子育て中だけではなく、家族の基盤になるからこそ夫婦の関係作りは大事だといわれます。
そこを構築するために欠かせないのが夫婦間のコミュニケーション。
ですが、思ったように話し合いできなかったり、喧嘩に発展してしまうことも...。
今回は、コミュニケーションの専門家、アドラー式子育ての熊野英一さんに夫婦の話し合いがうまくいかない時のポイント、上手くいく夫婦の話し合いの仕方のコツをアドバイスしていただきました。
「討論」よりも夫婦での「対話」を
住む場所もこのままでいいのか?習い事はどうするか?
とても大切なことばかりなのですが、どうも話し合いがうまくまとまらないのです。
仕事ではこんなことないのに、いったいなぜなんでしょうか?
夫婦という関係において、とくに子育てのこととなると、自分が考えたことがなかなか譲れなくなるという話はよく聞きます。
だからこそ「話し合いをする」と言っても、実際のところは「相手に自分の考えを認めさせて了承してもらう」という考えがあるのではないでしょうか?
言葉を換えるとそれはつまり「論破」であり、「話し合い」というよりも「討論」です。
前提として「相手の言っていることは間違っている」「相手よりも自分の方が正しい」という上下、優劣が基準。
しかも、子ども本人の意志がどこまで反映されるかというポイントはほとんどないでしょう。
その討論が果たしてスムーズにいくでしょうか?
自分が正しいと思っていることを間違っていると言われたら、そりゃ気分も悪いですし、語気も強まります。
その上でさらに相手の間違っているところを指摘したら相手も激昂。
だいたいそんな流れになるでしょう。
一方、「対話」という言い方になると、基準は変わります。
どっちの方が合っているか、どっちの方が優秀か、そこではなくて「互いにどんな意見、考えを持っているか」これを伝え合い、認め合うのが「対話」です。
そもそも上下関係ではないですし、争う姿勢もない状態なので、ぶつかることはないはずですよね。
「対話」をする上でもっとも大事なのが「相互信頼」と「相互尊敬」という関係性。
つまり内容以前のものです。
始める前にたくさん考えた上で出した意見だから「きっと自分は正しい」と思うことは当たり前です。
でも相手もまた同じように考えたはずなので「相手の意見も正しいかもしれない」と思うことはできないでしょうか?
「ちょっとテキトーに考えたこと言わないで!」「もう全然わかってない!」という言葉を信頼し、尊敬する相手に言うことはないでしょう。
こういう主旨の言葉が出てくる時点で、話し合いをする以前の関係性を見直す必要がありそうですよね。
夫婦間の「譲れないところ」より「譲れるところ」に注目
もうひとつ、「対話」をする上で重要なことが「ひとつひとつの言葉でジャッジしようとしないこと」。
さきほども言ったように相手の意見をしっかりと受け止めることがまずは大事なはずですが、どうも全体を聞く前にちょっとした言葉の端々に対して、「それは違う」「そういうことじゃない」と正誤を判断するような言葉が出るクセを持っている人が多いように感じます。
それは決していいことが起きないので、まずは控えましょう。
小さなことですが、それだけできっと「対話」にはかなり近づくはず。
その上で、互いにいいと持っている案をプレゼン、つまり相手に伝えることが必要です。
例えばそれが「夫のA案」と「妻のB案」だったとして、もし討論であれば「A or B」を決めることになります。
しかし、「対話」をしていくと選択肢は「A or B」だけではなく、いいところを寄せ集めた「A×B案」だったり、偶然思いついたAともBとも違う「C案」になることもあるということに気づけるはずです。
ただ、自分の出した案への思いが強いと、なかなか相手の案や折衷案を受け容れることができないことも考えられます。
まずは、そこを柔軟にすることが大切。
なぜなら、どんな案に決まったとしても、自分と目指しているものは同じはず。
「自分の思いを遂げること」よりも「家族というチームが成長する」ということを重視してはどうでしょう。
そう考えた時に必要なのが「どこまで譲れるか?」ここを明確にすることです。
「譲れないポイント」をぶつけ合いがちになってしまいますが、互いに譲れるポイントを出し合いながら進めていくことこそ、合意案は作りやすいと感じませんか?
もちろん意見が違うことは前提です。
妥協とは違います。
合意案というものは「自分の意見とは違うけど、今回はこれを選択する」というもの。
「譲ること」は「意見を変えること」とは違うことも忘れないでください。
もちろん、それでもやっぱり全体とは言わないけど、パーツとしてここは取り入れて欲しいという時もあると思います。
そんな時はこんなやりとりの仕方を提案します。
まずはいったん相手の意見を受け容れる。
「どう思う?」と聞かれたら「なるほど、それもアリだね」と。
その上で「個人的にはもっと良くするにはこれもアリじゃんじゃない?」と伝える。
どうですか?
「そこは違うよ、絶対にこの方がいいに決まってるよ」と言うよりも、はるかに相手に受け容れられる可能性が高くなると思いませんか?
それでも相手に受け容れられない場合もありますが、それは仕方ないこと。
ケンカになって何の結論も出ないで終わることよりよっぽどいいと思います。
結局の所、夫婦が話し合うことのほとんどは「どうやったらお互いに合意できる範囲で幸せを目指せるか?」というもののはずです。
お互いを信頼、尊敬して、譲り合う姿勢を持って臨んだ方が、きっと楽しい暮らしに繋がっていくと思います。
熊野さん、ありがとうございました!
改めておさらいすると…
ポイント
- 話し合う前に「相互信頼」「相互尊敬」の関係を気づき、「対話」をこころがける
- 「自分の思いを遂げること」よりも「家族というチームが成長する」ということを重視
- 譲れるところを譲って「自分の意見とは違うけど、今回はこれを選択する」という合意案を作る
相手の意見をくみすぎることで、「結局いつも言いなりになる」と思ってしまうことがあるかもしれません。
しかし、自分の意見があった上での選択だと思えるようになれば、それが妥協ではないことも理解できるはずだと思います。
そもそも「言いなり」かどうかを考える時点で上下関係が透けて見えるので、その前にある立ち位置を見つめ直してみてはどうでしょうか?
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