「ワークライフバランス」という言葉が一般的になったものの、本当に仕事と家庭のバランスをとることは簡単ではありません。
今回は仕事は順調だけど家事や育児に手が回らず、「自分はダメな父親かも」と理想と現実のギャップに無力感を抱えているパパからのご相談です。
そこで具体的な行動例をもとに、完璧を目指さずに両立へ挑戦し続けるための考え方とヒントを、アドラー心理学のスペシャリストの熊野英一さんからアドバイスを頂きました。
まずは自分をねぎらうことから、はじめてみませんか?
100点満点の両立は目指さなくていい

おかげで家事も育児も思うようにできていなくて妻に頼り切り。
自分はダメな父親なんじゃないかと思ってしまいます。
改善するにはどうしたらいいのでしょうか?
いまだに男性の長時間労働の問題が残る中、日々の頑張りをとても感じます。
まずは毎日お疲れ様です。「ダメな父親」とはなんでしょうか?
人それぞれ考えはあると思いますが、きっとそんなことはないと思います。
あなたの無力感を少しでも楽にできるように一緒に考えていきましょう。
自分へのハードルが高すぎないか?
人はなぜ自分をダメだと感じるのか?
その要因はいろいろとあると思いますが、そのひとつに「高すぎる理想設定」があると思います。
理想を持つことは、そこに向かって努力するモチベーションにもつながるのでとても大切なことです。
ただ、その理想が高すぎて、届かないと感じると、無力感を抱いてしまったり、「自分がダメだ」と感じてしまったりすることになってしまいます。
あなたが思っている理想は、本当にそうでなければいけないものなのでしょうか?
もしかしたら、あなたが生きてきた中で「すごい!」と思っている人たちのいい部分だけを寄せ集めて、あれもこれも完璧にしないといけないと思い込んでいるだけかもしれません。
自分にあったハードルの設定を改めて考えてみてみてはどうでしょう?
そもそも自分は不完全である
理想に届かないからといって「ダメ」というわけではありません。
「ありのままでいること」を重視するアドラー心理学では「不完全の受容」を大切にします。
つまり「自分が完ぺきではないということを受け容れる」ということです。
これは「自分は不完全でOK」ということではありません。
「自分の現状は完璧じゃない」ということを正しく認識すること。
そのうえで、そんな自分はどうしていけばいいかと前向きに考えていくことです。
世の中に全てが完璧な人なんてまずいないと思います。
傍から見て完璧に見える人でも本当は悩んでいたり、出来ていないと感じているところがあったりするかもしれません。
一方で、周りの人はあなたの一面を見て「完璧な人だ」と感じているかもしれません。
まずは、完璧ではない不完全な自分を冷静に見つめて、次にどうしたらいいか考えていきましょう。
仕事と家庭の両立に挑み続けることで得られること
現状を打破するためにすべきことは何か?
あなたにぜひ知ってほしいアドラーの言葉があります。
アドラー心理学のポイント
挑戦する勇気が、失敗を成長の糧に変える
つまり、完璧でなくても挑戦する姿勢ことが成長につながるということです。
現状は、何もしなければ変わりません。
でも変えようと挑戦することでもしかしたら少しでも変わる可能性が出てきます。
今回の場合、挑戦というのはAIを使って仕事の効率化を図ってみたり、関わる時間が短くても心を込めて子どもに接したりという、今あなたが悩んでいることに対して少しでも改善できる方法を探して実践することです。
それぞれの状況でできる範囲で構いません。
少しずつでも試行錯誤をしていけばOKです。
両立への挑戦に必要な自分へのねぎらい
挑戦するにはエネルギーが必要です。
その源になるのが「自分はよく頑張っている」という自分へのねぎらいです。
自分を「ダメ」だと責めていてもツラいだけですよね。
完璧じゃなくても頑張っている自分で素晴らしいじゃないですか。
ちゃんとねぎらってあげましょう。
そうすることで自己肯定感は高まりますし、次の挑戦に向かうエネルギーを生み出します。
チームスポーツをイメージしてみよう
また、一人で抱え込まないことも大事です。
どんなに頑張っても一人で回らないこともあります。
まさにあなたは今その状態だと思います。
だったら、周りにいる人の助けを借りることも考えてみてほしいです。
人に助けてとお願いすることは怖いと感じる人もいると思いますが、あなた自身が、自分の不完全さを心から認めることができれば、そこをカバーするために周りの力が大切であることも理解できると思います。
サッカーやバスケなどチームで行うスポーツをイメージしてみてください。
大勢の敵チームに一人で勝負するのは難しいですが、チームメイトたちとそれぞれが得意なプレーを活かして協力し合って進んでいきますよね。
そして例えうまくいかなくても何度も挑戦することで、いい形を見つけて勝利に向かっていくものです。
また、誰かが失敗したら、チームメイトが励ましの言葉をかけます。
スポーツだけでなく、人生だって同じ。
周りの仲間を信じて、互いに協力していくイメージで、挑戦を続けていけばいいんです。
例え勝てなくてもそれだけで達成感を得ることもできますし、仲間との絆が深まります。
周りを信じて頼っていきましょう。
挑戦する姿は、挑戦する人を育てる
あなたが挑戦する姿を周りの人たちは見ています。
そんなあなたを見て育った子どもが何か困難な状況になった時に、あなたのように挑戦するようになる可能性は十分にあります。
つまりいいお手本になれるのです。
子どもだけでなく、妻やパートナー、仕事の仲間にも「自分も挑戦してみよう」と刺激になることだってあるはずです。
反対に「自分はダメだ」と憂う姿をみせてばかりいると、周りに悪い手本になってしまうこともあるでしょう。
少なくとも、試行錯誤して前向きにどうしたらいいかを考えていたら、自分はダメだと考える暇なんてなくなると思います。
世の中の状況や子どもの成長など、ずっと同じ状況が続くことはありません。
とにかく諦めずに挑戦していれば、いつか何かが変わるはず。
未来を信じて進んでいきましょう!
熊野さん、ありがとうございました!
改めておさらいすると…
ポイント
- 不完全な自分を受け入れて、適切なハードルを設定する
- 自分を責めるのではなくねぎらってエネルギーをためて挑戦する
- チームスポーツのように失敗して仲間と励まし合いながら挑戦を続けてみる
仕事と家庭の両立は、男性にとっても女性にとっても永遠のテーマです。
すぐには改善できないこともあると思いますが、諦めないことが大切だということですね。
皆さん、ともに前を向いていきましょう!
著書のご紹介
また、熊野さんのアドラー式コミュニケーションの講座では、家庭はもちろん仕事でも使えるコミュニケーションのコツを学ぶことができます。
「子育てが思い通りにいかない」「仲良くしたいのに夫婦関係がギクシャクしてしまう」「職場の人間関係がうまくいかない」など、悩みを抱える方は自分で解決できるためのコミュニケーション術を学びます。
こちらも気になった方はぜひチェックしてみてください!
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