率直な思いをありがとうございます。
一方で「反対」と「どちらともいえない」という方たちの声はどんなものがあるのでしょうか?
【「反対」の理由】
- 育休を取るか取らないかは、個々の家庭で判断すれば良い。(40代)
- 何がなんでも義務化はおかしい。望めばとれる制度が望ましい。(40代)
- 家族の形態は多種多様であり、給与が下がる育休は義務とまでしなくてもいい。(30代)
【「どちらとも言えない」の理由】
- 核家族では女性一人でやりこなすには負担が大きいと思いますが、義務化しても男の人がしっかりサポートしない限り良い結果にはならないと思います。(40代)
- 育休をとる環境にない職員に負担がかからないよう、代替職員の確保など人事的な制度補償も合わせて議論するべきだと思う。(40代)
- 育休取りたい人がとればいいと思う。義務化まではする必要はないと思う。(40代)
- 育児休暇だとしか思えていないようならアウト。企業の受け入れ姿勢がなければ無理。(30代)
- 保護者が十分に育児できるのであれば、育休に拘らずとも良いと思います。(30代)
全体的に男性の育休取得そのものをネガティブにとらえているわけではないようですが、やはり“義務化”ということや、“準備が整わない状況での義務化”へ懸念があるようです。
また、中にはこんな理由もありました。
- 男性の育休のことをほとんど知らない (40代)
こちらは「どちらともいえない」と答えた方の理由です。
我々ももっと頑張って周知しないといけないですが、来年の改正育児介護休業法では、パートナーが出産する男性へ育休の意思確認や制度の周知が義務化されるので「知らない」ということはなくなるはずです。
その時にこの方がどのような選択をするのかが気になります。
罰則!?テレビドラマ化!?男性の育休を後押しするアイデア
今回のアンケートでは、義務化だけでなく、なかなか取得率が上がらない男性の育休をより推進するためのアイデアを聞きました。
その中には、やはり育休制度を直結する企業に変化を求める声がもっとも多くありました。
- ライフスタイルの変化に応じて転勤の有無や昇進の時期などを選べる働き方の多様性。(40代)
- 社会全体の意識改革、中小企業への支援。(30代)
- イクボスの存在。地域のご年配の皆さんの理解も進んで欲しいかな…。(40代)
- 各企業の取り組みの共有化。(40代)
- 職場の管理職の意識改革。(50代)
- 育休中の社員に対する、会社の情報共有。育休後社員への取得前と同様の待遇。(20代以下)
- 職場に第三者が監査にはいること。(30代)
- 長時間労働の是正、性別役割分担意識の解消。(40代)
- 企業への研修や罰則。(30代)
- 会社の風土改革。(40代)
- 育児休暇を取ることでキャリアにマイナスにならないことの表明。(50代)
- 機関投資家の投資指針への取り込み。(40代)
「各企業の取り組みの共有化」はまさに先だって記事で紹介した積水ハウスが行った「男性育休フォーラム」のような取り組みがつながってくると感じます。
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「第三者の監査」「機関投資家への投資指針への取り込み」「罰則」という企業の外部も絡めた取り組みは確かに有効かもしれませんね。
こちらも企業に関連していますが、その中でも育休取得のハードルとされているお金の面での意見も多かったです。
- 育休期間の手取りベースでの給与保証、ベーシック・インカムなど。(30代)
- 取得者への直接支給の補助金と雇用者への罰則。(30代)
- 代替要員を雇うための企業への補助金、助成。(50代)
- 企業への補助金。(50代)
お金の面で不安があるのは、取得する人だけでなく、企業もそうですよね。
そこまでをバックアップする体制を作った方がいいという意見には、なるほどと思いました。
一方で、企業にとどまらず、もっと広く、社会全体の変化を求める声も多数ありました。
- 男性が女性同様に家事育児するのが当たり前の世間雰囲気づくり、男女賃金格差解消などジェンダー平等。(50代)
- 仕事を休んでも育児をするのが当たり前だという意識。(40代)
- 父親も母親も意識改革が必要。少なくとも1か月は2人で、若しくは父親に任せて育てるのが当たり前になるといい。(30代)
- 男性社会から男性を解放すること。(30代)
- 妻が「ママが頑張る」ことをやめる意識、パパの「稼がないと」という意識を変えていくこと。(40代)
変わってほしいという思いは通じるものがありますよね。
そんな中、具体的な方法をあげてくれた方もいました。
- 自分が取る!「取らないの?」って声かける。要はとりやすい雰囲気づくりを一人一人がやる。(30代)
一人一人ができることもある、という前向きな考えは心強いですよね。
また、そういった社会の変化を促すための方法として知識面でのサポートを挙げる方もいました。
- 夫婦でしっかり子育てについて理解し合うこと。(40代)
- 女性の育休のこともよく知らない人が多いので、まずは周知が必要。(40代)
- 育休の持つ意味・必要性を当事者、上司、同僚に知って貰う。もちろん、世の中全体にも。(60代以上)
- 出産や育児に関する知識を学校教育でやってもらったらどうかと思います。(30代)
- 男性向けの産前講座。(30代)
- 男性(特に年配)の教育。(40代)
- 父親に、自分のことだけ考えていたらダメと教える。(40代)
単純に当事者にあたる男性というだけでなく、夫婦を対象としたもの、当事者になる前の学校教育、さらには、年配男性への教育という幅広いターゲットに向けた知識啓蒙は確かに必要かもしれません。
ちょっと変わったアイデアとしてはこんなものがありました。
- 結婚時の誓約のデフォルト化。(50代)
- テレビドラマ化。(40代)
「結婚時の誓約」というのは、育休を取るなど育児に関わることを結婚時に約束するということですよね。
ちょっと極端かもしれませんが、考えるきっかけになる場合もあるでしょう。
「テレビドラマ化」は斬新!ヒットしなければいけないという条件付きにはなりますが、面白いアイデアです。
最後にこんな手前味噌な声も。
- パパしるべ総研、ファザーリング・ジャパンのような、子育てを楽しんでいるパパの情報発信やコミュニティが増えること。(30代)
なんてうれしい声でしょう。泣けてきます。
我々もこういった活動が少しでも世の中にいい影響を与えることができればと思ってやっていますので、もっともっと頑張ります!モチベーションに繋がるコメント、ありがとうございます!
男性の育休義務化については、アンケートの結果のように様々な意見があり、それによってとらえ方は様々かもしれません。
ただ、今回アンケートに答えてくれた方は、男性の育休を通じて、どうしたら世の中が、子育て環境が、もっと良くなるかを考えているという意味では同じ方向を向いていると感じました。
義務化するかどうかだけでなく、いい形で家族が進んでいける環境ができるために、こういった議論がもっと多く行われる世の中になることが、まず必要なのかもしれません。
アンケートにご協力いただきありがとうございました。
さて!
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