このところ議論がより白熱している「選択的夫婦別姓制度」。
現役子育て世代は賛成、反対どっちが多いのか?
またそれぞれが感じる、選択的夫婦別姓のメリット、デメリットとは?
LINE公式アカウントなどで実施したアンケートに寄せられた声をもとに、名前の選択が子育てや家庭生活にどのような影響を感じるのかを掘り下げます。
「選択的夫婦別姓制度」とは?
婚姻関係にある夫婦が別々の苗字を名乗ることを選択できる制度。
従来どおり同一の苗字にしてもよく、どちらを選ぶのかは当事者が決められます。
子供の苗字についてですが、「選択的夫婦別姓制度」が認められた場合、夫婦別姓を選んだ家庭は夫婦の苗字が異なるため、子供の苗字も夫婦どちらかの苗字にすることになります。
1996年(平成8年)にあった法制審議会の答申では、「子どもは結婚時に決めた戸籍筆頭者の苗字で統一される」と決まっていました。
一方、公明党や野党案では子供が生まれる度にどちらかの苗字にするかを決めるという案です。
夫婦が同じ姓になったのは、明治以降のこと
国会で日々様々な制度について議論が行われていますが、その中で家庭生活に直結する「選択的夫婦別姓制度」については子育て世代も関心が高いと思います。
アンケートの結果に行く前に、まずは基本的な経緯などをおさらいしておきましょう。
ちなみに、法律上は苗字のことを「氏」(うじ)としますが、今回はなじみがある「苗字」として話を進めていきます。
苗字は近代国家になってからのもの
歴史の教科書に出てくる人たちはほとんど苗字がありますが、江戸時代までの日本では苗字を持つ人は基本的に武士や公家に限られていたので、農民をはじめ多くの人は苗字がありませんでした。
また、明治になって戸籍を整えることとなってはじめて苗字をもたなければいけないことになったのですが、実は最初の20年くらいは、「夫婦別姓」でした。
「夫婦同姓」となったのは明治時代でも中期にあたる1898年のことです。
その後は、大正、昭和後期まであまり議論されることもなく続いてきましたが、1970年代の高度成長期に女性の社会進出が進んできたことをきっかけに、別姓についての議論が始まります。
しかし、当時は反対意見も多く、また裁判などでも合憲と判断されたため、制度の導入には至っていません。
平成後期からはより女性の社会進出が進んだこともあって、今まで以上に議論されることが増加。
今まさに制度を導入するかどうかというところまで進んできました。
世界の夫婦別姓
世界的な視点で見ると、法律で夫婦が同姓でなければいけないと決めているのは日本だけ。
中国や韓国は結婚しても別姓ですし、フランスやアメリカなどは以前から選択ができました。
またドイツは1991年に夫婦同姓から選択的夫婦別姓に変わりました。
ちなみにイギリスに至っては同姓、別姓の他に新しい苗字を作るなどかなり自由度が高い制度になっています。
国民性などもあるので「世界がこうだから日本もそうした方がいい」というわけではないと思いますが、少なくとも「選択的夫婦別姓で進んでいる国も多くある」ということです。
ちなみに日本でも国籍の違う人と結婚した場合は、別姓にするか同姓にするかを選ぶことができます。
こういった状況を踏まえて、アンケートの結果をみていきましょう。
「選択的夫婦別姓制度」子育て中の人は賛成・反対どちらが多い?
まずは、ズバリ選択的夫婦別姓制度に賛成か反対かを聞きました。
選択的夫婦別姓制度に賛成ですか?反対ですか?
