男女共同参画が当たり前の時代とは言われますが、性別による役割の固定概念=ジェンダーバイアスを感じることがあるという声は後を絶ちません。
では、子育てをしているパパたちの中ではどんなことがあるのでしょう?
ジェンダーバイアスの具体例について、公式LINEアカウントに登録している2800人のパパたちに、実際にあった経験を聞きました。
ジェンダーバイアスを最も感じるシーンは
今の子育て世代が育ってきた時代は、まだ「男だから」「女だから」という言葉が日常的に飛び交っていて、「ジェンダーバイアス」という言葉を聞く機会はなかったと思います。
時代が進んで男女がそれぞれ偏った見方をされないことが大切だという考えが広まってきましたが、なかなか一気にすべてが変わるのは難しいところ。
子育てをしていく中では、わが子の未来のことを考えたり、夫婦共働きで生活をしていったりする上でできればジェンダーバイアスは緩やかになっていってほしいと感じます。
では、実際にパパたちは生活していく中でどんなジェンダーバイアスを感じているのでしょうか?
まずは、感覚的にジェンダーバイアスがまだあると感じている人がどのくらいいるのか聞いてみました。
世の中にジェンダーバイアスはあると感じますか?
- 非常にある:83.3%
- ちょっとある:16.7%
もちろん、回答の選択肢には「ない」や「ほとんどない」もありましたが、答えてくれた全員が「ある」を選択。
なかでも「非常にある」という回答が8割を超えました。
では、どんなシチュエーションでジェンダーバイアスを感じるのか?
こちらも聞いてみました。
どんなところで感じますか?
1位:仕事(88.9%)
2位:公共の場所(66.7%)
3位:教育(55.6%)
4位:スポーツ(44.4%)
5位:エンタメ(38.9%)
※複数回答
トップは圧倒的に「仕事」でした。
これはパパたちの生活で「仕事」が大きな割合を占めているという背景もあるかもしれませんが、もともとジェンダーバイアスがかなり強かった領域であるという部分でもあるように感じます。
一方で、「公共の場所」や「教育」といった子育てに即したシチュエーションが挙がることからは、アンケートに答えてくれたパパたちが子育てにコミットしていることが感じられます。
さらに具体的にジェンダーバイアスを感じた経験についても聞きました。
具体的にあなたがジェンダーバイアスを感じた経験を教えて下さい
- 仕事の振られ方。「あなたは男なんだから」という言葉を中年女性からかけられた。(40代)
- 男性向きの仕事、女性向きの仕事と無意識に分けられている印象を受ける
- Xを見ていると「男は金を稼ぐことが役割のメイン。家事育児の優先度が下がるのは仕方ない」という趣旨の主張をまさに今日見ました。(30代)
- 仕事相手のちょっとした言動、地域の会合や部活の親同士の会話、妻の実家etc… あげると切りがないほど。全体的にどの領域でも「子育ては女性がメインでしょ」感、昭和感の押し付けが根強いと感じる。(40代)
- 製造業ですが、現場では圧倒的に女性が少ない。(40代)
- 採用ページでまだ「イクメン」の紹介をしている企業がいること。(30代)
仕事関連の具体例が続々。
採用ページの「イクメン紹介」は、「ジェンダーバイアスがないですよ」と伝えたいのだとは思いますが、それが裏目に出てしまっているようにも感じられますよね。
- 子育て機関を訪れた際に、「パパなのに育児していて凄いですね」と言われたこと。(30代)
- 男性トイレにオムツ替え台がない(т-т)(30代)
- 福祉の現場で父親しかいないのに、連絡先に母親の携帯番号を聞かれた。教育現場で父親がいるにも関わらず、先生が、お母さん達、お母さん達と連呼。(50代)
- 小児科に子どもを連れてきているのが母親の方が多いことを見て、まだまだ母親が仕事を休んで子どもの世話をするケースが多数だと感じた(30代)
- 保育園のパパママ友が子どもたちに「女の子は~」「男の子は~」と子どもたちに言っている。(30代)
- 幼稚園で「ママさん」が主語になることが多い。まだまだ子育てしているのは女性っていうバイアスがあると思います(40代)
- 子育てや介護の負担がどうしても女性に偏りがち(30代)
子育ての現場に男性が行ったときのあるあるが満載です。
感じ方はいろいろあるかもしれませんが、「男性の育児参画が必要」と理解したから行ったのに、歓迎されていないようにも感じることで、やる気をそがれてしまうことにも繋がりかねません。
また、こんな何気ない会話の中でも出てしまうものです。
- お菓子、スイーツ好きの私は周りから「女子っぽい」と言われます。(50代)
- 飲み会の場所を探している時に、自分の口から「小洒落た女性ウケしそうな」という言葉が出てきた時、ドキッとして、『何をもって、今、女性受けしそうなという発言をしたのだろうか』と日頃の自身の言動を振り返ることがありました。無意識に出た言葉だったので、他にもいろんな言動として出ているんだろうなあと感じました。(30代)
ちょっとしたこと、と言えばそれまでなんですが、やはり染みついてしまっているようにも感じます。
悪気がないことは重々承知ですが、気になってしまうことはありますよね。
そして、最後にはこんな声も。
- 男性保育士でした。常に戦いの毎日でした。(50代)
これはもう胸が詰まります。
今回は男性向けのアンケートだったのでこういった回答が出ましたが、女性向けのアンケートであれば、この裏返し的な、女性が戦ってきたケースもきっとたくさん出てくると思います。
ジェンダーバイアスは無くなるべき?パパたちの様々な考え
世の中の流れはこういったジェンダーバイアスを無くしていこう!ということになっていますが、捉え方は人それぞれ。
パパたちはどんな感覚なんでしょうか?
