子どもが何か良くないことをしたときや言うことを聞かない時には、しっかり叱ることが大切だと考えている人が多いと思います。
でも、自分たちが子どもの頃のことを思い返すと叱られてよかったのか…。
今回は叱ることが苦手なパパの相談を通じて、アドラー式子育ての熊野英一さんにアドラー心理学の視点から「叱る」ことの必要性などについて聞きました。
子どもに叱るだけでは伝わらない
男の子ということもあって毎日二人で事件を起こしまくります。
そんな時、ちゃんと叱らないといけないとは思っているのですが、大きな声を出すのが苦手でうまくることができません。
このままだと強い子に育ってくれないのでないかと不安です。
何かいい方法はないでしょうか?
私も男の子を育てて来たのでわかりますが、まずは本当に日々お疲れ様です。
本当にいろいろやらかしてくれますよね。
心から共感します。
そもそも叱る必要はない
質問のパパのお悩みは「うまく叱れない」ということですが、アドラー心理学を学んでいる立場からすると、「そもそも叱る必要はない」と考えます。
いろいろな研究結果もありますが、具体的に「叱る」となると、大きな声を出したり、威圧的な態度で接することが考えられると思います。
子どもたちはその状況になったとき、ビックリしてしまったり、「怖い」と感じてしまったりすることが頭の中の多くを占めてしまい、肝心な親が伝えたいと思っていることをほとんど覚えていません。
また、叱るときによく使う「ダメ」「ちゃんと」という言葉は、大人なら理解できる場合もあるものの、実はとてもあいまいでどうしたらいいかわからないケースもとても多いのです。
「何がダメなのか?」「ちゃんと、とはどうすることなのか?」もっと具体的な指示が必要というわけです。
特に子ども自身がとった行動に対して、何が不適切か理解できていない時に起こります。
「叱る」よりも「教える」「諭す」
子育ての目標を子どもが自立することと考えるアドラーで必要とされることは、教えることと諭すこと。
つまり、どうしたらより早くよりスムーズにできるのか?という方法を子どもにもわかるように、子どもでもできるように教えることが重要だと考えます。
例えば、よく見かける行動として、レストランなどで座って食べることができなかったり、遊び食べをしてしまう子どもに「コラ!ダメでしょ!」と親が強く叱っているケースがあります。
そんな時も声を荒げることなく、公共の場では落ち着いて食べることがルールであることなどを、具体的に伝える方が子どもにとって理解しやすいもの。
ただとはいってもそこも理解が難しい場合は、そもそもまだ外食をする前提ができていないので、外食せずに家で練習する必要がありますよね。
子どもがまだできないのに、親の願望で外食に連れ出し、できないから叱られるなんて、子どもにとってはうれしいことではないですよね。
親が抱えている「叱る」ことの呪縛
一方で、子どもがある程度判断がつくようになって良くないことだとわかっていながら、不適切な行動をとるケースもよくあります。
声を出すより見つめる
子どもは不適切な行動をとると、親が叱ってくれる、つまり注目してくれると考えているケースがとても多いです。
つまり、子どもからすると、もっと自分のことを見てもらうためにはどうしたらいいのだろうと作戦を立てた結果なのです。
本来は適切な行動をとって注目されたいのですが、それが叶わない、もしくはもっと手軽に、確実に注目を集めようということ。
そんな時に、反射的に子どもを叱ってしまったら、それはもう子どもの思うつぼ。
作戦に乗ってしまっている状況です。
そんな時は、不適切な行動をしている子どもを叱らずにじっと見つめてみてください。
もちろん、目つきを悪くして圧をかけるようなことをしないで。
ガマンは必要ですが、きっと子どもの方が、この方法が間違っていることに気づいてやめてくれるはずです。
不適切な行動をずっと続けるのもなかなか勇気や根気がいることですから、そこまで長く続きません。
そして、やめたら伝えましょう。
「そんなことをしなくてもちゃんと見てるよ」
「わかってくれてありがとう」
冷静に諭すと同時にあなたに関心を持っていることをわかるように。
いきなり全部解決するわけではないかもしれませんが、徐々に不適切な行動は減ってくると思います。
叱ることは親の役割?
自分たちが子どもの頃、たくさん叱られ、そうして育ってきた今、適切に行動できると感じている親はとても多いと思います。
だからこそ、叱らないでもできるようになる状況はイメージしにくく、むしろ「叱ることが親の役割」とまで思っているかもしれません。
しかし、本来の親の役割は「自立させること」で「叱ること」ではないですよね。
なので、叱ることが必要だという考えはいったん手放してみてください。
今、世の中で生活している人たちすべてが「叱られたからまともに生活ができるようになっている」というわけではありません。
そのことを踏まえて、叱るより、教えて諭すことにぜひチャレンジしてみてほしいと思います。
そうすれば「叱れない」ことに悩む必要もなくなると思います。
熊野さん、ありがとうございました!
改めておさらいすると…
ポイント
- 大きな声を出して叱っても子どもは内容がわからないことが多い
- どうしたらいいか?具体的に教えて諭してみる
- 注目を集めるために不適切なことをしている子は関心を持っていることを伝える
- 叱ることが親の役割ではない
頭ではわかっていてもついつい叱ってしまうものだと思いますが、やっぱり叱られていい気分がしないのはきっと大人も子どもも同じですよね。
もちろん叱っている方もいい気分はしないので、徐々にでも穏やかに伝える方法に挑戦していきましょう!
また、熊野さんのアドラー式コミュニケーションの講座では、家庭はもちろん仕事でも使えるコミュニケーションのコツを学ぶことができます。
こちらも気になった方はぜひチェックしてみてください!