育休取得で男性社員が変わる!? 推進企業のトップが感じた実施のメリット

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育休取得で男性社員が変わる!? 推進企業のトップが感じた実施のメリット

今年6月に改正育児・介護休業法が可決成立し、ますます加速に期待がかかる男性の育休。

そもそも多くの人が前向きにとらえながらも、様々な事情でなかなか一歩が踏み出せない状況があったと考えられますが、中には組織をあげて取得推進に取り組み、ポジティブな効果を感じられたケースもあります。

今回は、そんな男性育休の今、そしてこれからについて考えるため、9月19日の「育休を考える日」を前にオンラインで行われたイベント「男性育休フォーラム2021」のレポートをお届けします。

パネルディスカッションに登壇した、すでに男性の育休取得に踏み込んだ取り組みをしている企業のトップたちが、男性育休で実感した様々なメリットを語りました。

男性の家事・育児時間はコロナ禍で増加

男性の家事・育児時間はコロナ禍で増加

「男性育休フォーラム2021」を主催したのは、積水ハウス。

子育てを応援する社会を先導する「キッズ・ファースト企業」として、ダイバーシティ推進の取り組みを一層加速させるため、2018年9月より「男性社員1ヶ月以上の育児休業(育休)完全取得」(特別育児休業制度)を推進。

対象となる男性社員の育休取得100%を達成し続け、これまでも男性の育休に関する調査をまとめた白書を発表してきました。

今年も様々な調査を実施し、イベントの冒頭ではその成果である「男性育休白書 2021」を発表。

白書の中では毎年話題になる「男性の家事・育児力 全国ランキング2021」の結果(1位:沖縄県 2位:鳥取県 3位:奈良県)や家事・育児に積極的に関与して幸せを感じている男性が増加し、家事・育児時間も増加したという傾向を紹介。

さらに、コロナ禍のリモートワークが男性の家事・育児時間の増加を後押しした実態や、在宅時間で家事・育児をした男性が最も感じたのは「妻への感謝」だったことなど、課題がありつつも育休にとどまらず男性の家事・育児への参画が前に進んでいることをうかがわせる内容がつづられていました。

厚生労働省、雇用環境・均等局 職業生活両立課の加藤課長補佐

続いて、厚生労働省、雇用環境・均等局 職業生活両立課の加藤課長補佐が登壇し、先だって可決成立した改正育児・介護休業法について解説。

【改正の概要】

  1. 男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設
  2. 育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け
  3. 育児休業の分割取得
  4. 育児休業の取得の状況の公表の義務付け 
  5. 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
  6. 育児休業給付に関する所要の規定の整備

男性育休のさらなる推進のカギを握ると期待される制度だからこそ、世の中からの注目度は高く、オンラインで参加した人たちも熱心に聞き入っていたことでしょう。

男性育休で見えた“幸せのビジョン”

男性育休で見えた“幸せのビジョン”

イベント後半は、すでに世の中に先駆けて男性育休を推進している企業のトップによるパネルディスカッション。

登壇したのは主催である積水ハウス代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの仲井嘉浩さん、日本ユニシス代表取締役社長CEO・CHOの平岡昭良さん、サカタ製作所代表取締役社長の坂田匠さんという3名の経営トップに加えて、実際に育休を取得した経験がある認定NPO法人フローレンス代表室長の前田晃平さん。

ジャーナリストで東工大准教授の治部れんげさんがモデレーターを務めました。

今回、積水ハウスが発表した「男性育休白書 2021 特別編」では、男性育休に賛成する人が全体では88.1%だったのに対して、経営者・役員では76.0%にとどまったことをはじめ、様々な面で、企業経営層と一般職層の意識差による「男性育休の壁」が明らかにされました。

そんな中でも特に先進的に男性育休に取り組むトップたちはどのような背景から取り組みを促進したのでしょうか?

積水ハウス代表取締役 社長 執行役員 兼 CEOの仲井嘉浩さん

視察で訪れたスウェーデンのストックホルムにある公園でベビーカーを押しているのが男性ばかりという光景に驚きました。

そして、その姿がかっこよくて、何より幸せそうだったんですよね。

あとで聞いたらスウェーデンでは男性が3か月の育休を取ることが当たり前になっていると。

これはぜひともやりたいと思って、帰国後すぐに担当部署にもちかけたら、1か月であれば対象者が全員育休を取っても業績への影響は大丈夫そうだということだったので、制度をスタートさせました。

積水ハウスは【『わが家』を世界一 幸せな場所にする】というグローバルビジョンを掲げているのですが、まずは社員に幸せになってほしいと考えて進めました。

幸せのビジョンが見えたんです。

(積水ハウス 仲井社長)

“男性育休推進”に先駆けて“ゼロ残業”に取り組んでいた

“男性育休推進”に先駆けて“ゼロ残業”に取り組んでいた

意外な導入経緯を聞かせてくれたのは、こちらも取得率100%を誇るサカタ製作所の坂田社長。

実は数年前まで、男性が育休を取れることを知りませんでした。

男性社員から『取りたい』という相談があって初めて知ったのですが、すぐに直接本人と話しました。そして周囲や上司にも『取りたいならいいよね?』って確認して進めたんですが、スムーズにいきました。

その理由は、そもそもハードルが“低かった”というか“ほぼなかった”からです。

男性が育休を取るときに仕事が属人化してしまっていることが大きな障壁になると思いますが、我々は以前からゼロ残業の実現を目指して属人化しないように整えていたんです。

結果的にそれが男性の育休取得に役立ちました。

(サカタ製作所 坂田社長)

