乳幼児に多い事故の原因は布団!?家の中の危険箇所を知って事故防止を

様々な事故から我が子を守ることは、親としてしっかりやっていきたいことです。

そのためにも、乳幼児にどんな危険があるのか、知っておいた方がいいですよね。

そこで今回は、大阪大学大学院人間科学研究科、安全行動学研究分野・特任研究員で子ども安全ネットかがわ副代表の岡真裕美さんに、乳幼児の事故に関する基礎知識を教えていただきました。

0歳児の死亡事故1位は窒息

厚生労働省が発表している「人口動態統計」によると、0歳から14歳の各カテゴリーにおいて「不慮の事故」は死因の上位に入っています。

年齢ごとにその詳細は違いますが、0歳児の場合はどのような事故が多いのでしょうか?

令和2年の統計では、0歳児の死因の1位から4位は先天性のものや呼吸障害等、予防が難しいものが原因でとなっていますが、予防が可能な不慮の事故も5位と上位に入っています。

その内訳をみると、上位を占めているのが窒息です。

まだ自由に動くことができない新生児は、何かの拍子に口と鼻が塞がってしまい、息が出来ない状態になっても、その状況を自分で回避することができません。

これは寝ている時だけでなく起きているときでも。だからこそ大人が注意して見守らなければいけません。

では、どんな状況で窒息してしまうケースがあるのでしょうか?

窒息に関して言うと、口と鼻が塞がれば全てが原因になり得ます。

例えば、布団も原因になります。

寝るときに、寒いことを心配して、布団をかけてあげたら、それで呼吸ができなくなって窒息してしまうケースもあります。

そこで現在は0歳児が眠るときは、掛け布団を掛けずに、衣服と空調で温度の調整をすることが推奨されています。

また、敷き布団も比較的硬いものを使った方が、口や鼻を塞ぐ可能性を軽減することができます。

注意するのは布団だけでなく、ぬいぐるみも同じです。

枕元にお気に入りのぬいぐるみを置いておいたら、赤ちゃんが知らないうちに手で取って口元に持ってきたり、寝返りで顔が埋まってしまい、それで窒息してしまうということも考えられます。

まだ、ぬいぐるみを掴んだりできないと思っていても、いつのまにかできるようになっていたということもあります。

成長の早い0歳児は、昨日までできなかったことが急にできるということも多いと思います。

そのため、ある日突然寝返りができるようになりベッドから落ちてしまうことがあります。

また、ベッドサイドに柵を設けている場合は、その柵とベッドマットの間に挟まってしまい身動きが取れなくなってしまったことで、窒息してしまったというケースもあります。

また、私が実際に聞いたケースでは、四隅にゴムがついていて、ふとんの角に引っかけて使用するシーツを使用していたところ、寝ている時に子どもが激しく動き、親が気づいたらゴムが子どもの首に巻き付いて苦しんでいたというヒヤリハットもあります。

命に別状はなかったため、メーカーなどから注意喚起はされていませんが、そういう事例もあると知っておいてほしいです。

乳幼児の睡眠チェックは5分ごとが理想

まさにいつ事故が起こるかわからない状況ですが、どのくらいの頻度でチェックした方がいいのでしょうか?

家庭ではなかなか難しいですが、5分ごとに寝ている状況をチェックすることが理想です。

保育園でも、0歳児の午睡の時には5分ごとのチェックが基本となっています。

SIDS(乳幼児突然死症候群)の要因のひとつとも言われるうつぶせ寝をしていないかはもちろん、口元に呼吸を阻むモノがないかも確認します。

スウェーデンのホルムベルグが表した救命曲線をみると、心臓と呼吸が止まってから4分が経つと救命の確率は約20%、6分では15%と急激に下がり、数分目を離しただけでも蘇生が困難であることがわかります。

また、蘇生したとしても後遺症が残る可能性も充分に考えられます。

だからこそ、少なくとも5分ごとにはチェックした方がよいのです。

とはいえ、乳幼児を育てている時は、授乳やオムツ替えなどが頻繁でとても慌ただしい上に、疲労もあります。

パートナーなどと協力して見守るようにすることや、布団のセレクトなど、窒息の要因となり得るものをできるだけ無くすように努力した方がよいです。

赤ちゃんが過ごす環境に気を付けることはもちろんですが、その他にはどんなことに注意すればよいのでしょうか?

もしも、赤ちゃんにお兄ちゃんやお姉ちゃんがいる場合は、その子たちの行動にも注意が必要です。

特に、年が近く、1~3歳くらいの子どもは、危険について充分に理解していない場合も多く、赤ちゃんの命に関わる事故を起こしてしまう可能性があります。

例えば、赤ちゃんに布団をかけたり、ぬいぐるみを顔の近くに置いたりしてしまうこともあれば、まだ赤ちゃんは食べることができないものを口の中に入れてしまうことも考えられます。

これらは、本人たちが良かれと思ってやっていることですが、赤ちゃんにとっては危険な場合もあるのです。

そもそも、赤ちゃんだけでなく未就学児の重大な事故は、交通事故や災害といったものではなく、圧倒的に家庭内で起こることが多いです。

ずっと事故のことを気にしていては精神的にも肉体的にも大変ですが、できるだけ赤ちゃんや子どもたちの動きから目を離さない、手を離さないようにすることだけは心がけてください。

<岡真裕美>

大阪大学大学院人間科学研究科特任研究員。子ども安全ネットかがわ副代表。

高校生男子と中学生女子の2児の母。

2012年、夫が川で溺れていた子どもたちを助けに入り、深みにはまり亡くなる。

この経験から、翌年大阪大学大学院人間科学研究科に入学し、社会の安全、事故予防について学ぶ。

現在、遺族としての経験と研究者としての知見から、子どもの事故予防について研究、子ども、保護者、地域への啓発活動を行っている

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