子どもって本当に思ったように動いてくれないもの。
だからこそ思わず手出し口出ししてしまうという人も多いでしょう。
でも、出来ればやめたい…。
そんな時はどうしたらいいのでしょうか?
今回はアドラー心理学に基づくコミュニケーションの専門家で、アドラー式子育ての熊野英一さんに、子どもについ手出し口出しをしてしまう人たちに伝えたい考え方・やってはいけないことを教えてもらいました。
口出ししてしまう親は、”誰の”課題なのかを考えよう
5歳の息子が、サッカーのクラブに入りました。
自分もかつてサッカー少年でしたので、毎回練習に連れていくのも楽しんでいます。
ところが、冬の大会に向けてレギュラー争いが激しくなった頃から、練習態度やプレーのパフォーマンスが心配になって、つい手出し、口出ししてしまいます。
最近では練習に行きたがらないようになってしまったようで、悩んでいます。
どうしたら良いでしょうか?
子どもの成長・成功・幸せ・自立を望まない親はいませんね。
親であれば、誰もが我が子に「こうなって欲しい!こうはなって欲しくない!」という期待や希望を持っているものです。
ところが、親としてのこうした「善かれと思っての期待」が、むしろ、子どもの「頑張ろう!困難を乗り越えよう!」という勇気をくじき、甘えを助長してしまう元凶になり得るとしたら、私たち親はどうしたら良いのでしょうか?
私たち親は、子どもを愛しているばかりに、善かれと思って、本来子どもが自分で解決すべき課題に土足で介入しようとします。
習い事の練習、学校の宿題、忘れもの、子どもの部屋の片づけ、子どもの交友関係、朝寝坊、きょうだい喧嘩などは、すべて「子どもの課題」です。
こうした問題を放置した結果の責任を誰がとるのか?と、考えてみれば、その課題が「親の課題」なのか「子どもの課題」なのかがわかってきます。
これを混同したままでいる親は、なにかと「子どもの課題」に手を出し、口を出してしまいたくなるでしょう。
ご質問のケースで考えてみると、練習をサボったり、プレーに集中しないでいる結果、コーチに怒られたり、レギュラーに選抜されなかったりと、嫌な思いをする張本人は、「子ども」ですから、これは「子どもの課題」です。
一方、こうした子どもの状況を見て
「このままだと子どもが不幸になるのでは?後で困るのでは?せっかくお金をかけてユニホームも揃えたのに辞めちゃったらもったいないよな?」
などと心配し、子どもの言動を親の価値観にあった言動に修正したいのに、子どもがいう事を聞かないがために「イライラする」というのは「親の課題」です。
心配している人は誰?イライラしている人は誰?
と、主語を考えれば「誰の課題か?」をすぐに判断できるようになるでしょう。
余計な心配をやめて、親と子の「共同の課題」を考える
ご質問のパパは本来「親の課題」である「心配な気持ち」の解決を、自分自身ではなく子どもに求めていますね。
子どもからしたら「余計なお世話!心配しているのは、パパなんだから、自分で解決してよ!」と思っているかもしれませんね。
ここで、私たち親にできることは2つあります。
親にできること1
(子どもが願っている通り)余計な心配をするのをやめる
つまり子どもを信じて見守り、過保護・過干渉にならないよう、一定の距離を置くのです。
放置・放任とは異なります。
子どもの課題(サッカーの練習に積極的に参加するかどうか)に無関心であろうとするのではなく、
自分が過度に心配し過ぎて、手出し口出ししてしまう結果、我が子が<親に言われないと動かない子>になってしまわぬよう、自分の気持ちをコントロールする
のです。
「失敗を経験して学ぶ」ことは、子どもの成長・自立の過程にとって不可欠なプロセスです。
「サッカーの練習をしない」という選択の結果を、子ども自身が引き受け、その責任を取る事を学ぶ、せっかくのチャンスを子どもから奪い取らないように、ご留意ください。
私たち親ができる2つ目のことは、
親にできること2
「子どもの課題に土足で踏み込む(おせっかいを焼いて過保護・過干渉になる)」のではなく、「子どもの課題に、ノックをしてから介入し、<共同の課題>にする事を、子どもと話し合って合意する」
例えば、こんな声の掛け方はいかがでしょうか?
練習に嫌気がさして、目の前の課題から逃げたくなっているようだね。
パパにもそんな経験があるから、その気持ちはわかるよ。
でもね、パパは、人生の先輩として、練習には参加しておいた方が良いと知っているから、アドバイスはしておくよ。
練習に参加するか、しないか、自分の責任で選択すれば良いけど、結果は自分で引き受けることになるよ。
君は、自分のことは自分で決められる子だって、信じている。
もし、サッカーの練習のことで何か困ったことがあるなら、すぐに教えてね。
いつでもサポートできるように、近くで見守っているからね。
自分は親として「心配(しんぱい)」よりも「信頼(しんらい)」を選択した事を伝えるのです。
「お前は心配をかける子だ」と言われるのと、「君は信頼できる子だ」と言われるのとでは、子どものやる気、困難を克服しようとする勇気に、どちらがプラスの影響を与えるでしょうか?
冷静に考えてみたら、自ずと答えは出るでしょう。
熊野さん、ありがとうございました!
改めておさらいすると…
ポイント
- まず「子どもの課題」と「親の課題」を切り分ける
- 自分の感情をコントロールして過干渉にならないように距離を置くか、話し合って合意した上で「共同の課題」を設定する
- 子どもを「心配(しんぱい)」するのではなく「信頼(しんらい)」する
「子どもを信頼する」ということは、簡単そうでなかなか難しいことかもしれません。
でも、先にある自立を考えたら、まずは手出し口出ししたい自分を見つめ直して挑戦してみましょう。
また、熊野さんのアドラー式子育ての講座では、家庭はもちろん仕事でも使えるコミュニケーションのコツを学ぶことができます。
こちらも気になった方はぜひチェックしてみてください!