日々進化するICT・IoTテクノロジーで子育てを支援する「BabyTech(ベビーテック)」。
以前、「パパしるべ」でもベビーテックのプロダクトやサービスを実際に体験できるイベント「BabyTech TOUCH」についてお伝えしました。
そんなベビーテック商品を表彰するコンテスト「BabyTech® Award Japan 2021」は、今年で3年目。
注目度が高まるこのアワードの見どころや、ここに至るまでの経緯を、日本のベビーテックの第一人者、株式会社パパスマイルの代表取締役、永田哲也さんに伺いました。
-
-
最新テクノロジーを体験できる『BabyTech TOUCH』を通じて二人のワーキングマザーが目指す“子育てのアップデート”
日々進化するICT・IoTテクノロジーで子育てを支援する「BabyTech(ベビーテック)」。 海外ではすでに幅広く知られていますが、このところ、日本でも注目度が高まっています。 そんなベビーテックの ...
出会いは「検索」
ベビーテックの発祥はアメリカ。
アメリカ・ラスベガスで開催される世界最大級の家電の見本市「CES」で2016年1月に初登場し、その後は専用エリアも設けられるほどになっています。
永田さんがそんなベビーテックの情報サイト「BabyTech.jp(ベビーテック.jp)」をオープンさせたのは2017年とかなり早い段階です。
いったいどのような経緯で、いち早くその情報と触れたのでしょうか?
永田「検索したら、あったんです(笑)」
もともとIT系の仕事で博物館などのデジタルコンテンツを作ってきた永田さんは、センサーや画像診断など様々な最先端技術と触れてきて、そろそろ育児の分野でも活かされていく頃じゃないかと思っていたそうです。
そして、「もしも名前つけるならこんな感じかな?」と想像し、「babytech」で検索。
すると、その年に行われたCESの記事にたどり着き、興味をひかれたそうです。
永田「2013年9月に長女が産まれて、朝ごはんやオムツ替え、お風呂に入れたり。
自分もできる限りのことはやってきました。
それでも二人でやって精一杯のことで、もしも夫婦のどちらかが倒れたら、これは回らない。
つまりは“育児のリソースが足りていない”ということを感じたんです。
これはどうにかして解決しないといけない。
もちろんパパの育児参画を促進することも一つの方法ですが、もっと他の方法はないかと考えた時にベビーテックを知り、何より自分がこれを育児に取り入れたい!と思ったので、いろいろな人の助けになるのではと考えたんです。
最初は、そんなベビーテックのことを自分たちももっと勉強しないといけないと思い、情報サイトをオープン。
その翌年2018年に行われたCESでベビーテックが日本でも取り上げられたことで名前自体は少し広がったのです。
しかし、なかなか普及には至らない。
その背景には“子育てはママがずっと付き添ってするもの”とか“育児をテクノロジーに任せていいのか?”という考えの根強さがあると思います。
そういう日本でベビーテックを広げるためには、安心して信頼して使えるものであることを、しっかりと示す必要があると考えました。
だからこそメディアなどでも紹介される表彰コンテストを行って、幅広く伝えるきっかけを作ろうと動き出したのです」
ヒントとなったのはベビーテック先進国であるアメリカでは当時すでにあったBabyTech Awards。
それを日本で開催しようと考えたのです。
そしてその実現は意外に早くたどり着きます。
2019年1月。
永田さんは初めてベビーテックの聖地ともいえる本場アメリカのCESの会場に赴きます。
目的は日本でのアワード開催を承認してもらうこと。
永田「特にこれといった繋がりはなかったので、もう現地に行くしかなかったんですよね。
熱意だけを持って、会場のベビーテックのエリアに行ったら、ちょうど担当者に会うことが出来たので、思い切って『日本でもやらせてください』と直談判。
そしたら『やればいいじゃないか!やらない理由なんてある?』ですって(笑)。
拍子抜けするくらいあっさりと開催が決まりました」
「学びと遊び」部門のエントリーが1.5倍!
