お手伝いにお小遣い制は必要?見返り目的にならないためのアドラー式考え方

お手伝いをしたらお小遣いをあげるというやり方は、いろいろな家庭で実施していると思います。

これって子どものために本当にいいことなんでしょうか...?

アドラー心理学に基づくコミュニケーションの専門家でアドラー式子育ての熊野英一さんから見た、このやり方に対するアドバイスを教えてもらいました。

お手伝いで誰かの役に立つ!その経験は大切

質問者

4歳の息子が家庭内のお手伝いをできるようにするため「○○ができたら、50円」のような報酬制度を導入しました。

当初はいい仕組みだと思っていたのですが、最近は値上げを要求されたり、お手伝いを拒否されたり、と雲行きが怪しいです。

何か気をつけたほうが良いことはありますか? 

人間は「自分には価値がある、自分は誰か(特に自分が所属している家族や友達、学校のクラスなど、親しい人たち)の役に立っている」と実感できると、とても嬉しく、幸せを感じる生き物です。

例えば、子どもに「オモチャを片付けなさい!」と命令すると、やりませんが、「ねぇ、自分で自分の大切なオモチャを片付けることできるかな?片付けるところ、見せて!」と依頼すると、喜んでその依頼に応えようとする子は多いのです。

自分は役に立てるんだ!と、自分のチカラを証明して、見せたいのですね。

これは、子どもが自立に向かって成長し、幸せな人生を歩めるようになる過程で、とても大切な「他者貢献」の感覚を身につけることを意味しています。

「他者貢献」は、「本当は嫌だけど、我慢して、こんなにやってあげている!」という「自己犠牲」の気持ちをベースにしたものではありません。

むしろ「やりたいから、やる!そうすることが嬉しい!」という「自己満足」の気持ちで「誰かの役にたつ(他者に貢献する)」ことを言います。

アドラー心理学ではこれを「共同体感覚」と呼び、アドラーは「子育ての目的とは、子どもに『共同体感覚』を身につけさせることだ」と表現しています。

自分を犠牲にして、骨身を削って奉仕することを教えるのではありません。

自分のことを大切にしながらも、同時に、周囲の他者の役にたつ行動を選択できるように、小さな頃から様々な経験による学びの機会を提供していくということです。

 お小遣いはあくまで「オマケ」

ご家庭においては、その子ができる「お手伝い」を決めて、責任を持って役割を全うしてもらうことが、最もわかりやすい「他者貢献」の練習になります。

ですから、4歳の息子さんに、お手伝いをできるようになってほしい、という出発点はとても良い視点だと思います。

自分が誰かのために役にたつ行動ができた時。

もちろん、「ありがとう!」と感謝されたり、ほめてもらったり、あるいは、なんらかの報酬(ご褒美としての金銭や物品など)を得られたら、嬉しいことでしょう。

でも、それはあくまでも「オマケ」の話です。

そうした「見返り」を期待して、それを前提にした貢献、となってしまうと、「共同体感覚」から少しズレてしまうことになるでしょう。

自分の行動が誰かの役に立った時、見返りがあろうがなかろうが、自分は満足した気持ちになる---これが、共同体感覚なのです。

ご褒美をくれるならやるけど、ご褒美をくれないならやらない。

このような「見返りがない限り他者への貢献はしたくない」という考え方を身につけてしまうと、色々と厄介なことが起きそうだとは思いませんか?

何か、お手伝いをお願いしようとするたびに、子どもから「それに対する報酬はいくらなの?」と条件交渉をされるようになるかもしれません。

こちらは頼んでもいないのに、報酬欲しさに余計なことをしては「お手伝いしたから、報酬ください!」と無茶な要求をしてくるようになるかもしれません。

子ども時代とは、すなわち、お金を稼ぐために自分の時間を使う必要なく、遊んだり学んだりすることにたくさんの時間を使うことができる期間です。

何か欲しいものがあって、親がそれを買い与えても良いと思えるものであれば、そこに子どもからの労働を要求する必要はないと考えられるかもしれません。

お手伝いと報酬について、もう一度息子さんとしっかりお話ししてみてはどうでしょうか。


熊野さん、ありがとうございました!

改めておさらいすると…

ポイント

  • 自分は誰かの役に立ってうれしいという感覚「他者貢献」は自立のために大切。
  • ただし、他者貢献は自分を犠牲にするのではなくやりたいからやるという「共同体感覚」が必要。
  • 見返りが前提の「他者貢献」は「共同体感覚」とはズレる。報酬はあくまで「オマケ」。

お手伝いは、家事スキルを学ぶためにも大事なことだとは思いますが、どのようにやるかについては、よく考えた方がよさそうですね。

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