子育てにコミットしたらハマってしまったパパ。
家のことが楽しいのはいいことですが、一方で仕事への情熱が冷めてしまったことに悩んでいるようです。
以前はやりがいを感じていた仕事も、育休復帰後には気持ちが乗らないという人は少なくありません。
どうしたら仕事のやる気が復活するのでしょうか?
アドラー心理学のスペシャリストの熊野英一さんから、育児と仕事の間で揺れる心に寄り添いながら、やる気を取り戻すためのアドバイスを頂きました。
やる気の源になる「達成」と「承認」


以前は仕事が好きだったのですが、1年間の育休から復帰しましたら、なんだかやる気が出なくなってしまいました。
今は家で家事や子育てをしている方がずっと楽しいし、やりがいもあると感じています。
とはいえ仕事をしないと生活できないので悩んでいます。
どうしたらいいでしょうか?
まずは家に生きがいを見つけられたようでそれは本当によかったと思います。
仕事は転職できても家族は仕事のように変えるのが難しいので、家が楽しいということは本当に素晴らしいことです。
ただ、確かに仕事も大事。どうしたらそのやる気を取り戻せるか考えていきましょう。
家の中の方が得やすい感覚がある
今回は、まずあなたに伝えたいアドラーの言葉をお届けします。
アドラー心理学のポイント
人生で大切なのは、誰かの役に立つこと。
その意義を見つけた人だけが、困難を乗り越えられる。
自分がしたことが誰かのためになっていることを実感すると、繋がっているという感覚や、貢献していると感じられるものです。
そしてそれは自分の存在を肯定することになり、例え困難があっても前向きに向かっていける勇気になるでしょう。
これこそ、まさにアドラーが言う「共同体感覚」。
繋がり、互いに貢献し合うことで、力を合わせて前に進む推進力になりえます。
仕事の中には、自分がしていることがちゃんと役に立っているのかが実感しにくいケースも多いと思います。
例えば、会社やプロジェクトの規模が大きいケースや、サービスを実際に使っているユーザーの声を聞くことができないケースなどは想像しやすいと思います。
一方、一緒に生活をしていて、目の前にいる家族にダイレクトに影響する家事や子育ては、何かをすると、パートナーや子どもたちが目の前で喜んでくれるなど、反応もダイレクトであることが多いと思います。
そう考えると、自分は誰かの役に立っているという感覚は、仕事よりも家庭の方が得やすいことが多いと思います。
そこにあなたのやる気の源が関わっているのではないかと想像します。
良好な関係があってこそ
ビジネスの世界でもよく言われることですが、「達成」と「承認」は多くの人間のやる気の源になると言われます。
何かを成し遂げたときに得られる「達成感」という喜び。
また例え達成できなかったとしても、その頑張りに対して「よくがんばった」とか「大丈夫、よくなってきている」といったねぎらいや努力を認められる、すなわち「承認」があると、モチベーションは上がります。
今、あなたはきっと家の中でそんな「達成」と「承認」を十分に得ることができているのではないでしょうか?
例えば、工夫して料理に挑戦し、作り終えた達成感と、それを食べて「おいしい!」と笑顔で承認してくれる家族がいるといったことです。
もちろん、それも当たり前のことではなく、家族が良好な関係を築けているからこそのことで、そこは普段のあなたのファミリーマネージメントがあってこそだと思いますが、少なくとも、そういう意味でとてもエンゲージメントが高い状態にあるのでしょう。
きっと今までは仕事でもそういった感覚を得ることができていたのかもしれませんが、それを家庭と比較してしまい、「家庭>仕事」となっているのかもしれません。
それ自体は決して悪いことではないですが、仕事についてももう一度見直してみましょう。
やる気の源は見つけるもの

その仕事は本当に役に立っていないのか?
ここで、もう一度、最初に伝えたアドラーの言葉を見てみましょう。
アドラー心理学のポイント
人生で大切なのは、誰かの役に立つこと。
その意義を見つけた人だけが、困難を乗り越えられる。
大事なのは後半。「その意義を見つけた人だけが」とあります。
誰かの役に立つことは、「わかりやすいもの」と「わかりにくいもの」があるんです。
今のあなたにとって家庭は「わかりやすいもの」で、仕事は「わかりにくいもの」だと感じているのではないでしょうか?
そして、わかりやすさとは関係なく、どちらも役に立ってはいます。
どのように役に立っているかを気づけるかどうか?そこはあなた自身にかかっているんです。
もしかしたら今は家庭のことに注目が行っているかもしれませんが、もう少し広い視点で考えてみてください。
あなたがしている仕事は、目の前にいる誰かに「おいしい」と言われることもなければ「ありがとう」と言われることでもないかもしれませんが、どこか遠くで困っているたくさんの人を笑顔に変えているかもしれません。
さらには、巡り巡っていつかあなたのパートナーやお子さんの笑顔に繋がっているかもしれません。
家族と仕事のやりがいを比べることはしなくていいのです。
どうか想像力をフル活用して、もう一度自分の仕事のことを考えてみてください。
一人で見つけなくてもいい
ただ、家庭に注目が集まって視野が狭い状態ではうまく見つけられないこともあるでしょう。
そんな時は、一緒に仕事をしている人やお客さん、取引先の人に聞いてみてもいいです。
もしかしたらあなたとは違う視点でその仕事の素晴らしさを教えてくれる人がいるかもしれません。
仕事を変えて、今の自分の感覚にフィットしたものを探すことも選択肢のひとつだとは思います。
簡単ではないかもしれませんが、あなたやあなたの家族にとってはその方がいいかもしれない。
ただ、それは今の仕事のことをもう一度見直してからでも遅くはないと思います。
今まであなたが頑張ってきた仕事にはきっと誇りもあると思います。
家族が大事なことは素晴らしいことですが、その歩んできた道や、ともに頑張ってきた仲間のことも含めて、前を向いてみてもらえたらと思います。
熊野さん、ありがとうございました!
改めておさらいすると…
ポイント
- やる気の源になる「達成」と「承認」は家庭の方が得やすい
- 家庭と仕事を比べない
- いろいろな人の声を聞いて視野を広げ、仕事のやりがいを探してみる
家族で笑いあう時間を過ごすと、仕事をするのが嫌になることもありますよね。
でも、その仕事は生活のためというだけでなく、実は多くの人を助けているのかもしれない!結局はどっちも大事なことですよね。
ぜひ前向きに頑張ってください!
著書のご紹介
また、熊野さんのアドラー式コミュニケーションの講座では、家庭はもちろん仕事でも使えるコミュニケーションのコツを学ぶことができます。
「子育てが思い通りにいかない」「仲良くしたいのに夫婦関係がギクシャクしてしまう」「職場の人間関係がうまくいかない」など、悩みを抱える方は自分で解決できるためのコミュニケーション術を学びます。
こちらも気になった方はぜひチェックしてみてください!