「BabyTech® Award Japan」は2019年5月に記念すべき日本初開催を実現。
3年目となる今年は8つの部門に分かれています。
【BabyTech® Award Japan 2021の部門】
- 授乳と食事 部門
- 学びと遊び 部門
- 安全対策と見守り 部門
- 妊活と妊娠 部門
- 健康管理 部門
- 記念と記録 部門
- 保育ICT 部門
- 研究 部門
今年の見どころはどんなところでしょうか?
永田「ベビーテックの中で最近注目を多く集めている分野は『睡眠』と『知育』です。
睡眠に関してはもはや説明をするまでもないと思いますが、特に乳児期においては永遠のテーマといえるかもしれません。
睡眠にはSIDS(乳幼児突然死症候群)の心配と、寝付きに見通しが立たないこと、夜泣きなどの不確定要素といった睡眠の不安定さへの対応が注目されているところです。
赤ちゃんがちゃんと寝てくれることは、親の睡眠ストレスの軽減や負担を減らすことにダイレクトにつながりますし、それによってQOLも大きく変わります。
そしてもう一つ、特にコロナ禍に置いて注目が高まったと感じているのが『知育』。
子どもと家にいる時間が増える中で、どうしてもデジタルデバイスの利用が増える。
じゃあどうせ使うなら、少しでも子どもにいい効果が期待できるものを、と考える人は非常に多いし、開発側も増えます。
今年は『学びと遊び 部門』のエントリーが1.5倍以上になったことは象徴的な出来事ではないでしょうか?
そういう中で見どころを挙げるとすれば、まずは『オンラインを使ったもの』です。
知育につながるものはもちろんのこと、オンラインで体験や医療相談など可能性が広がっていますが、その中でどんなものが出てきて、何が受賞するのか?これは本当に楽しみです。
もう一つは、『多機能と一点突破』という方向性の二極化です。
一つのデバイスやサービスでいろいろなことが出来る、いろいろな問題が解決する、というのは本当に便利でニーズが高いところではありますが、一方で一つの機能に特化して精度を追求しているような専門性の高いものも増えてきていて、全体的にはその二極化が進んでいると感じます。
この辺りにも注目してもらえたら楽しいと思います。
また、今年から登場した二つの賞に注目です。
8つの部門は専門家が審査を行いますが、全国にある『アカチャンホンポ』の従業員が全員で投票する『アカチャンホンポ賞』は、育児をする人の一番近くにいる人たちの声を反映したものになるので、個人的にもとても興味があります。
もうひとつ様々なコミュニティをはじめユーザー投票で決める『ベビーテックコミュニティ賞』も創設。
こちらは実際に子育てをしている一般のパパママたちの声で決まるので、今後の開発にも影響が出てくるものだと感じています」
検索にはじまり、直談判で広がったベビーテックの世界。
その現状について永田さんはどう見ているのでしょうか?
永田「開発をする人たち、使う人たちというベビーテックに参加するプレーヤーが増えていることは、なにより素晴らしいと感じています。
技術の進歩もそうですが、開発する人が増えれば、様々なものが生み出されますし、全体的に精度も上がってきて、問題解決能力は上がっているように感じます。
一方で使う人が増えたことで、実際の使われ方もわかってきて、より必要なものに特化する流れもあります。
具体的な問題が明確になると、開発のアプローチもしやすくなるところもあるでしょう。
さらには子どもに関する研究も進み、新しいデータも次々と発表されていますので、今後はそういったデータを基にしたものも増えてくるのはとても楽しみです。
また、より多くの人に知ってもらうためにアワードだけでなく、12月1、2日に行われる『保育博』の中でもトークイベントを実施して、その魅力を伝えていくことが出来ればと思っています。
今年はゲスト審査員として参加してくれたダイアモンド✡ユカイさんが出演してくれるので、個人的にはそのお話も楽しみですし、そういうきっかけでベビーテックに触れる人が増えていってくれたらと思っています」
日々生まれる新しい技術は、様々な形で私たちの暮らしを支えてくれています。
ベビーテックは、その一つに子育てもあるということを実感できるものだと思います。
ほんの数年でも目まぐるしく進化していることを考えると、今の子どもたちが親になる頃には、いったいどのようになっているのか、未来の子育てが楽しみになります!
果たして、今年のアワードではどんなものが受賞するのでしょうか?ぜひ注目してください!