ジェンダーバイアスはない方がいいと思いますか?
- 完全にない方がいい:22.2%
- できればない方がいい:50.0%
- ちょっとくらいはあってもいい:27.8%
断固反対という姿勢の「完全にない方がいい」という人は2割。
そのほかの人は「できれば」が5割、「ちょっとくらいはあってもいい」も3割弱と、マイルドな感覚の人の方が多いようです。
それぞれの回答に至った経緯を見ていきましょう。
完全にない方がいい
- 性別を基準に考えるのではなく、それぞれ個人の性格等により判断して欲しい(50代)
- 性差としては、あるものだとは思いますが、それがバイアスになることには、ひとまず全て立ち止まって考えるべきかと思います。(30代)
- 男女の違いを理解することは大切だが、バイアスは不要。(50代)
- 固定観念は必要ない。(30代)
できればない方がいい
- できるだけない方が誰もが平等な権利を持ちやすいから(30代)
- 自分がそれで生き方が変わるほどの苦い経験をしたから(40代)
- 身体的な違いについての配慮は必要だが、概念や考え方に関しては個人個人の活動が性別によって差別や抑制されないほうがいいと思います。(50代)
- 完全に無くなると体力や身長、筋肉差等考慮されていない社会になってしまうと思ったので(30代)
- 男女には生物として性差があり、完全に無くすことは不可能だとしても、少なくとも生き方や役割、思想等の面で男だから・・・女だから・・・と区別する理由は単に脳の処理の問題=まさにバイアスなので考えさえ変えれば変えられるし、そうしなければ男女平等は永遠に訪れないと思います。(30代)
- 完全に無くすのは無理だし、多少は致し方ない。それよりバイアスを自覚するかどうかが大切(40代)
- 完全に無くすことは出来ないとおもっているが、認識することは大事だから。(40代)
ちょっとくらいあってもいい
- 生物的な性差はあるため、むしろ無い方が不自然。そこに気遣いが生まれて、家庭でも職場でもバランスが取れるのだと思う。(40代)
- あれっ?と違和感があるシーンはあってもいいとも思う。
- 社会を二つだけに分けるのは、息苦しいです(50代)
- あってもいいけど、知らないことが問題ですよね。(30代)
コメントを見る限り、総合的には「性別がある以上はある程度の差が生まれてしまう部分はあるかもしれないけど、それを押し付けてしまったり、理解や認識をせずに進めてしまうことは良くない」といった意見でまとめられそうです。
「完全にない方がいい」と答えた方の「固定概念はない方がいい」というコメントにもあるように、あくまで「ジェンダーバイアス」という言葉が「固定概念」つまり「凝り固まった考え」であると考えれば、そりゃない方がいいと多くの人が感じるとは思います。
ただ、一方でそれと強固に戦う姿勢だと軋轢が生まれてしまうことに対する懸念も感じる人も多く、特に過渡期の今はうまくすり合わせていくことが必要なんだと感じます。
最後に、その他も含めて、ジェンダーバイアスについて感じていることや悩んでいることのフリーアンサーに届いた声も紹介します。
- 自分の娘が「これは女の子として恥ずかしいことしてないか」というように見てしまうことがあり、自らにもバイアスがあることは否定できません。(30代)
- 妻がバリキャリに振っていて、振り子が振り切れていることに気づいて欲しい。指摘すると夫婦喧嘩になるのでグッと耐えています。
- 子どもに説明する際に、自身の中にもまだまだバイアスがあるんだろうなあと悩んでいます。(30代)
- 男性が兼業主夫で、家事育児とアルバイトを行っている時のその男性への世の中の見下し感が半端ない。(40代)
- 男性なら女性ならと何事の判断も性別が基準にあることが多い(50代)
- 男性保育士の仕事に性差を感じる(50代)
この記事を書いている編集長自身も兼業主夫なので、見下され感について激しく同意するとともに、仲間がいることで少しうれしくも感じます。
また、ここのコメントだけでなく、他の設問でも出ていましたが、「自分自身にあるジェンダーバイアス」というものもひとつのキーワードだと思います。
周りにあるジェンダーバイアスに過敏に反応してしまうことも多いですが、まずは自分自身がどうなのか?といいうところについてももう一度再確認してみることも忘れてはいけないように感じます。
今回もご協力いただきありがとうございました。
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