男性育休推進で増加!?アンケートで分かったパタハラの事例

厚生労働省の調査によると、令和4年度、男性の育休取得率は17.13%と増加しています。

その一方で、いまだに残ると言われるのが育児に参加する男性従業員に対し、嫌がらせや不利益を及ぼす行為。

「パタニティハラスメント」略して「パタハラ」です。

今回は「パパしるべ」のLINE公式アカウントに登録している1400人以上のメンバーに、「パタハラ」を受けたことがあるかどうか、また実際にどんなことがあったのかアンケートを実施。

「パタハラ」の実態と具体的な事例についてお伝えします! 

「戻ってきたら机ない」「君には情がない」辛辣な言葉たち

パパしるべでは、まだ改正育児・介護休業法が施行される前の2021年6月にもパタハラに関する調査を実施しました。

ちょうど当時厚生労働省の実施した調査が公表され、過去、パタハラに遭った男性は約4人に1人ということが分かったところで、パパしるべの調査でも概ね4人に1人がパタハラ経験があるということがわかりました。

それから2年。

法律も変わり、これだけ男性の育休取得率が上がった中で、その現状はどのように変化しているのでしょうか?

パタハラを受けたことはありますか?

  • ある:61.1%
  • ない:38.9%

なんと!

パタハラを受けたことがある人は、6割を超えるという大幅に増えた結果が出ました。

思惑とは完全に逆行しているように伺えます。

こちらは、必ずしも最近受けたものだけではありませんが、もしかするとこれは、そもそも育休を取ろうとした人が増えたことでその反発を招いてしまった人が増えてしまったという想像もできます。

ただ、それにしても多すぎる印象です。

では、パタハラをしてきた相手はどうでしょうか?

誰からパタハラを受けましたか?

  • 男性上司:43.8%
  • 女性上司:31.3%
  • 男性同僚&後輩:6.3%
  • 女性同僚&後輩:6.3%
  • 家族&親戚:12.5%

最も多いのが「男性上司」であることは2年前から変わっていませんでした。

そもそも育休取得に際して、直接的に関りが深いのが男性上司であることも考えられますが、いまだ男性上司に男性が育休を取得することに対しての抵抗感が残っていることが考えられます。

男性上司からのパタハラはどのようなものがあるのでしょうか?

届いた声から一部抜粋して紹介します。

  • 男性育休を取得する際、「戻ってきたら机ないで」といわれました。その時は仲の良い上司だったので半分冗談と受け流せましたが、ちょっと難しい発言でした。(40代)
  • 育児休暇を取ろうとしたら、仕事のスキルアップが不十分なのに許可できないと、取得拒否された。結果として有給休暇として、数日休みをとった。(40代)
  • 上司に「男が育休取る必要ある?」「うちの奥さんは、1日中家にいられても嫌だって言ってたよ」「(育休取得から半年過ぎた頃職場に呼ばれ)現場に人がいないの分かるだろ?君には情がない。」と言われた。反論し、1ヶ月ほど考え込み、別の上司にそのことを相談して乗り切った。(20代以下)
  • 以前勤めていた会社ですが、2人目を妊娠した際の育休取得について部門長から「組織としては受け入れるが、個人的には断りたいけどな」と言われた。より子育てとの両立に理解のある職場へ転職しました。(30代)
  • 男性では社内初の育休を申請したら、やる気なし、可愛がってきたのに裏切ったとされ、申請書は破かれ、その日以降ノルマ上乗せやらグループウェアで名指しの批判等が重なり、会議資料が自分のとこだけ来なかったり、挙句年度変わり数日前に転居が必要な転勤と受け入れない場合は降格をちらつかせられた。まだ乗り越えてません。10年以上経っても、尾を引くくらいに色々と影を落としていると感じています。(40代)

どれも聞くに耐えないものばかり。

噂には聞きますが、ここまで具体的な例を目の当たりにすると、男性の育休取得率がこれ以上上がっていくことがいかに難しい現状化がわかります。

パタハラは男性からだけではなく女性上司も...!

