子どもたちは競争が大好き。
常にいろいろなことを競うほど競争心が強いですが、時にはそれがケンカになってしまうことも。
兄弟姉妹の場合、親としてはどっちもかわいいんだけどなーと悩ましいところ。
そこでパパしるべ読者さんからの質問について、アドラー式子育ての熊野英一さんから「子どもたちにどのように接すればいいのか?」教えていただきました!
アドラー式子どもの成長テーマに着目
女同士のライバル心の強さに驚く毎日です。
動画を流しながら、懸命に歌い踊って「パパー、どっちが上手だった?どっちがかわいい〜?」と審査を強要されます。
絵を描いても「どっちがうまい?どっちが1番?」と勝ち負け、優劣にこだわる二人。
負けん気が強いのは良いことかもしれませんが、審査結果を告げると、片方は泣いたり落ち込んだり、それを慰めるのも大変です。
どうしても長女の方が2歳年上の分だけ有利なのですが、だからと言って下の子に下駄を履かせるとそれもバレて「ちゃんと審査して!」と責められます(笑)。
どうしたら良いでしょうか?
微笑ましい光景ですね、と言えるのは第三者だから(笑)。
おそらく、パパは大変な思いをしながら子どもたちのリクエストにどう答えれば良いのか、お悩みのことでしょう。
ご質問に「女同士のライバル心の強さ」とありますが、実際には、性別はあまり関係ありません。
兄弟姉妹というものは、年齢が近ければお互いをライバル視し、その中で切磋琢磨しながら自分の生き方、人格、キャラ(アドラー心理学ではこれをライススタイルといいます)を設定して行くのです。
現代アドラー心理学では、ライフスタイル(性格)は概ね10歳ごろまでに形成されると考えています。
ここでは、児童発達心理学の大家、エリク・エリクソン(1902—1994)が示した年齢区分別の心理社会的発達の考えに基づき、生まれてから最初の10年程度の間に、人間がどのように成長していくのかを振り返ってみましょう。
0−2歳の乳児期におけるテーマ:「私は世界を信じることができるだろうか?」
乳児期の子どもにとっては「世界=母親」と言えるでしょう。
授乳を通した母親(固定的な養護者)との関わりが充分でないと、達成すべき発達課題である「基本的な信頼」よりも、「不信」を前提とした世界像を持ったライフスタイルを形成するかもしれません。
2−4歳の幼児前期におけるテーマ:「私はありのままの私で良いのだろうか?」
例えば、トイレトレーニングするこの時期、排泄の失敗を繰り返した場合にダメ出しされることが続いたら「私はありのままの私で良いのだろうか?」というこの時期のテーマに対して、「疑惑や恥」の感覚を不必要に強める可能性があります。
4−5歳の幼児後期におけるテーマ:「私は自分が思ったように動いたり行動を選択したりしても良いのか?」
この時期になると、兄妹姉妹を含めた家族との関係性の中で、探究心を発揮して行動範囲を広げ、新たな活動にチャレンジしはじめます。
ここまでの成長過程で、世界に対する基本的な信頼を確保し、また、ありのままの自分でOKなのだという自尊感情が充分に育まれていれば、この時期の発達課題である「積極性」を獲得することは難しいことではないでしょう。
一方、親や周囲の大人が過度に制限を加えたり、大人の価値観に従わせようとしたりすることが重なると、子どもは自分らしく行動しようとすることに「罪悪感」を感じるようになっていきます。
子どもが本当にほめてほしいのは結果じゃない
ご質問のご家庭の二人の女の子は、どうやら自尊感情も充分に育まれ、「積極性」はバッチリ!と見えますが、この後、5〜12歳の児童期に、姉妹間で「過度の他者比較」の呪縛にとらわれてしまうと「不健全な劣等感」を増幅させることになるかもしれませんので、周囲の大人の関わり方が大切になります。
5−12歳の児童期におけるテーマ:「人々やモノが存在する世界で、私は自己成就できるか?」
毎日規則正しい生活をすること、勉強、スポーツ、芸術など何にしても練習を繰り返していくことなど、「日常的な勤勉」が発達課題となります。
困難を克服する勇気をもって、あきらめずに取り組むことで達成感を得たり、自分に対する有能感を感じたりしながら、自尊感情を良い状態に保てるか?
