政府は2026年度から「私立高校の無償化における年収制限を撤廃する」方針を打ち出しました。
これが実現すれば、すべての世帯で私立高校の授業料が無償になる可能性があります。
ところが、教育費用の負担が減るはずの保護者たちの間でも「無償化」に反対する声は少なくありません。
「本当に必要?」「財源は?」「公平性は?」といった疑問も。
この記事では、私立高校無償化への保護者の本音、制度に対する賛否のリアルな声をアンケートの結果と共にご紹介します。
今後の教育政策をどう考えるか、一緒に見直してみませんか?
高校無償化に反対の人が感じていること
子育てにおいて、居住費に次いで大きな支出になることが見込まれる教育費。
できれば、支出を抑えられたらありがたいところです。
先日、政府は所得制限なしで公立・私立を問わず、高校の授業料を無償化する方針を発表しました。
多くの人にとっては支出が減るこの取り組みについて、お金を出す当事者のパパたちは実際にどのように感じているのでしょうか?
まずは率直に賛成か、反対かを聞いてみました。
高校の教育無償化に賛成?反対?
- 賛成:63.0%
- どちらかというと賛成:18.5%
- どちらかというと反対:7.4%
- 反対:11.1%
予想はしていましたが、やはり賛成側の声が圧倒し、8割を超えました。
そりゃかかるお金は少ない方がいいですよね。
コメントにはこんな声が届いています。
「高校教育無償化」賛成派の声
- 子育ての費用負担が減るのはいいことと思うから。(40代)
- 子どもの教育が国の経済力に通ずると思うから。教育の機会が経済的理由で受けられないのは良くない。(40代)
- 小中の義務教育で習得できる知識や技能では、情報リテラシーや環境意識など現代社会には足りない。(40代)
- 世帯収入による教育機会の格差は無くすべきと思う。習い事ならまだしも、学校教育は平等に与えられるべき。(30代)
- 人口減の対策になる(40代)
- リスキリングも含めて、教育費は無償化した方が良いと思っているため(40代)
- 高校進学率がほぼ100%なので、すべての子どもの養育の課程でかかるサービスと教育については税金などの公金でまかなうのに適当だと考えるから(30代)
最も多かったのはダイレクトに負担が減ることを理由に挙げる声。
また、高校の進学率が高い現状を踏まえた声や、教育の重要性についての意見が多かったです。
一方で、少数ではありますが反対派がいることも事実。その理由はなぜでしょうか?
「高校教育無償化」反対派の声
- 義務教育じゃないから。そもそも義務教育だけで社会に出ても生活出来る社会にするか、高校を義務教育にすればいい。(30代)
- 無償化といえば聞こえはいいが、ただ国民の税負担を増やすだけのため。子育て世帯や子ども自身が払う税金を増やす政策は反対。(20代以下)
- 「無償化」と言うと聞こえが良いが、実際の所は税金で賄う事になるため。税金を投入するのであれば、高校無償化よりもやらねばならない事が多々ある。(50代)
こちらは、「義務教育まででよい」という意見と、それに税金が使われることで、負担が増える面もあることへの懸念の声が多かったです。
私立高校まで無償化が必要かと言われたら...
全体的には賛成が多い結果ですが、ちょっと質問を変えるとその状況は変わるようです。
続いて聞いたのは、私立高校も無償化されることについて賛成か、反対か。
私立高校まで無償化される必要はあり?無し?
- 無償化の必要はある:40.0%
- どちらともいえない:12.0%
- 無償化の必要はない:48.0%
「無償化の必要はない」が「無料化の必要はある」よりも多く、マジョリティが逆転する結果になりました。
私立の方がお金が沢山掛かるので当然賛成する人が多いのかと思いきや、リアルはそうでもないとはちょっと驚きました。
もう少し詳しく聞いていきましょう。
まずは賛成派の声から。
「私立高校教育無償化」賛成派の声
- そのほうが貧困家庭の子どもの選択肢が広がるから(40代)
- 日本の所得水準に対して私立の学費は高すぎる(40代)
- 公立、私立で違いがあることが本来よくないと考えます。全ての高校が切磋琢磨し、多様な進路が選択できる社会が望まれます。長期的には無償化かつ全て公立化、全て私学化でもよいと考えます。(40代)
- 公立受験校が1つしか選べないから。経済的な面で希望の公立高校を受験できないのは子どものチャレンジ精神を削ぐ。(40代)
- 公立と私立で格差ができる、という課題もあるかとは思いますが、基本的には賛成です。(40代)
- 前提として、低所得や家庭事情によって就学できない子どもの救済という意味では、入学できる学校に制限を設けるべきではないと思うため。(30代)
多くは貧困家庭への配慮と選択肢が狭まらないようにという思いからのようです。
では、気になる「私立高校反対派」の意見は?
