周りへの気配りができて、誰にでも優しく、「いい人」と言われるのは素敵なこと。
ただ、もしもその人が気を遣いすぎて疲れてしまっていたら…。
今回は、仕事でも家庭でも周りの人に気を遣うことがやめられず、疲弊しているパパに向けて、アドラー心理学の視点から専門家がアドバイス。
いい人はやめることができるものなのでしょうか?
無理をしない人間関係の作り方や、自分らしさを取り戻すヒントを一緒に探っていきます。
いい人をやめたいのにやめられない理由とは?

自分は昔から周りへ気を遣いすぎてしまうところがあります。
それは家の外だけでなく家族に対しても同じです。
周りからは気配りができるとほめられることが多いのですが、最近は気を遣いすぎて疲れてしまうこともあって、そんな自分を変えたいと感じています。
そんなことはできるのでしょうか?
周りの方が行っている通り、気配りや気遣いができるということは誰にできるものではなくて、あなたの長所でもあると思います。
でも、だからといって疲れてしまうのであれば、あなたの言う通り何か変えた方がいいと思います。
どうしたらいいか、考えていきましょう。
なぜ疲れてしまうのか?
人は自分らしくありのままでいられることで幸せを感じることができます。
自分が心からやりたいことをしたり、感じるままに感情を表現したり、素直でいることは心地いいものですよね。
あなたが周りの人のためを思って気配りや気遣いをしていることが、心からやりたいと思っていることであれば、それほど疲れることはないはず。
むしろ心地いいかもしれません。
ただ、それがどこかで無理をしているのであれば、疲れてしまうと思います。
質問を読む限り、あなたは今まさにそんな状態ではないでしょうか?
自分よりも周りの人を優先している現状は無理をしていることによって、ありのままではなくなっているのかもしれません。
周りの人へ配慮したいという思いは本当だとしても、それが必要以上に過度になってしまっていることも考えられます。
赤面症の少女の話
アドラー心理学でよく引き合いに出る話があります。
ある日、アドラーのところに少女が悩みを相談しにやってきました。その少女の悩みは緊張したり、恥ずかしいと感じたりすると顔がりんごのように赤くなってしまうこと。そのため、恋愛をすることができないので、どうにか変わりたいというのです。
少女に対してアドラーは、「恋愛ができないのは顔が赤くなることが原因ではないと思う」と話しました。
「顔が赤くなるから恋愛がうまくいかない」というのは少女が思い込んでいるストーリーであり、必ずしもそうとは限りません。世の中には顔が赤くなる人でも好きになる人がいる可能性も十分にあります。
少女は自らそう思い込むことによって、恋愛で失敗することを回避して傷つかないようにしているかもしれないと、分析したのです。
アドラー心理学ではすべての行動や言動は自分で決めているという「自己決定論」という考え方がありますが、それに当てはめると少女は「変わりたい」と言いながらも、自ら「変わらない」ことを選んでいると考えられます。
この場合、変わらないことで、振られて傷つくことを回避できるというメリットがあり、少女はそれを選んでいるとアドラーは考えたのです。
この話、あなたにも通じるものがあると思いませんか?
いい人をやめるために性格を変えることはできるのか

あなたが気を遣う理由
アドラー心理学では、その人の考え方や行動パターン、性格のことを“ライフスタイル”と言い、それはおおむね10歳くらいまでに形成されることが多いと考えます。
周りの人に気を遣いすぎるライフスタイルは、幼いころの経験が影響していると考えられます。
「周りの人に嫌われないためにはいい人でいなければいけない」「自分のことよりも周りの人を優先すべき」といった思い込みはありませんか?
とはいえ、実際にいい人でいることには、周りからほめられたり、頼られたりするというメリットもあります。
だから簡単には手放すことができないし、いい人でいることをやめたら周りの人が離れていってしまうという恐れを感じている。
結果、疲れるとしても現状を変える選択に至っていないように感じます。
でも、やっぱりそれではどこかで限界がきますし、あなた自身がありのままでいられて、幸せを感じることこそが本来の目的のはずではないでしょうか?
いい人をやめても離れない人が必ずいると知る
アドラーはこんな言葉を残しています。
アドラー心理学のポイント
ライフスタイル=性格は、自分の誤りに気づき、人と協力して幸福を目指すとき、変えることができる
このままじゃいけないと誤りに気付いたとしても、変わらないことのメリットと変わることのリスクを感じている以上、自分一人で変わることはなかなか難しいものです。
そんなときは周りの人の力を借りることも必要です。
そもそも、あなたはいい人でいることをやめた時に、全員離れていってしまうでしょうか?
きっとそんな人だけではないはずですし、それで離れてしまう人、つまりあなたが無理をしていることを是とする人とはいい関係でいられるとは思えません。
あなたがありのままの姿を見せても、そのあなたを認めてくれる人は必ずいます。
もう少し周りの人を信じてみてはどうでしょうか?
もしかしたら、周りの人を信頼できていないことが、あなたが周りに気を遣いすぎる原点なのかもしれません。
シンプルに今の悩みを信頼できる人に相談することもひとつの方法ですし、今までであれば無理をしてでも応えてきた依頼をきっぱり断って、自分のことも大事にする練習をしていくこともいいと思います。
きっとあなたが思っているよりも、はるかに多くの人があなたの思いに共感して協力してくれると思います。
まずは、周りの人たちを頼るところから始めてみてはどうでしょうか?
熊野さん、ありがとうございました!
改めておさらいすると…
ポイント
- あなた自身が“ありのまま”でいられることを大切にしてみる
- 自分のライフスタイルが思い込みでできていないか、見直してみる
- 本当に変わりたいのであれば、周りの人を信頼してみる
自分を変えることは大変なので、変わらないことの方が楽な選択なのかもしれません。
ただ、そのままでは続かないと気づいたのであれば、勇気をもって一歩踏み出してみませんか?応援しています!
著書のご紹介
また、熊野さんのアドラー式コミュニケーションの講座では、家庭はもちろん仕事でも使えるコミュニケーションのコツを学ぶことができます。
「子育てが思い通りにいかない」「仲良くしたいのに夫婦関係がギクシャクしてしまう」「職場の人間関係がうまくいかない」など、悩みを抱える方は自分で解決できるためのコミュニケーション術を学びます。
こちらも気になった方はぜひチェックしてみてください!
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