世界中で賛否両論が巻き起こっている、先日のアカデミー賞の壇上で起こった出来事。
プレゼンターのクリス・ロックさんが、病気のために髪の毛をそり上げている俳優のウィル・スミスさんの妻、ジェイダさんの容姿を侮辱するような発言。
それを受けて、ウィルさんが壇上に上がってクリスさんを平手打ちしました。
公式LINE「パパしるべ総研」でもこの出来事に関するアンケートを実施しましたが、この一連の行動をアドラー心理学に基づくコミュニケーションの専門家で、アドラー式子育ての熊野英一さんに考察してもらいました!
ウィル・スミスの言動をアドラー心理学で考える
日米の文化の違いなどもあるのか、日本とアメリカではその後の反応にも差があるようです。
アドラー心理学の見地から、ウィルはどうすれば良かったと思いますか?
私は、今回の事件を受けて、誰が良いとか悪いとかをジャッジするつもりはありません。
一方で、他人事として無関心でいるよりも、これを他山の石として、自分自身や自分の周囲の人たちの間で似たようなことが起きた時を想定し、脳内でシミュレーションをしてみたいと思います。
実際、家庭内や、子ども同士や、職場内で、ちょっとした言い方がきっかけで(それが、冗談だったり、良かれと思っての発言だったりしても)、不快な思いをしたり、されたりすることは、よくあるはずですから。
クリス、ウィル、ジェイダ、それぞれの立場になってみましょう。
そして、3人それぞれに共感(相手の目で見て、相手の耳で聴いて、相手の心で感じる)しつつ、一方では第三者目線で冷静に対処方法を考えた時、現実に起きたそれぞれの反応以外にどんなアイデアがあるか、家族や友人、職場の仲間などと対話してみてください。
今回は、私自身がウィル・スミスだったら、と仮定して、つまり、「もしウィル・スミスがアドラー心理学を学んでいたら」と仮定して、私の脳内のシュミレーションを記してみようと思います。
平手打ちしようと構えた手を・・・どうする、オレ?
では、クリス・ロックが我が妻ジェイダの髪型をイジって、オーディエンスの笑いをとった直後の場面から考えていきましょう。
これから出てくる「オレ」は、ウィル・スミス。
ただし、本物ではなく、「アドラー心理学を学んだ」という前提のウィル・スミスです。
一瞬、自分も釣られて笑ってしまったが、横でひきつった顔をしているジェイダに気づいたオレ。
(心の声)
「あ、これはヤバい!彼女が傷ついている!なんとかしなきゃ。。。あー、もう、最高の晴れ舞台の日をメチャクチャにしやがって、クリスの野郎!よし、ここはオトコを見せなくちゃ!
やられたら、やり返す!傷ついた妻を護るのがオトコじゃないか!
そのためには、一発、お返ししてやる!」
そう決意して、ツカツカと壇上にあがるオレ。
この10メートルが思った以上に長く感じる。
驚いた表情を浮かべながらも、コメディアンとして笑いを取ろうとするクリスにあと2メートルの距離まで近づいた時、天からの声が聞こえた。
(天からの声)
「ヘイ、ウィル!お前はアドラー心理学を学び、実践しているんだろ?
今から、どんな対処を選択して、この難題を乗り切るつもりなのかい?」
ハッと、我にかえるオレ。
(心の声)
「アドラー心理学を学び、怒りは二次感情であって、本当にわかって欲しい一次感情があることは十分に理解している。
そもそも、アドラー心理学は『私とあなたが、どうやって仲良くしたら良いのか?』を教えてくれているはずだ。
だとしたら、オレは今、クリスに対して、どんな言動をすれば良いのか?怒りを使ってアピールするのではなく。
でも、どうやって?」
平手打ちをするために、大きく開いた右手。クリスの目の前までに来たとき、オレはその右手をクリスに差し出し、握手を求めた。
驚いたクリスが左手に持つマイクをオレに渡してくれた。
オレはクリスと握手をしながら、落ち着いた声でこう話しかけたんだ。
「ヨー、クリス。対面で会うのは久しぶりだな。
アカデミー賞の晴れ舞台でジョークをかまして笑いをとって、嬉しそうだな。
お前は多くの人から笑いをとったけど、さっきのジョークは、だれかの心を傷つけた可能性もあるぜ。
1秒前まで、お前をぶん殴ってそのことをお前に思い知らせてやろう、と思っていたんだが、そうするよりも、この傷ついた気持ちを冷静に伝えた方が、後味が良さそうだと、ギリギリで気づいたよ。」
顔から笑顔が消えたクリス。
握手した手を離し、クリスから目を話したオレはオーディエンスに向かって、もう一言付け加えた。
「皆さん、実は私も、さっきのクリスのジョークでちょっと笑ってしまったんです。
でも、すぐに思い出した。
横に座っているジェイダの顔を見たときに、いかなる理由があっても、他人の容姿を笑うのは最低だってね。
だから、今、そんな下品なジョークを言ったクリスと、それに反応して笑ってしまった私が、この壇上からジェイダに謝るよ。
もし良かったら、みんなもそうしてくれないか?」
ショーの進行を妨げる行為は、アカデミーの規約違反として後日、処分があるかもしれません。
でも、暴力を使わなくても、アドラー心理学を学び、実践していれば、難局を乗り越えることができることを、ウィルは世界中に示すことができたかも知れません。
これをただのおとぎ話とするのか?それとも、現実世界で、私たちがそれぞれこうした言動を実践するのか?
私たちの「勇気」が問われています。
熊野さん、ありがとうございました!
改めておさらいすると…もしもウィル・スミスがアドラー心理学を学んでいたら・・・
ポイント
- アドラー心理学は「どうしたら人と仲良く出来るか?」を教えてくれるもの。
- 怒りは二次感情。わかってほしいという一次感情が本当の気持ち。
- だったら、平手打ちをするのではなく、握手を求めて気持ちをしっかりと伝える
- 反射的に笑ってしまった自分の失態も反省して、みんなで謝罪
今回はあくまで想像の範囲ではありますが、シミュレーションすることで自分に同じようなことが起こった時にどう考えた方がよいのか?
トレーニングには繋がることだと思います。
まあ、頭ではわかっていても実践はなかなか難しいところですが、諦めずに取り組んでいきましょう!
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