男女を問わず育休の取得には、仕事の属人化だけでなく、代替要員を用意することが必要になるため人材に余裕がある大企業にしかできないと考えられがちですが、サカタ製作所は従業員数151名(2018年12月)という規模で、それでも『男性育休取得率100%』を実現したことは、多くの経営者に踏み出す勇気を与えることになっているのではないでしょうか。

また、坂田社長は育休を取得した男性社員たちにある共通点があることに気づいたといいます。

社員も独身の時と、結婚してからでは、仕事に向き合う姿勢が変わってくるというのは多くの経営者も実感していることだと思うのですが、同じように男性が育休を取る前と後ではすごく変化します。

一人や二人ではなくて全員。
これが最初は不思議でした。
でも、後で理由がわかりました。

短い期間の育休だと男性自身も達成感もあるし、周囲からほめられます。
一方で、女性は達成感もなければ、ほめてももらえません。
男性でも長期間の育休となると、ほめられるようなこともなければ、達成感もありません。
そして、同じような状況にある女性への理解が深まります。

そうすると、とってもいいパパの顔になります。
職場に復帰した後もすごくいい顔です。
仕事に対する向き合い方も変わってきます。

そして、また子どもをうみます。

(サカタ製作所 坂田社長)

坂田社長によると、ゼロ残業を実現してから社員の出生率は3倍。

男性育休を始めたらなんと6倍になったというから驚きです。

少子化の問題にも男性育休はいい影響を及ぼすのかもしれません。

時代のキーワード“多様性”にも男性育休が影響する

日本ユニシス代表取締役社長CEO・CHOの平岡昭良さん

育休を取得することによる男性の変化については、日本ユニシスの平岡社長も男性育休を推し進める大きな要因として挙げます。

厚生労働省の調査によると男性の育休取得率は12.65%となった今でも5日未満の取得が3割近くの中、日本ユニシスでは平均取得日数99日という、取得する長さにこだわっている理由はどんなところにあるのでしょうか?

日本ユニシスはビジネスモデルの変革やイノベーションが起きやすい多様性のある風土を作っていきたいと考えてきました。

その一つが男性育休です。

長くとること、何回でも取ることによって、会社とは違う子育てや家事、社会とのつながりを通じて、様々な社会課題を実感してもらい、その解決に向かってテクノロジーの可能性を引き出して持続可能な社会を作っていくというパーパスを実現したいと考えています。

中には、夜泣き対応を経験したことで、育休中に保育士の資格を取得した社員もいて、復職後は保育園へのサービス事業の責任者となりました。

イノベーションに必要な多様性は、国籍や性別を超えて価値観や役割の違いも受け容れていくことが大切です。

そして自分自身に多様性がないと周りの多様性をなかなかリスペクトできないのではないかと思うので、社内でも複数の役割を持ってもらうようにしています。

そんな中で育休取得はまさに会社とはまったく違う役割ができるわけで、自分自身の多様性を高めるのに役立つと思っています。

(日本ユニシス 平岡社長)

長く育休を取るためには復職後の安心感も大事だと考え、日本ユニシスでは時短勤務だけでなく“中抜け”も可能にするなど多様な働き方を実現するための制度も整えられています。

男性育休で広がる世界

認定NPO法人フローレンス代表室長の前田晃平さん

男性育休に対する経営トップそれぞれの思い。

そこには、実際に育休を取得した当事者の実感値とのギャップはないのでしょうか?

私自身が育休を取ったことで、今まで自分が非常に限られた視点でしか社会を見られていなかったことを痛感しました。

本当に必要なことが家事や育児にコミットしたからこそ見えてきたものがたくさんあって、今の仕事に活きていると感じていることもあります。

取らなきゃいけないから取るのではなく、家族や自分にとっても本当に貴重な機会であるから取った方がいいのだと実感しています。

(フローレンス 前田室長)

また、前田さんは実際に育休を取得した時のことを振り返り、周囲が“取って当たり前”という雰囲気だったことが後押ししてくれたと語りました。

そういう面では、改正育児・介護休業法で、妊娠・出産の申出をした労働者に対して育休について周知することや取りたいかどうかの意向を確認することが義務付けられることは、個人向けの取り組みが多かったこれまでと違って組織へアプローチしてくれたこととして好意的に感じたと言います。

組織として男性が育休を取りやすい風土を醸成するためにも各社様々な工夫をしています。

日本ユニシスではマネージメント層に向けた研修で「もしも部下が育休を取りたいと言ったら」というロールプレイを実施。

もちろん最初にかける言葉は「祝福の言葉」だと伝えるそうです。

積水ハウスは、取得予定の社員に向けたフォーラムを社内で実施し、その際に上司の出席をマストにすることで、取得対象者以外にも理解を深める仕掛けをしたと言います。

サカタ製作所は、経営方針として「男性も育休を取りましょう」と発信をし続けたことで「(育休を)取らないと社長が何か言ってくるんじゃないか」という雰囲気になったと笑いながら話しました。

データの上では男性育休に対する経営層と一般層とのギャップが明らかになりましたが、社員の幸せや企業の成長を願う気持ちは同じはずです。

時代やライフスタイルが変わりゆく中で、2022年4月から法律も変わる今こそ、改めてお互いが何を目指すべきかを考え、先駆けている企業のやり方を参考にして動き出してみる絶好のタイミングかもしれません。

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