子どものケガや病気の時に自宅ですぐできる応急処置や、病院に行くべきかどうかの目安について、現役ドクターが解説するシリーズ企画「教えて!HOMEドクター 自宅でできる子どもの応急処置」。
第三回目は「子どもが吐いてしまった時」の家庭でできる対応法。
HOMEドクターのアドバイザー杉本啓一先生に伺いました!
いざという時に役立つ情報をご紹介します。
子どもはなぜ突然嘔吐するのか?
子どもは「吐きそう」なことが分からないことがある
子育てをしていると、必ずと言っていいほど経験する子どもの嘔吐。
突然のことでビックリすることもありますし、苦しそうな様子に心配になることもありますよね。
時々親御さんから「うちの子、さっきまで全然吐く気配もなかったのに急に吐いたんです」という話を聞くことがあります。
症状によって一概には言えませんが、考えられることのひとつとして、本人もまさか吐くとは思わなかったということがあるようです。
大人であれば、「ちょっと気持ち悪い」からはじまって「あ、もうだいぶやばい吐きそう」となってから吐くということを経験したことがあるので、その流れを理解していますし、それを周囲に伝えることもできます。
しかし、小さい子どもはその流れがよくわかっていません。
本人は「なにかおかしい」と感じていても、それが嘔吐の前兆だとわからなかったり、言葉が未発達な時はうまく伝えたりすることもできません。
また、それよりも楽しい別のことに夢中になってしまっている場合もありえます。
乳幼児であれば激しく泣き続けていて、突然吐くようなこともあると思いますが、実は泣いている時点で異変を感じていることがあるのです。
吐くこと自体は体を守るための「反射」のひとつなので、必ずしも吐いたら体調が悪いとも言い切れません。
親として、それがすぐに対応が必要な嘔吐なのかを判断するために、知っておきたいポイントを5つお伝えします。
ポイント1:嘔吐中枢が刺激されるから嘔吐が起きる
人が嘔吐するのは、脳の中にある「嘔吐中枢」が何らかの刺激を受けたことが原因となります。
これは大人も子どもも同じ。
そして、未発達なところが多い子どもの方が、嘔吐中枢が敏感に反応するので吐きやすいということです。
これからGWに長距離の移動をされる人も多いと思いますが、その時の「乗り物酔い」も、体のバランスが崩れたことから嘔吐中枢が刺激されて発生します。
頭を強くぶつけてしまったときに、脳の中で出血するなどの異常が起きたことが原因になることもあります。
そのほかにも嫌な匂いを嗅いだとき、食べすぎてしまったときなど、その背景は様々です。
頭を強くぶつけてしまったときは、例え吐いていなくてもその時点で病院にかかることをオススメします。
その時は大丈夫でも、しばらく経ってから症状が出ることも考えられるので、早めに検査してもらう方がいいでしょう。
乗り物酔いや食べすぎなどについては、原因がはっきりしていますし、深刻に考える必要はないと思います。
食べすぎに関して言えば、自分の限界をわかっていないことも、もはや仕方ないところ。
病気とはあまり関係ありませんが、やっぱりゆっくり食べるようにした方がいいんじゃないでしょうか。
ポイント2:吐いたものの色を忘れずにチェック
子どもが吐いた原因を探る手掛かりとなるのは、やはり「吐しゃ物」つまり子どもが吐いたものです。
特に大事なチェックポイントが色。
もしも緑色っぽい汁が入っている場合は、胆汁が混じっている可能性があります。
通常の嘔吐であれば胃からの逆流になりますが、胆汁が混じっているということは腸からの逆流の可能性が高いので、すぐに病院に行った方がいいでしょう。
ただし、食べすぎで嘔吐した時は、食べたものがそのまま出ることがあって、その色でビックリしてしまうこともあると思いますが。
それは単に未消化なだけだと考えられます。
ポイント3:血が入っていても少しなら心配ない
吐いたものの中に血が混じっていると、すごく危険な状態のように感じるかもしれません。
ただ、ごく少量であればそれほど危険な状態ではないことの方が多いのです。
特に体は吐こうとしているのに出すものがない場合など強く吐こうとしたときに、横隔膜の入り口などが傷ついて、そこから血が出ていることが考えられます。
もちろん、吐いたものが真っ赤になるほどの大量の血だった時は、よほどのことが体で起こっている可能性が考えられますので、それもすぐに病院にかかって方がいいと思います。
怖いのは感染症の時に吐いたもの
子どもの嘔吐で最も多い原因は?
