「産後うつは女性だけのもの」と思っていませんか?
男性の家事育児参画が進む中、実は男性も産後うつのような症状が出るケースがあるそうです。
「最近イライラしやすい」「気分が落ち込む」「夫の様子が変わった」——そんな不安を感じている方へ。
本記事では「男性の産後うつ」について、LINE公式アカウントなどで子育て中のパパたちにアンケートした実際の体験談を紹介。
さらに具体的な兆候や原因について専門家の意見を交え、早期に気づき対策を取るための方法を紹介します。
家事育児に積極的なパパの方がなりやすい...!?
出産は夫婦にとってとても大きな出来事です。
ライフステージの上ではもちろんのこと、特に女性にとっては体に大きな負担がかかるもの。
実際に出産と体験する女性の「産後うつ」に比べて、出産をしない男性が「産後うつ」になるとはどういうことなのでしょう?
男性の家事育児について研究をしている大阪教育大学の小﨑恭弘教授に聞きました。
産後の女性は、ホルモンバランスの急激な変化や慣れない育児へのストレスなどが要因で、子育てや将来に対する不安などのネガティブな感情がわき起こったり、家事や赤ちゃんの世話をする気力がなくなったり、食事や睡眠も十分取れない状況になる、いわゆる『産後うつ』になることがあります。
そんな状況にならないためには男性が育休を取って寄り添うことが予防につながると期待されている部分はありますが、一方で最近の研究では、男性にも『産後うつ』のような状態がみられることがわかってきました。
その割合は女性より低いものの、おおむね10人に1人くらいは経験しているようです。
妊娠、出産などを経ていない男性は、ある日、突然、父親になるわけです。
意識や知識、技術についてしっかりと準備ができている人はほとんどいません。
しかし、今は男性も子育てをすることが求められる時代。
よくわからないまま「よい父親にならねば」と、子育てに対して少し力が入りすぎている男性がみられます。
子育ては、確実に成長はしているもののすぐに成果も出ませんし、成果を感じにくいところがあります。
目に見える成果が出る仕事とは対極の位置にあると思います。
とくに仕事で成果を出してきたパパの中には「きっと子育てもできるだろう」と思っていた人もいると思いますが、仕事のようにうまくはいかない。
できないこと自体を認めることも苦しいところだと思いますし、働き方改革が進んでいない中では、仕事と育児の両立への意識が高くても、長時間労働のまま、職場の理解が得られず、十分に関われない場合もあります。
自分の思いと子育ての現実に乖離があるときに、しんどくなったり、自分自身を責めてしまったりしてしまうこのような状況が男性の産後うつの一因になると考えられます。
どうやら、男性の「産後うつ」は妊娠や出産を経験していないからこそ起こりやすいようです。
しかも、自分はできると思っていたりやる気がある前のめりなパパの方が、うまくいかないときのショックも大きいので、心配というのはなんとも不条理な気がしてなりませんよね。
こういった状況を踏まえて、すでに子育てをしているパパに実施したアンケートの結果をみていきましょう。
パパしるべ読者には産後うつ経験者が多い?
まずは、男性の産後うつについてパパたちはどのくらい認識しているのでしょうか?
父親の産後うつを知っていましたか?
- 知っている:86.8%
- 知らない:13.2%
パパしるべのLINE公式アカウントに登録しているパパは、子育てに積極的なパパが多いこともあり、かなり認知度が高く、8割以上のパパが知っているという結果でした。
では、実際に「産後うつ」になったパパはどのくらいいるのでしょうか?
ご自身は「産後うつ」だったと感じたことはありますか?
- ある:55.3%
- ない:31.6%
- わからない:13.2%
クリニックなどを受診していないケースも多いので、今回は「産後うつ」と診断されていなくても「産後うつの疑いがある」と感じた人も含めて回答してもらいました。
そしたら、なんと半数を超える人が「産後うつ」との回答...!
小﨑先生のコメントにもあったように他の調査結果では1割程度という割合なのに対して、パパしるべのユーザー周りでは大幅に多いことからも、積極的に関わるパパの方が心配ということを裏付ける結果のように感じます。
男性の産後うつで最も多かった症状は?
