今年2022年4月に『改正育児・介護休業法』の段階的な施行が始まり、この10月1日からは「産後パパ育休」や「育休の分割取得」というまた新たな制度がスタートしました。
4月からの施行された内容ではすべての企業に様々な義務が生じている中で、パパたち自身が務める企業では男性育休に対して実際にどう対応しているのでしょう?
公式LINE「パパしるべ総研」のアンケートを通じて、パパたちにその実態を聞きました。
男性育休に前向きな企業が6割!でも...
4月からは、男性育休に関しての取得対象者への個別周知や、雇用環境の整備などがすべての企業に義務化されました。
義務化ということは、普通に考えれば男性育休に関する対応は100%となるはず。
ただ、形だけ実施して働く人たちにはそれが伝わっていなければいい状況とは言えません。
そこで今回はパパのリアルな声を聞くパパしるべ総研だからこそ、どれほどの企業がしっかり対応しているか?
ではなく、働く人たちが「どう感じているか?」に焦点を当ててアンケートを実施しました。
まずはズバリ、自分が勤めている企業に関しての印象から聞きました。
あなたが務めている企業は男性の育休取得に対して前向きだと感じますか?
- とても前向き:36.0%
- やや前向き:24.0%
- やや後ろ向き:12.0%
- とても後ろ向き:16.0%
- わからない:12.0%
「とても前向き」「やや前向き」を合わせて6割。
ポジティブな印象の企業の方が多数となりました。
2021年度の男性の育休取得率は「13.97%」とかなり限定的な実態を考えると環境自体は良くなっているようにも感じますが、一方で「まだ6割」という印象も否めません。
自身やパートナーが育休を取得するかどうかは別としても、自分が務める企業が前向きでないと、みんなが口を揃えて言える環境とは程遠いようにも感じます。
また、今回のアンケートでは、回答いただいた方に「企業の規模」と「業種」も聞いています。
「企業の規模」に関しては、それぞれの回答に特筆するような傾向はみられなかったのですが、「業種」でみると、「メーカー/製造」「飲食などサービス」については「やや後ろ向き」「とても後ろ向き」に偏っている傾向があり、反対に「IT/通信など」「マスコミ、情報産業」については「やや前向き」「とても前向き」に強く偏った結果になりました。
もちろん回答いただいた方の限定的な傾向でもありますし、企業の業種だけでなくその中でどんな部署かというところにも関係するので一概には言えません。
しかし、柔軟な働き方が実現しやすい業界の方が前向きな傾向があるようです。
ちなみにそれぞれの回答にはこんなコメントが届いています。
とても後ろ向き
- 普段から家庭中心になりすぎるなと言われるから。
- 過去に育休を取ろうと頑張ってくれた先輩が、嫌がらせや報復人事で退職した。
やや後ろ向き
- 有給すらろくに取れないため。
- 女性社員からは理解を得られたが、男性社員からはなかなか理解を得られなかったから。
- 上司に子供が生まれると伝えたが、育休に対する声がけが一切ない。会社での人が足りないから難しいと難色示された。
ネガティブな回答に対するコメントの中には、明らかにコンプライス違反となる事例もありました。
また、「過去に」というコメントがあったことを踏まえると、今から変えようとしていてもこれまでに良くない事例が明確にあることは、かなり根深くマイナスなイメージを植え付けてしまっている実態が浮き彫りになっています。
やや前向き
- 対象者は必ずとれている。
- 制度としてはしっかり作ってるけど、女性と中高年中心の職場で対象者が少ないせいか話題にも上りません。
- 補助金がもらえるから、対象の男性には育休を取得するよう促している。実績もあり、周囲の理解も広がっている。
- 建前上は前向き、という感じ。企業としては、それを打ち出さないとね、的な。本心は、、、わかりません。
とても前向き
- 役員も取得していることもあり、日頃から家事育児は夫婦でやるものという。社員へのメッセージを届けているため。
- 社内での取得促進に向けた説明会が多いので。
- 自分が第一号と言う事もあり、繁忙期のど真ん中にも関わらず1ヶ月ちょっと戴きました。
- 僕が働き方改革訴えたら、次に続く者から育休取れるようになった。
- 地方公務員なので意識は高いですし、目標値もあります。
- 自分が管理職として勧めている。
「やや前向き」のコメントの中にも気になるものもあるのが現状。
ただ、あくまでコンプライアンスのひとつであることを考えると、まずは何かしら動くことから始まっているケースもありそうです。
わからない
- 特に説明は無かったが申請すれば取得できるため。
- 私自身色々調べて取得したが、今後あとに続く後輩がいなさそう。
- 周囲に男性で育休をとっている人がいないから。
- あくまで法定対応レベルだから。
コメントを見る限り、確かに前向きかどうか「わからない」という印象が納得できそうな内容ですね。