先ほどのパタハラを受けた相手に関するアンケートで印象的だったのは、2年前20%程度だった「女性上司」から受けた人の割合が3割を超えていて、増えていることです。

実は今回女性上司からのパタハラの事例も多く寄せられました。

女性上司からのパタハラ具体例

  • もう10年以上前ではありますが、現在中1の長女が生まれるとき「まさか男が育休取るなんて言わないよね。」と言われました。こちらからはまだ育休のいの字も言ってなかったのですが…。先手を打ってきた感じですね。結局当時は乗り越えられず、育休を取らずそのままずっと仕事をしていました。今思うともっと戦っても良かったのになと思います。(30代)
  • 子どもの三者面談があり、夫婦で話しあい、父親である私の方が仕事の調整がつくので私が参加することにしました。職場に三者面談の事を伝え、その日の午後は不在になる事を伝えました。その翌日に上司がドンピシャの日時に仕事の予定を入れてきた時に「もしかしてわざと?」と思いました。同僚が「○○さんは、お子さんの三者面談でしたよね」と声を掛けてくれたので、上司にその旨を伝えて休みを貰えました。(40代)
  • 時短勤務なのに仕事量は減らず、それを指摘したら「だってあなた男でしょ」と言われた。(40代)

パタハラをしてきた女性上司たちがどのような状況なのかはわかりませんが、こういったことで辛い思いをするのは、男性たちのパートナーである同じ女性になるケースが多いわけで、ちょっと驚きを隠せません。

また、今回は職場の女性以外からも男性に向けたパタハラ的発言の例が寄せられました。

  • 娘の学校のお弁当を毎朝作っているのですが、学校の講演会や父母懇談会などに行くと先生方からよく「子どもたちはお母様方が作ってくれたお弁当を毎日楽しみにしています」と言われます。その娘が赤ちゃんの時はベビーマッサージ講座に行ったことがあるのですが、講師の方の主語が全て「お母さん」だったのをよく覚えています。(30代)
  • 妻から「抱っこ紐で抱くのはカッコ悪い。それはママの仕事」と言われた。手で抱っこして頑張りました。(50代)

子育ての現場で女性に限定した表現は減ってきたようにも感じますが、まだまだ残るところですし、「今はお父さんが作っている場合もありますけどね」といったついでみたいな発言をする人も結構いて、肩身が狭い思いをすることがありますよね。

またさすがに妻から言われるのはなかなかショッキングです。

こういった現状を見ると、性別的な役割分担意識が根強く残ることは間違いなさそうですが、それは男性に限ったことではないということです。

また、皆さんがかけられた言葉を聞くと、とても個人的な感情や価値観が多分にこもっているようにも感じられ、しかもそこには、自分がそれで苦しんだり辛い思いをしたことへの恨みやつらみもあるような気がしてなりません。

そう考えると、そもそも辛い思いをする人が少しでも減ることで、全体的な減少傾向に繋がるのかもしれないとも感じます。

最後に、パタハラを受けた人も、受けていない人もこの現状をどう感じているのか?率直な思いを聞きました。

パタハラについて感じていること

  • 職場が変わらないなら家庭は変わらない。仕事に余裕がないなら家庭にも余裕は生まれない。
  • 今は時代が変わっているに、価値観も変わっているのに以前の常識を後輩たちに押し付けないで欲しいです。
  • 価値観の差はあると思います。そういうことについては、自分もしっかり学びたいなと感じています
  • 経験者だからこそ、無くすために行動出来る。それが今の自分の行動理念になっている。
  • 男の育児には理解する人と理解しない人がいる。現場の人手不足を理由に怒るのは、上司のマネジメント力が不足しているのではないかと感じる。
  • 「育児は女性がメイン」だと思っている人はまだ多いのではないかと思います。自分が言われたことについても相手に悪意はなかったように思います。思い込みのせいで相手を傷つける発言をしていること、ズレた発言をしていることに気づけていないのかな、と。
  • 会社や組織のトップや幹部の意識がすべてだと思います。昭和のおじさんたちには、まだまだ子育ては女の仕事だと考えている人たちがいます。リーダーが方向性を示して、心理的安全性を作らないとダメだと思います。イクボス養成も重要だと思います。

どれも納得の言葉ですが、2年前のアンケートでも見かけたような既視感のあるコメントが多いと感じます。

法律が変わったからといってすぐに状況が変わるわけではないかもしれませんが、少しずつでも変わっていくことを願うしかないのでしょうか?

なんだかモヤモヤが募りますね。


ご協力いただいたみなさん、本当にありがとうございました!

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