実際にどんな症状だったのか聞いてみたところ、上位3つはこのようになりました。
具体的にどんな症状でしたか?(複数回答可)
- 1位:強い落ち込み(59.1%)
- 2位:感情がコントロールできない(54.5%)
- 3位:無力感(45.5%)
もう少し具体的に症状についてもコメントをもらっています。
- ママが大変な状況の中、実家の場所や体調の理由により、お互いの家族の両親に頼れず、自分の不安感をどこにも出せなくとても辛かった。(40代)
- 育休が明け、仕事が始まってから辛かったです。下の子に掛かりきりになり赤ちゃん返りする上の子、日中ワンオペになり荒れる妻のケア、夜泣きの対応、と己に課されるタスクの多さと休まらない日々に絶望しながらも子の前ではそんな顔も見せられないという逃げ場なしの状況。一生懸命定時で帰っても家の空気が最悪なとき、なんとか自分を奮い立たせてました(30代)
- 家事、育児、仕事に追われ気が張っている状態が抜けず、色んなことが気になり寝室に向かう気になれなくなりました。眠いのに寝る時間が勿体なくて深夜でも色んなことを始めてしまい、肉体的にも精神的にも疲弊している状態のまま生活するのが辛い。休めばいいんですけどそれが出来ず。(40代)
- 完璧主義傾向が強く、妻の役に立てていない自分に存在価値を感じられず落ち込みが長くつづいた。(40代)
- 今まで当たり前にできたことができず、職場に迷惑をかけた(40代)
- 症状を自覚できない。認めるのがつらい。(40代)
- 上の子の世話に加えて、夜間の頻回授乳(ミルク)での寝不足。そこにウンチ漏れ、ミルクの吐き戻し、大泣きされると、頭がパンクして怒りと焦りと無力感が一気に押し寄せる。しかし子供には怒りをぶつけまいと懸命に心を落ち着かせ、目の前のことに対処するが、徐々に孤立感や耐え難い辛さがこみ上げてきて涙が出てくる。(30代)
- 深夜帯の寝かしつけ。孤独感と泣き止まない子どもの声で感情のコントロールが難しかった。(20代以下)
- 睡眠不足から情緒が不安定になり、1日のなかで躁鬱を繰り返した(30代)
- 良かれと思ってやったことが何一つ妻の力になれていなかったこと(30代)
読んでいるだけで身につまされるような、辛辣な経験がたくさん届きました。
冒頭にまとめた小﨑先生のコメントにあったことが、ズラリと並んでいるのが印象的です。
男性が産後うつを乗り越えるためには
では、産後うつを乗り越えるにはどうしたらいいのでしょうか?
まずは、産後うつを経験した男性たちはどのくらいの期間で乗り越えることができたか聞きました。
産後うつだった期間はどのくらいですか?
- 1か月未満:13.6%
- 1か月~3か月未満:40.9%
- 3か月~半年未満:18.2%
- 半年~1年未満:13.6%
- 1年以上:13.6%
もっとも多かったのは「1か月~3か月未満」で4割ほど。
だいたい7割くらいは半年以内におさまったという結果になっています。
実際に、どうやって乗り越えたのでしょう?
どうやって産後うつを乗り越えましたか?
- 時間とともに落ち着いた:57.1%
- 夫婦で話し合った:19.0%
- カウンセリングなどを受けた:9.5%
- 継続中:9.5%
- その他:4.8%
およそ6割は時間が解決してくれたとのこと。
もしかしたら、シンプルに子育てや、子どもとの生活に慣れてきたことが要因なのかもしれません。
ただ、落ち着くまで待つしかないのでしょうか?また予防する方法はないのか?
経験した人たちがどう感じているのか聞いています。
父親が「産後うつ」にならないために必要なことは?
