人はなぜ「男の子だから」「女の子だから」と性別の偏見があるのか?

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人はなぜ「男の子だから」「女の子だから」と性別の偏見があるのか?

このところ、「男は仕事、女は家庭」というような性別役割分担意識を見直そうという動きがありますが、その価値観の中で育ってきた我々からすると、つい子どもに対して言ってしまうことがあるもの。

今回はコミュニケーションの専門家でアドラー式子育ての熊野英一さんに、アドラー心理学の視点から見た性別的なバイアスがかかった発言を紐解いてもらいました。

なかなか拭えないジェンダー・バイアス

なかなか拭えないジェンダー・バイアス

質問者

保育園の年長クラスに進級した息子が、いわゆる「女の子っぽい」色や、柄、キャラクターなどが好きなのですが、新しく担任になった先生から「女の子みたいで、かわいいね!」と言われたと、ムッとして帰宅しました。

先生も悪気はなかったと思うのですが、私もモヤモヤ。

でも、振り返ると家庭内で妻も私もそうしたジェンダー・バイアスに基づいた会話を無意識にしているかも、と気づかされました。

バイアスをゼロにすることは難しいと思いますが、子育てをする上で気をつけることはありますか?

私が株式会社子育て支援を創業して、保育や幼児教育の世界に飛び込んで以来、気づけば15年近くが経過しました。

振り返ると、日本における子育ての環境も色々と変化していることに気がつきます。

プラスもマイナスも色々あげたらキリがありませんが、男性が育児に向き合う時間が増え、「子育てを手伝う」というような意識から「子育てに積極的に関わる」ことが当たり前、という風潮が少しずつでも、確実に広がって来ていることを、とてもうれしく感じています。

これは

「子育てや家事は、女の人が担当するのが当たり前」

「その代わり、男性が外で労働して家族の生活費を稼いでくるのが当たり前」

といった、性別による役割意識に関する偏見(ジェンダー・バイアス)を、男性も女性も手放すことができるようになって来たこその結果、ということもできそうです。

一方で、そのようなジェンダー・バイアスを男性も女性もなかなか拭えないものだな、と感じることもあります。

先日も、男女共同参画をテーマにしたシンポジウムで、食事づくりや子育てを妻よりもたくさんしている男性に対して、司会者の女性が

「○○さんは、おうちでは、お母さんなんですね!」

と、悪気もなく、むしろ「(男性なのに)そんなに家事も育児もやるなんて、まるでお母さんみたいですごい!」とほめるような口調だったことが気になりました。

この女性の司会者の中にも、明らかに、無意識の偏見がありますよね。

こんなエピソードを他山の石として、自分自身の中にもそうした無意識の偏見がないだろうか?と見つめ直すことも大切だと感じました。

あなたも自分特有の色メガネで見ているのかもしれない

あなたも自分特有の色メガネで見ているのかもしれない

アドラー心理学には「人間は、自分流の主観的な意味づけを通してものごとを把握する=認知論」という基本理念があります。

誰もが自分特有の色メガネ越しに物事を見ているということですね。

自分の育った環境や、その中で培った正義や常識は、もしかしたら、他の環境で育って来た人から見たら非常識この上ないことかもしれないのです。

ご質問の中に登場する年長クラスの担当の先生の中にも、全く悪気がなく「女の子らしさ」「男の子らしさ」という固定観念(色メガネ)が芽生えてしまい、思わず「女の子みたいで、かわいいね!」と言ってしまったのかな、と推察します。

では、もしもそのようなことを言われた時には、どのように対応することが望ましいのでしょうか?例えば・・・

「先生がそう思うのは、先生の考え方だから別にいいけど、僕は、そんなこと言われてもうれしくないよ」

年長さんのお子さんにはなかなか難しいかもしれませんが、そんな風に、相手の発言を一旦は受け取めつつ、自分自身の思いも正直に、遠慮なく伝えられると、お子さんもスッキリするのではないかな、と思います。

もちろんこの時に「あなたは間違っている」と反論する必要はありません。

そもそもかけているメガネが違うだけで、どちらが正しいかということではないのですから。

まずは自分たちから気をつけて生きましょう。

例えば、下記のようなことを知らず知らずのうちに、思ってしまったり、言ってしまったりしていませんか?

  • 男の子なんだから・・・
    (泣いちゃダメ、ピンクを選ぶなんて変、スポーツができなきゃなど)
  • 女の子なんだから・・・
    (おしとやかに、格闘技を習うなんておかしい、料理ができなきゃなど)
  • お父さんなのに・・・
    (平日から子どもと遊んでいるなんて、一家の稼ぎガシラじゃなきゃなど)
  • お母さんなのに・・・
    (バリバリ仕事しているなんて、掃除や料理が苦手なんてなど)

家族や友人との間の会話や、お仕事で関わる子どもたちとの会話の中で、無意識の偏見に基づく発言をしてしまっていないか、今一度、振り返ってみましょう。


熊野さん、ありがとうございました!

改めておさらいすると…

ポイント

  • 家事や育児に関するジェンダー・バイアスは少なくなってきているが、いまだに残る部分もある
  • アドラー心理学の基本理念にある「認知論」では、人間は、自分流の主観的な意味づけを通してものごとを把握するとされている
  • 正面から反撃せずに、まずは自分たちがしていないかを振り返ってみよう

本文の中でもあるようにジェンダー・バイアスの多くはあまり意識していない中で出てしまうことが多いと思います。

自身の発言を振り返ることも必要だと思いますが、時には、夫婦などでお互いの言葉にバイアスがかかっていたら注意し合うことも必要かもしれませんね。

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