- 賛成:54.1%
- 反対:35.1%
- どちらともいえない:10.8%
賛成の方が多い状況ではありますが、圧倒的かというとそうではありません。
昨年、NHKが行った調査によると賛成が62%で反対が27%だったので、子育て世代に絞った今回はそれに比べるとやや反対が多い結果になっています。
一部抜粋にはなりますが、それぞれの声を見ていきましょう。
賛成意見の声
- 「選択的」であることから当事者の判断に委ねられているという前提があり、また改姓による負荷の高さを避けたい人の気持ちは理解できるため(40代)
- 苗字変更における事務手続きでの様々な負担減、自分の苗字への愛着、子の世代に苗字を残したいなど、別姓にしたい理由は色々あるかと思います。また外国籍と日本国籍の夫婦は原則夫婦別姓、同姓選択可能です。日本国籍同士で別姓を求める人がいるなら拒む必要はないと思います。(40代)
- お互い生まれた時の名前を大切にできるから(30代)
- 別姓にできなくて困っている人がいる事実があり、選択制にして困る人はいないと思うので。(40代)
- 人によって苗字にこだわりが違うし、同じにする意味がない(20代以下)
- 子どもたちにより多くの選択肢を与えるのが大人の役目だと思うので(40代)
- 働く女性も増えている中で、主に女性側が大変な思いをする姓を変える制度について、選択肢を設けるのは妥当なことだと考えます。(50代)
- 選択的なので迷う理由がないですよね。それぞれの大切にしている価値観を尊重すれば良い。なぜ今、議論しているのかも実は僕は理解できません。同姓でも別姓でも自分で選択できますよ。ってだけなんですから。(40代)
かねてから言われている苗字が変わったときに手続きなどが大変であることや、女性が変えるケースが多い(現状9割以上女性が苗字を変えている)ということはもちろんですが、「選択」という言葉が多く出てきたことが印象的でした。
賛成している人の多くは、別姓にしたいというわけではなく、あくまで選ぶことができる状況についてポジティブに捉えているようです。
一方で反対の意見がこちらです。
反対意見の声
- 子どもが悩むから(20代以下)
- 法令の変更、システムの修正など関わる対応を考えると、それで生じる便益を上回るとは思えない。同姓による不利益も見聞きしているが、運用で対応すべきところができてないだけで法令に対応を求めるのは違うのでは?(40代)
- 通称使用案がある限り、あえて制度化する必要性を感じないため。(30代)
- 影響の議論が不十分で、まだ国民全体へ理解が得られていないためです。理解もできますが不都合も多そうに感じる。(30代)
- 子どもが生まれても自ら姓を選べない。日本古来の戸籍制度が崩壊する。(50代)
- 家族の絆が希薄になりそう(30代)
- 政治家が焦って決めようとしているという、ろくでもないものだから。(30代)
- 強制的親子別姓であり、子どもの姓を親の話し合いだけに頼るなどありえないと思う。全く考慮が足りていないと感じる。(20代以下)
- 子どもの姓で揉める可能性がある為(30代)
中には制度の中身ではない視点から見た声や、提案されている制度が理解されていないと感じる声もありましたが…。
旧姓などの通称の使用できる範囲を広げることで制度を変える必要はないという声は、国会などでもよく出る意見が見られました。
ただ、それよりも多く挙がっている懸念点は「子ども」について。
ここは今まさに子どもと向き合っている子育て世代だからこそだと感じます。
だからこそ、幅広い世代に向けたアンケートに比べて反対が多くなっているのかもしれません。
ちなみに「どちらとも言えない」と答えた人にはこんな声がありました。
どちらとも言えないという声
- 夫婦は良いが子どもがどうなるのか、そこまで議論すべきことだと思う。(30代)
- 婚姻制度を使わずに同居すれば別姓にできると思います。(40代)
- 相互にメリットデメリットがあり、決められない(30代)
- 手続きが手間なのは理解した上でそうしたい理由が自分にはわからない(30代)
ここでも制度まで変えなくてもいい、子どもへの懸念といった声があり、反対意見に近い印象があります。
もしもわが子が夫婦別姓を選ぶと言ったらどうする?
多くの人が懸念する子どもへの影響についてこんなことも聞いてみました。
夫婦が別姓になると「子どもはかわいそう」だと思いますか?
- 思う:27.0%
- 思わない:54.1%
- どちらともいえない:18.9%
ちょっと極端な聞き方かもしれませんが、より感情的な部分にフォーカスするため今回はあえて「かわいそう」という言葉を使いました。
その結果、おおむね賛成と反対と同じ割合となり、選択的夫婦別姓に反対する人の約8割が「思う」と回答していました。
賛成意見には家族の中だけの話という声がありましたが、実際には親子の苗字が違うことで周りの人から揶揄されるケースは想像できると思います。
よって、そんな姿を見てかわいそうと感じてしまうこともあるかもしれません。
また、先ほどの反対意見の中には親子だけではなく「家族の絆」という視点もありましたが、これもまたよく議論されるところ。
今回もそこを聞いています。
夫婦が別姓になると家族の絆は薄れると思いますか?
