育児・介護休業法で男性育休はどう変わったか?改正ポイントも解説

2022年4月に改正育児・介護休業法が施行され、男性の育休を取り巻く環境は段階的に変わっていきます。

では、どのように変わったのか?

パパの育休コンサルタントとして活動するやすだしゅうごさん監修の元、どのような制度になったのか、改正ポイントも整理してわかりやすくお伝えします!

日本の育休制度は世界一なのに、取得率が低い実態

厚生労働省の調査によると2020年度の男性の育休取得率は12.65%。

言うまでもなく、イクメン大国とも言われるスウェーデンをはじめとする北欧諸国はもちろん、多くの諸外国と比べてとても低い状況です。

この原因は、制度が良くないからではないか?という声もありますが、客観的にみると、どうやらそうではないようです。

ユニセフの「先進国における家族にやさしい政策」によると、日本は父親に認められている育休の期間が41カ国中堂々の1位。

給付が受けられる期間は約30週で、6ヵ月以上の有給育休制度がある唯一の国として評価されています。

それほどまでに恵まれた制度がある中でも一向に取得率が上がらないのはなぜなんでしょうか?

そのひとつの要因として挙げられるのが、今までの政府の働きかけが、主に育休を取得する当事者に向けた「育休を取りましょう」という意識啓発が中心だったこと。

もちろんこれは、男性でも育休が取れるという、最も基本的な情報を浸透させることには寄与したと思われます。

しかし、ある程度情報が広がった現在は、各所で行われている新入社員に向けたアンケートを見る限り、育休を取りたいという男性が8割を超えるケースが多く、これからはその取りたいと思っている人が実際に取れる環境を作ることが必要だと考えられます。

では、実際に取れる環境を作るためにどうしたらいいのか?

そこに着目したのが、今回の法改正に繋がっています。

企業に義務化された男性育休の個別周知

では、改めて法改正で変わる主なポイントを整理してお伝えします。

2022年4月より

  • 育休取得の意向確認の義務化
    配偶者の妊娠・出産の申し出をした労働者に対して、企業は産休・育休の制度があることを個別に知らせ、取得するように働きかけることが義務付けられる

2022年10月より

  • 産後8週以内に、これまでの育休とは別枠で最大4週間休める「男性版産休」が新設。分割も可能で、休業中は一定の就業も可能。
  • 男性が育休を取得しやすい職場環境の整備

2023年4月より

  • 育休取得状況の公表を義務化(従業員1,000人以上の企業)

この他にも企業に対する助成金「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」に関する加算などが変わりますが、主要なポイントは以上のようになっています。

「男性版産休」のような新たな取り組みもありますが、これまでと違って企業へのアプローチが積極的になりました。

背景には、以前から課題とされていた「職場が育休を取れる雰囲気ではない」「育休の事が詳しくわからない」といった声が多かったこと。

育休取得を申し出た際の嫌がらせ「パタニティ・ハラスメント」を改善することがあります。

制度は充実しているし、取りたいと思っているのに、会社が取らせてくれない。

もしくは、会社はダメとは言ってないけど、周りの空気を読んで自分も積極的に取れない。

そんな状況を変えようとしています。

特に、「個別周知」に関しては、努力義務だったこれまでは、企業からの働きかけがなかったという人が6割もいるという調査結果もあり、大きな変更点だと感じます。

しかも、ただ制度の内容を伝えるのではなく「取得するように働きかけること」が必要なので、かなり雰囲気は変わってくるのではないでしょうか?

また「男性版産休」の新設により、男性は1人の出産に対して最大で4回までは分割して休業することが可能になります。

産後直後に訪れる産後うつのリスクが高い「産後クライシス」と呼ばれる期間や、妻の復職、子どもの保育園入園など様々なタイミングに合わせて柔軟にプランを設計し選択できることにもなるので、取得が進むことが期待できそうです。

いずれにしてもこれまであった課題を少しでも改善するために進んでいる、男性の育休を取り巻く環境。

すぐに結果が出ることはなかなか難しいかもしれませんが、しっかりと制度を活用できるように、会社は人事だけでなく管理職に向けた制度の周知と理解の徹底をする。

そして、当事者は夫婦で産前産後の話し合い、会社を巻き込んでいくという双方での対話がポイントとなってきます。

<やすだしゅうご>

仕事も子育ても欲張る笑顔のパパを増やす」 をテーマに活躍中のワークスタイル・コンサルタント。
男性育休取得率1%台の2011年から合計3回・約200日の育休を取得。自ら働き方を開拓してきた経験を元に、仕事と育児・家事の両立を叶える働き方を提案。
埼玉県働き方見直し支援アドバイザー、キャリアコンサルタント。