企業と従業員での男性育休のギャップが明らかに
続いて、企業が男性育休に向けて実施している取組みと、従業員がもっと実施して欲しい取組みについて聞いた質問では、こんな結果が出ました。
項目 | 企業が実施している | もっと実施して欲しい |
育休制度について社内への周知/発信 | 51% | 35% |
管理職/経営層向けの研修 | 22% | 49% |
取得対象者向けの研修 | 14% | 48% |
全従業員向けの研修 | 11% | 49% |
事業主の方針や意向について社内への周知/発信 | 8% | 24% |
外部への発信 | 8% | 27% |
※複数回答
企業が実施している取組みで圧倒的に多かったのが、「育休制度について社内への周知/発信」。
これが唯一、従業員からの「もっとしてほしい」を上回っています。
その他の項目では、かなりギャップがある結果ですが、考えてみれば従業員からの要望の方が多くなることはよくあることだと思います。
ただ、特にギャップが大きいものを分析してみると、かなり姿勢の違いが見えてくるように感じます。
まずは、手間の部分。
企業が実施している研修をみると多い順に「管理職/経営層」「取得対象者」「全従業員」となりますが、これは対象者の数が少ないとなっています。
対象者が多くなると当然実施することに手間がかかりますから、効率的に実施したい企業としてはこのような順序になることに理解はできるところです。
しかし、従業員が望む研修は、対象者の数によってはなく、むしろ「全従業員」への要望が強いようです。
推測するにこれは、男性に限らず育休の取得は、いわゆる子育てとは関係ない社員も含めて全員に影響が出るもの、という実感が込められているように感じます。
一方で、公然性。
いわゆるオープンかどうかということもポイントだと感じられます。
「事業主からの周知/発信」や「外部への発信」は、企業としては勇気がいるものだと考えられます。
社内であれば、もし事実と違ったとしても対応ができるものの、トップからの発信や外部に向けた発信となると、幅広い人たちからの注目、チェックが入り、それがリスクとなりえることも。
しかし、従業員が求めるのは、だからこその発信だと感じます。
前述のコメントの中で、「表向きは前向きだけど、本心はわかりません」とあったことからも推測できるところではないでしょうか。
最後に、男性の育休に関しての困っていること、悩んでいることについてのリアルなコメントです。
これも前向きかどうかという回答ごとに分けて紹介します。
とても後ろ向き
- そもそも、そういったことに対する文化が全く無い企業は、どこから手をつければいいのでしょうか?
- 育休を取ろうとした社員をグループウェアで全社員メッセージを通じて暗に批判したり、子どもの体調不良で相談を申し出るとあからさまに嫌な顔をされたり。そんな会社なのでSNSで悪評が広がり、ますます人は来ず、残った社員も心を病んで辞めていく。もう会社として持たない。
やや後ろ向き
- 人手不足によるしわ寄せが、休みを取りずらい環境となっている。
- 取得をし、育児というかけがえのない時間を楽しく過ごせることを企業、個人ともに理解を深めたい。
- 育休を何ヶ月とれるという制度はあるものの、社内の人員不足等を考えるとなかなかとりづらい。小さい規模の職場ではかわりを見つけることも難しく育休をとりたいと言い出しづらいし、言っても前向きにとらえられなかった。
やや前向き
- 業務を代替できる人材の育成と雇用の確保。
- 男性育休を取得するより、有給休暇を取得して休んだ方が簡単で給与の心配もないので、会社は育休取得を勧めているのに、みんな有給休暇で対応する。それが認められているので、困っていないが、育休の制度の存在意義がなくなっている。
- 建前と本音、の混在。とりあえず制度はありますよ、だけの周知。
とても前向き
- 世界的に見て日本人の育児モラルの低さ
- もっとアピールできるし、「これが普通」に早くしたい
わからない
- 周りへの配慮。プロジェクトの閑散期が重なったため取得できたが、繁忙期は無理だったと思う。
- 学童保育へ迎えのため職場の制度を利用して1時間の早出勤務をしているが、それですらあまり上司から理解されない。
- 会社として育休取得のメリットがない。女性活躍もあるので、育休を取得すると最も評価されないポジションになりがち。このままではパパがしんどくなるだけでは?
ここでも、例え前向きだと感じる企業に勤めている人からも課題が出てくる現状が見られます。
辛辣なコメントも多い中で一気に全体が変わることはなかなか難しいように感じますが、過渡期を経て社会全体にとってポジティブなものになっていけばと願います。
今回も、ご協力いただき本当にありがとうございました!
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