- 1位:頑張りすぎないこと(71.1%)
- 2位:夫婦円満(63.2%)
- 3位:外部の助け(60.5%)
- 4位:知識など事前の準備(55.3%)
- 5位:パパ友などの存在(42.1%)
「頑張りすぎないこと」が7割を占める結果。
裏を返せば7割もの人が頑張りすぎていたと自覚していることがわかります。
頑張りすぎているパパには小﨑先生もこんなアドバイスを送っています。
うまくいかないことも含めて子育てであり、失敗を積み重ねて素敵な親子が出来上がるものです。
うまくいかない中で少しのうまくいくことや楽しさをつなぎ合わせて、親子や家族がゆっくりと形作られていきます。
少し肩の力を抜いて子育てを楽しみましょう。
本当にそうですよね。
わかっていてもなかなかできないところですが、少し意識を変えておいた方がよさそうです。
また2番目にパートナーとの良好な関係が挙がったことからは、長い時間を過ごす家の中の空気感も重要であることがうかがえます。
そして、こんな声もありました。
- SNSと適度な距離を置くこと。特に、「妻の役に立ちたい」と強く願う夫たちは、世の中の妻サイド発信の旦那の愚痴等は参考程度に留め、真に受けすぎない方がいい。自分が「突っ込まれない完璧な夫」を目指してダメになってしまったので…(40代)
これは今どきの問題ですね。
なかなか外部とのコミュニケーションが取りにくい産後にSNSに繋がりを求めることも多くなりそうですが、逆効果になってしまうこともあるようです。
最後にパパたちが男性の「産後うつ」への率直な思いや、もっとこうだったらいいのにと感じていることを聞きました。
- (父親・産後うつに限らずだけど)ライフステージの変化は適切な心の扱い方を知らないと簡単に崩れるので、義務教育レベルから人間の心理に重きを置いた教育を拡充するといいと思う。(40代)
- ともすれば男女の対立を煽らんとする話になりがちですが、パパもママもそれぞれ大変な思いしているよね、という相互理解が深まればいいのになぁと感じます(30代)
- 家事、育児に対し同じように取り組んでいるパパさんが周りにいないので『共感し合える仲間』がいて励まし合える環境が作れていたら違ったのかなとも思います(40代)
- 核家族化で親の負担が増している。父親が子連れで集まれる場所が、平日にも多くあれば、多くの大人の目の中で助け合いながら育児できるのにと思う(30代)
- 妻の産後うつは覚悟していたので知識と対策はしたつもりでしたが、ずっと無視されるとどうにもなりませんでした。妻も何で無視していたのか思い出せないそうです。今思えば第三者の介入が必要だったのかなと思いますし、妻も家の外にもっと出た方が上手く行っていたのかなと。(40代)
- 産後すぐにヘルプを出したり外出したりすることはハードルが高いので、あらかじめ繋がり続ける関係性や外部サービスがあるとよさそう。(30代)
- 自治体の子ども家庭支援課、保健師、訪問員、子育て支援施設などで、父親への「すごいですね」「えらいですね」ではなく、「大変ですね」という声かけと、愚痴を引き出して聞いてあげる体制・雰囲気(30代)
- 女性が「パパは産まないんだから産後じゃないでしょ」と言っているのを聞いたことがあるが、言葉尻よりそういう現象があるということをまず認識してほしいと思った。(40代)
- 明らかに相談できる場所が少ない。ママ向けのものがあるが「平日は17時、土日は相談不可」など働いている場合、どこに相談すればよいのかと思うレベルだった。批判覚悟で書くが、まだまだ、女性に比べて男性側が助けを求められる場所や支える仕組み、声のあげやすさが圧倒的に不足していると思う。例えば、パパ嫌期についても、毎日イヤイヤされたときに感じるつらさや、相談先、世の受容をもっと広げてほしい。(40代)
コメントにもありましたが、夫婦でどっちが大変かを競うような形にならないことはとても重要ですよね。
また実際に出産を経験した女性をサポートする仕組みが一番になることは当然ですが、一方で男性にも参画を促すのであればサポート体制はぜひ整備してもらいたいところ。
そのあたりはここから進んでいくのではないでしょうか?
今回もご協力いただきありがとうございました。
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