- 思う:27.0%
- 思わない:64.9%
- どちらともいえない:8.1%
「薄れると思う」と答えた人は「子どもがかわいそう」と答えた人と同じ割合。
しかし、「どちらともいえない」という人は減って、その分が「薄れるとは思わない」に加わった印象です。
これは、子育てをしている中で、例え苗字が違っても今と同じように家族として過ごすことができると感じている人が多いからかもしれません。
そんな現状の中で、こんな「もしも」という質問もしてみました。
もし今後、選択的夫婦別姓制度が適用された場合。わが子が結婚する際に別姓を選んだらどうしますか?
- 賛成する:62.2%
- 反対する:13.5%
- わからない:24.3%
「反対する」という意見が半減するという結果。
実際に選択的夫婦別姓制度には反対と答えた人の中でも、わが子については賛成すると答えた人もいました。
きっと葛藤はあると思いますが、わが子のこととなるとやはりちょっと違うのかもしれません。
一方で「わからない」と答えた人は4人に1人いる状況でもあります。
あくまで仮定の話なので判断ができない部分もあると思いますが、いずれにしても悩ましい問題であることは間違いなさそうです。
選択的夫婦別姓制度で起きている対立構造
最後に、「選択的夫婦別姓制度について思うこと」を自由記述欄に届いた声を紹介します。
- イデオロギーや経済的な利害で夫婦別姓の議論がされることが多く、子どもへの影響という日本の国益に直結する文脈で検討されることが少ない印象を受ける。(20代以下 反対)
- だれも求めていないことに焦点をあてる必要を感じない(30代 反対
- なぜこのようなアンケートが取られているのか不思議に思う。別姓にするべき正当性がない。(20代以下 反対)
- なぜ別姓が議論されているのか。おそらく結婚後も仕事を続ける時に支障をきたすと考えられているからが1番の理由ではないか?であるならば、業務に必要なことに関してはほぼ旧姓で手続きができるように法律は改正されているのだから、そこを今さら議論するのはおかしい。それよりも、戸籍制度が崩壊することで、我が国の安全保障が脅かされるおそれがあることを、むしろ議論して、夫婦別姓の是非考えたほうがよい。(50代 反対)
- 国民が反対しているのに、政府が進めるのは許されない。(30代 反対)
- 名義変更の負担がなく、慣れ親しんだ姓のままなので理解はできる(30代 反対)
- ぜひ出来るようになってほしい。私達夫婦は、淡い希望ですが子どもができるまでは事実婚で過ごしており、子どもができ色々と検討した結果入籍した経緯もあり、他の方の為にも早く承認されてほしい。(30代 賛成)
- なぜ議論しているのかわかりません。世界の多くの国では別姓は当たり前。国の価値観を個人に押し付ける意味がわからん。もちろん同姓が良い人は同姓で良いわけなので。(40代 賛成)
- みんなの選択肢を増やして、素晴らしい制度だと思います。(30代 賛成)
- 各家庭でいいように決められたらいいので、国がとやかく言うことじゃない。別姓で絆がとか日本古来の伝統が〜というなら、エビデンス出せくらいに思ってる。(40代 賛成)
- 戸籍とかいろいろ言っているけど名前変えるだけなのでアイデンティティの問題だし早く導入されてほしい。(30代 賛成)
- 子どもがかわいそうという考えは「夫婦同姓が当たり前」という考え方のもとで出てくるものかと思います。同姓、別姓どちらも当たり前になれば消えていく懸念ではないでしょうか。家族の絆において大事なのは夫婦、家族での対話であって苗字が同じであることは関係ないかと。外国籍と日本国籍の夫婦は家族の絆がない、ってことにはならないですよね。(40代 賛成)
- 多様性を尊重し、個々人のあり方を大切に思うなら反対する理由がありません。イエや血統を重視するのは、それによる相続益を得ている方々としか思いません。ちなみに家族の絆が〜という方々には「かならず妻の姓に改姓する」という法改正を提案してみたいですね。(40代 賛成)
- 反対している人はなぜ他人の生き方に口を出してくるのか分からない。(40代 賛成)
- 国の制度や政治家の受け入れが進んでいないのが遅れている一番の原因だと思う(30代 どちらともいえない)
- 婚姻制度に頼らなければいいと思います。(40代 どちらともいえない)
きっと、読んでいる皆さんそれぞれにも賛成、反対などの意見があると思うので、こういった声を見てツッコミたくなったりモヤモヤしたりすることもあると思います。
事実誤認や勘違いは訂正する必要はあるかもしれませんが、それぞれの価値観や考え方が違うことは当たり前のことで、どっちが正しいということではありません。
別の声を攻撃するようなことにはならないでほしいと感じました。
今回もご協力いただきありがとうございました。
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