まさかうちのパートナーは大丈夫だろうと思っていても、誰にでもなる可能性があるという「産後うつ」。
ちゃんと知っておく必要がありますよね。
今回はシリーズ第1弾としてそんな産後うつの基本情報について「すべての家族に産後ケア」を目指して、産後ケア普及の活動をしているNPO法人マドレボニータのファウンダー、吉岡マコさんに聞きました。
5人に4人は産後うつを体験!?
今回はマドレボニータが2016年に出産を経験した女性1,000人以上を対象に行ったアンケート調査の結果を基にお話しを伺いました。
まず、産後うつとはどのようなものなのでしょうか?
「この調査では、産後うつを産後2週間から1年程度の間に以下のような症状がでたものと定義しています。
- 精神的に不安定になる・自信がなくなる
- 行動するのがおっくうになる
- 判断能力が衰える
- 感情表現が少なくなる
もちろん症状の種類や強弱は人によって違いますが、アンケートではかなり多くの産後女性がこのような症状を感じた経験があるようです。
精神科などの医療機関にかかって、産後うつの診断を受けるケースは5%程度と少ないですが、私たちはそれと同じような症状がありながら受診をしていない状態を『産後うつ未満』としています。
アンケートの回答で『産後うつの一歩手前だった』と答えた人を含め、何らかの症状を感じた人は、80%を越えているのがわかります。
このように産後うつの症状は決して珍しいことではなく、誰にでも起こりうることなのです。
リスクはいつまで続く?
産後うつというと、出産から間もなく起こるようなイメージがありますが、産後どのくらいの期間に備えていればいいのでしょうか?
リスクがもっとも高いのは産後2週間頃。
出産直後は大仕事を成し遂げた達成感や赤ちゃんのかわいさを感じて、少しハイになっているような状態です。
そこから、ふと我に返るタイミングが2週間後くらいです。
ホルモンバランスも整っていない中で、体へのダメージは想像以上、なのに、やることはいっぱいだし、赤ちゃんをちゃんと育てなければいけないというプレッシャーもあって、追い詰められていくような状況になってしまいがちなのです。
特にそれが初めての出産だと、わからないことが多いのでよりキツいと感じると思います。
産後うつになる人は圧倒的に初産の人が多いです。
また、産後3ヵ月くらいまで、産後の早い時期にうつになるリスクが高いと思われていますが、もっと後に発症するケースも珍しくありません。
1年後くらいまではリスクの高い状況が続きます。
出産から数ヶ月が経って、もう大丈夫と気を抜くことはできないのです。
また、産後1ヵ月のタイミングは特に注意が必要です。
里帰り出産をはじめ、産後1ヵ月の産褥期については、出産前からサポートをしてもらう準備をしていることが多いと思います。
双方の実家からご両親や兄弟姉妹が来てくれたり、パートナーが育休を取ったり、つまり何人かで協力して子育てをしている環境です。
そして、1ヵ月を迎えると赤ちゃんにとって初めての検診があります。
ここで、医師などに診てもらって、問題なく成長している、育てられていると言ってもらえると、ホッとします。
今まで手探りでやってきたことが間違いなかったと初めて家族以外に、しかも先生に認められる瞬間。
母親になったばかりの身としては本当にうれしいですよね。
そして、ホッとするのは母だけではありません。
それまでサポートをしてきたご両親や兄弟姉妹、もちろん父となったばかりの男性もまたホッとすることでしょう。
しかし、そこに落とし穴があります。
ホッとしたことでサポートの手を緩めてしまうのです。
そうなると今まで何人かで協力してきた子育てを母親一人が担うこととなってしまうのです。
突然、負担が大きくなることで追い詰められてしまう母親は少なくありません。
検診で問題ないと言われ、ホッとすることも悪い事ではないですが、子育てはこれからまだまだ続いていくもの。
支える人たちは、そこで気を緩めずに少なくとも3ヵ月くらいまでは、いつ産後うつになってもおかしくないくらいの心構えで産後女性の変化を見逃さないようにしてください。
体力的な問題だけではない、メンタルダメージも引き金に
産後の女性の体は大きなダメージを負っているものです。
産後うつの原因はやはりそこが大きいのでしょうか?
主な原因は、産後の体のダメージというフィジカルの部分と、孤独感やプレッシャーといったメンタルの部分の2つがあります。
ただしそれは、それぞれ別々の問題ではなくて、リンクしています。
まず、体のダメージについて。
産後の体は、本来3週間ほど入院していてもおかしくないほどのダメージを負った状態です。
日常生活にも支障をきたすほど。
だからこそ一刻も早く回復したいところですが、授乳や夜泣きがあるので充分に眠ることができません。
十分に休める環境が整っていないと、なかなか体力が戻らないのです。
そして、この寝不足な状態に加え、子育てのプレッシャーがメンタルにもよくない影響を与えます。
とてもイライラしやすい状況となり、周囲に当たってしまうことも増えますし、一方で、周囲に当たっている自分への自己嫌悪にも苦しみます。
「いい母親にならなくてはいけない」「世の中の母親はみんなやっていること」そういった考えに追い詰められてしまう人も多いのです。
また、より精神的に辛くなる原因となるのが、孤独感です。
赤ちゃんがいて外出できないという物理的な閉塞感。
それに伴って友人や同僚に会えなかったり、買い物を通してしか社会とつながれない、ということに気づいて、社会から疎外されていると感じてしまいます。
最近は、そういう中でSNSでも孤立感を感じるケースもあるようです。
SNSで出産したことを報告すると、今までにないくらいのたくさんのいいね!がついたり、祝福コメントが寄せられます。
しかし、その後はメッセージもパタッとなくなってしまう。
もちろん周囲の人たちは、今は大変だろうからと気遣っているだけなのですが、そのいちばん大変な時期に、誰ともつながれない孤独感、そして、祝福の空気感とこの孤独感のギャップに心を痛めてしまうのです。
コミュニケーションが減ることで、辛さや悩みを吐き出せない辛さ。
また、周囲は子どもが産まれて幸せだろうと思っている時に、辛いとか苦しいと言ってはいけないのではないかという気持ちにもなります。
体も心もボロボロの状況。なのに、出口が見つからない。
そんな追い詰められた状況は、もちろん自分の気持ちや、ちょっとした行動で抜け出すことは難しいので、周囲の支えが必要です。
もちろん、一番近くに居るパートナーがその役割を果たすことが望ましいのですが、仕事が忙しく時間的な余裕がなかったり、体が回復していない状態で新生児の子育てを一人で担う大変さを想像できないなど、いろいろな事情でうまくいかないことも少なくはないようです。
産後うつがこんなにも身近な存在であるとは驚いた人もいるのではないでしょうか?
では、もしパートナーが産後うつになってしまったらどうしたらいいのでしょうか?
第2弾では産後うつの対応方法についてお伝えします。
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シリーズ「産後うつ」第2弾 男性がなることも!?対策法は?
最近耳にする機会が増えている「産後うつ」。 第1弾では、その基礎知識を紹介しました。 今回、第2弾では予防することはできるのか?なってしまった時の対応について、「すべての家族に産後ケア」を目指して、産 ...
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