かつては親が子どもに厳しくすることが必要だと考えられることが多かったように感じます。
そんな中で育ってきた今の親世代からすると、そう言った子育てが当然のように考えてしまいそうですが、どうなのでしょうか?
アドラー心理学に基づくコミュニケーションの専門家で、アドラー式子育ての熊野英一さんからアドバイスを教えてもらいました。
厳しい子育ての結果、どうなる?
5歳の男の子の父親です。
私は、自分自身の経験から、子どもは厳しく育てるのが良いと考えています。
でも、結果的には子どもは私に心を開いてくれず、最近は、反抗してくることも。
冬季オリンピックを見ていたら、結果重視の鬼コーチが結果を出せずに批判を浴びるようなケースも目にします。
このままで良いのか、迷っています。
子育てにおいては、その子の成長にあわせて、「制限(家庭内のルール)」の枠を少しずつ拡げながら、その制限の中で「自分で選択する自由」を経験させることが大切です。
自分の選択に対する責任感を育みながら、ルールを守ることを学んで自立に近づくのです。
この時、間違えやすいのが「制限を設けるためには、あたかもペットを調教するかのように、厳しく接する必要がある」と思い込み、親子の関係を「支配・依存関係」にしてしまうこと。
これでは、「自立」に近づけません。
むしろ「親(や先生やコーチ)が怖いから、従おう」「言われたことだけ忠実にやろう」「自分の意思を捨てて行こう」ということを憶えてしまうでしょう。
このような「タテの関係」で子どもが成人するまで(成人した後も)良い親子関係を継続できると思いますか?
大きな声や厳しい口調による「支配」ではなく、堂々と、頼りになる態度で、子どもに礼節を持って接する「威厳」が、子どもとの相互信頼関係を築く秘訣です。
子どもが求める親の「正の注目」とは
これとは逆に、子どもを溺愛し、子どもの甘えを助長している親に出会うこともあります。
こうした親は、厳しいタイプの親と真逆のようですが、実は、子どもの自立の足を引っ張る態度で接しているという点で、同じ親子関係になっています。
どちらの父親も「子どもは、〜〜ができない、劣った存在だ」という前提で、子どもに接しています。
つまり、子どもを「子ども扱いし過ぎている」のです。
これでは、子ども自身に、「自分はダメな人間だ。誰かに世話してもらって当然だ」という信念を刷り込んでいるようなものです。
「子どもを子ども扱いしない」ということと同時に「子どもの子どもらしさを認め、受け容れる」ことも大切にしてください。
矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、次のようなことを考えてみて欲しいのです。
子どもは、子どもらしく「自分に注目してほしい」「スキンシップしてほしい」「自分の話を聴いてほしい」と親に求めるものです。
これを「甘えてはいけない、我慢しなさい」と拒否することはオススメしません。
このように甘えて来た時には、充分にその甘えに応えてあげてください。
アドラー心理学では、こうした子どもからの求めを「正の注目」と言います。
子どもが(大人だってそうですが)、自分のありのままを認めて欲しい、自分の素直な気持ちを聴いてほしい、共感してほしい、と求めることは、人間にとってとても大切な想いなのですから。
こうした「正の注目」を求める行動に対して、親が満足のいくリアクションをすると、子どもの心は充分に満たされ、みずから自立に近づいて行きます。
このとき、あたかも「友達同士」のような「相互に信頼しあえるヨコの関係」ができているなら、大人が子どもを操作するような「ほめちぎるような、わざとらしい褒め」や「頑張っている子どもにさらに頑張りを求めるような叱咤激励」を繰り出す必要はありません。
ただただ、子どもの気持ちに共感を示すことで、子どもは自然に勇気づけられるでしょう。
子どもの自立や成長、その子らしい成功を望むのであれば、厳しく操作したり、甘やかすことで言うことを聞いてもらおうと操作したりする必要はありません。
子どもが自分で「成長したくなっちゃう」「自立したくなっちゃう」と思うようになるには、どのような態度で関わるべきか、一緒に考えて行きましょう!
熊野さん、ありがとうございました!
改めておさらいすると…
ポイント
- 厳しくし過ぎて「支配・依存」の関係になると子どもは自立しにくい
- 子どもを「劣っている存在」というように「子ども扱い」しすぎない
- ただし甘えてくることはOK、正の注目にはヨコの関係で共感する
甘くしたり、厳しくしたり、という部分に目が行きがちですが、ポイントとなるのは、そもそもの関係性のようです。
親子で自然に共感できるようなヨコの関係を作れるように寄り添っていきましょう!
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