子どもが吐く原因はいろいろありますが、もっとも多いのが、感染性胃腸炎などにかかっているケースです。
この場合、発熱や下痢を伴うケースが多いので、そばにいると子どもの吐きそうな気配に比較的気づきやすいと思います。
とはいえ、吐くとわかっていても注意することが多いのが感染症に起因した吐しゃ物です。
ポイント4:トイレでは吐かせない
先日、お伝えした感染症への対策法の記事の中で、下痢をした子どものオムツの処理や吐いたものの処理についてお伝えしました。
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基本的には、感染症の原因となるウイルスをまき散らす可能性があるので、オムツと同じく、密閉できるジップロックなどを使うか、スーパーのビニール袋であれば何重かにして使うこと。
また、吐しゃ物を入れた袋をできればベランダでもいいので部屋の外に出すことをオススメします。
大人が吐くときは、処理が楽なのでトイレに行くことが多いと思いますが、感染症の時はこれがちょっと注意しないといけないポイントです。
トイレで勢いよく吐くと皆さんの想像以上に飛び散ります。
特に便座を上げた状態なのでなおさらです。
床はもちろん、壁にまで飛んだり、飛び散ったものが知らず知らずのうちに服についたりするなんてこともあります。
大人が感染症にかかっている時もそうですが、トイレがウイルスの温床になってしまうことや、服についたまま部屋に持ってきてしまうことにもなるので、感染症にかかっている時に限ってはあまりトイレで吐くことはオススメしません。
ポイント5:繰り返し吐く場合は速やかに医療機関へ
どんな原因だとしても、一回吐いてスッキリしてスヤスヤ眠るようなケースであれば、それほど心配はないと思います。
ただし、またいつ吐くかわからないので、吐いたものでのどが詰まらないように顔は横向きにしましょう。
心配なのは、吐くことを何度も繰り返す場合です。
しかも短時間で繰り返すときはより注意が必要。
そんな時は救急車を呼ぶことも検討してください。
また、何度も吐くことで水分も失われるので水分補給は必須ですが、一度に大量の水分を摂ろうとするとそれが原因でまた吐いてしまうこともありますので、少しずつゆっくりと摂取するようにしてください。
まとめ:子どもが嘔吐した時、家庭でできる対処法5つ
ポイント
- 嘔吐するメカニズムを知っておこう
- 吐いたものの色を忘れずチェック
- 血が入っていても少しなら心配ない
- トイレでは吐かせない
- 繰り返し吐く場合は速やかに医療機関へ
いかがでしたか?
いざという時のために、ブックマークしておいてくださいね!
子どもは夜や休日など病院の開いていない時間に、突然体調を崩すことがよくあります。
こんな時こそ頼りになるのが「HOMEドクター」。
東京・神奈川近辺で夜間・休日の往診サービスを展開しているので、気になった方はHPをチェックしてみてください!
【杉本啓一】
平成9年昭和大学医学部卒業。
勤務医として活動した後、平成17年に独立。
独立後より在宅医療を開始し、小児~お年寄りまで診療。
現在は在宅医療の他に神奈川県横浜市に2院、東京都豊島区に1院の合計3院の医療法人社団あおい会の理事長も務める。
HOMEドクターのアドバイザーも務める。