それとも、他者との比較や、結果だけを過度に意識することで「不健全な劣等感」を抱え込んでしまうか?
私たちは、10歳程度になるまでに、親や兄弟姉妹、友人や先生などとの関わりの中で、充分な自己肯定感を土台にしたライフスタイルを確立するか、謎の罪悪感、謎の自己否定に基づく「おかしなクセ」を伴うライフスタイルを選択するかを決めていくのです。
子どもは親をはじめ周囲の大人(保育園や幼稚園の先生、祖父母など)から「注目」してもらうことを求めています。
時に、「ほめて欲しい」「評価して欲しい」「1番と言って欲しい」と他者との比較の上で、自分が優れていることを認めて欲しい、というリクエストをしてくるかもしれませんが、子どもが心のそこで求めているのは「結果がよくても悪くても、ありのままの私でOKと認めて欲しい」という承認欲求なのです。
まだ小さいうちは、「なんでも1番」「いつも1番」という子どもらしい願いを持つかもしれませんが、兄弟姉妹間の競争や、友達との比較ができるようになると、それは無理な話だということに気づきます。
その時に周囲の大人(特にパパとママ)が
「私たちは、あなたの行動の結果だけをみて評価しているんじゃないんだよ。
結果が良くても悪くても、あなたがあなたらしく何かにチャレンジしているその行動やその姿が大好きで、それを見ているんだよ。
そして、そういう、あなたという存在そのものが大好きなんだよ。」
と伝えることができたら、子どもは謎の罪悪感、謎の自己否定を持つことなく、自分らしい幸せな生き方を選択できるようになるでしょう。
子どもの存在自体を認めてあげよう
アドラー心理学では承認には3種類あると考えます。
(1)結果承認
結果承認は簡単で、一番使いがちですが、この承認しかしないと、相手は「結果を出さなければ、自分の存在は認められないのだ!」といつも緊張感でいっぱい、自己肯定感を育むことができなくなります。
(2)行動承認
行動承認は、結果にかかわらず、目標に向かってチャレンジしているそのプロセスに注目を与え、それを承認することです。
「三振したけど、フルスイングでトライしていたのを見てたよ!」というような承認の仕方です。
(3)存在承認
子どもたちにとって一番大切なのは、存在承認です。
その子らしいチャレンジスタイルを繰り出す「その子らしさ」を観察し、「そこがあなたらしくて良いところだよね」と承認する方法です。
例えば、「あなたは、コツコツ練習する忍耐力があるよね」とか「いろいろなことに興味を持って好奇心旺盛なところが君のいいところだね!」とか「みんなより、ゆっくりペースなのが気になっているようだけど、パパは、その慎重なところが君の持ち味だと思うよ」などと言った声のかけ方が存在承認の例となります。
それらを踏まえて考えるとご質問のパパにまずしてほしいのは姉妹のことをよく観察すること。
そしてそれぞれの持ち味を伝えてあげましょう。
絵を描いて優劣の評価を求めてくるようなことがあったら、ピカソ、モネ、葛飾北斎、スタイルの違う画家の絵をネットで検索して、子どもたちと語り合ってみましょう。
絵にはそれぞれの作家の個性が満ち溢れ、単純に良し悪しで比較できるようなものではないことがわかるでしょう。
「あなたたちも、姉妹だけれど、別々の個性・持ち味を持っているよ。だから姉妹で比較しなくても大丈夫。それよりも、昨日の自分と今日の自分、どこが改善したかな?って考えて見たらどう?」
アドラー式の子育てを実践すれば、きっと自然に、そうしたコミュニケーションができるようになるでしょう。
熊野さん、ありがとうございました!
ポイント
- 小さい頃は失敗を責めずに積極性を育む
- 注目を求められても、結果ばかりに注目しない
- 子どもをしっかり観察し、持ち味などありのままの個性や魅力を伝える
参考になりましたでしょうか?
熊野さんのアドラー式子育ての講座では、親子、夫婦だけでなく、様々なシチュエーションで役立つコミュニケーションのコツを学ぶことができます。
気になった方はぜひチェックしてみてください!
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