「私立高校教育無償化」反対派の声
- 授業料の補助はあってよいが、対象を日本人向けの標準的な内容を学習している学校で、日本人に限定すべき(30代)
- 経済的余裕があるなら行けばよいと思うため(40代)
- 私立は設備も自分たちでお金を払って行ける人たちが行くところなので。(30代)
- 公立高校を選ぶ人が減り、予算がどんどん必要になってきそうなため。もし公立高校がいやで私立高校しか選べない人が多いというのであれば、まずは公立高校を魅力的にする努力が先だと思う。(30代)
- 金額的な公平性を考えると無償までなくて、公立高校と同額の支給があるとありがたい(20代以下)
- 金銭的に余裕がある人が私立を選ぶというイメージ。私立を無償化する資金を確保するくらいなら、それを公立に回して私立のレベルに近づけていってほしい。(30代)
- その分の予算を公立校に力のある教師を確保したり、教員数自体を増やしたりするのに使うべき(40代)
- 国公立の教育を伸ばすことが第一。あくまでビジネスである私立に税金を投入する余裕はないと考える。また、私立に入る外国人に日本の税金を使うことが目的に見える。(20代以下)
- 私立を選択するのは家庭の自由。独自の校風や教育方針を目的に私立を選択する事が多い中で、税金投入がその独自性を削ぐ事に繋がりかねない。(50代)
「公立校の充実が優先」と「私立はビジネスなので」という理由が多数でした。
確かにあくまで公教育があってこそ私立、という考えも共感できるところはあるかもしれません。
自分たちの負担が減るのは助かるところですが、視野を広げて教育全体を見たときにどう感じるのか?その視点も大切ですね。
大学まで無償化されるのはあり?無し?
「高校無償化はありがたいけど私立までは必要ない」という意見が多い中で、こんな質問もしてみました。
大学も無償化されたらいいと思いますか?
- 思う:25.9%
- どちらかというと思う:33.3%
- どちらかというと思わない:11.1%
- 思わない:29.6%
私立高校の無償化では、望まない声の方が多かったにも関わらず、大学の無償化については望む声の方が多いという、これまたちょっと意外な結果になりました。
その裏にはどんな思いがあるのでしょうか?
「大学の無償化」良いと思う
- 頭のいい人が増えた方が良い(40代)
- 学びたくても学べない層をフォローする仕組みは必要。(30代)
- 人間の働く期間より事業の寿命のほうが短いため、リスキリングは重要(40代)
どちらかというと良いと思う
- 一番教育費のかかるところだから個人的には賛成だが、社会全体で見ると愚策な気もしている(40代)
- 社会生活に活かすための教育であれば年齢を問わず無償化、又は少ない負担で学べるとよい。しかし、遊ぶためなどの場合は負担があってよいと考えます。(40代)
- 無償化してほしいが、大学や教育、研究の質の低下を招きそう。(40代)
- 教育は無償にする、子どもに対する未来への投資だと思います。(40代)
- 無償化とは言わないが、例えば返済不要の学費補助などはもっと増えても良いと思う。採用時に学歴を見ない企業は増えてきたが、やはり高卒と大卒だと印象に差が出るのは事実。(30代)
どちらかというと良いと思わない
- 大学には多様な背景の学生がいるため対象の絞り込みが難しい。大学への補助金などを増やして、教育や研究を推進する方がよいと考える(30代)
- 富の再分配が必要。ただし、大学制度を作り直す必要もある。行かずとも就職できる世の中になれば(給与面の差が顕著)行く必要もない。(40代)
- 義務教育ではないから。(30代)
良いと思わない
- 本当に学びたいのであれば対価を支払うべきだと思います。(40代)
- 勉強したいものがない人は大学行くより働いた方がいい。(30代)
- ただでさえ不要な大学が多い上、研究費も削られ続けている。無償化の名のもとに税金の無駄遣いをすることは許せない。(20代以下)
- 高等教育は本当にそれを必要としている者が受ければ良く、無償化によって「とりあえず大学行っとくか」と言う様なモラトリアムを生み出す政策を支持できない。(50代)
- 全国民が大学に行く必要が無いから。(40代)
確かに一番お金がかかるので、無償化されるのとされないのでは大きな違いがあります。
ただ、やはり財源が税金であることへの抵抗や、そもそも大学に行かないといけないわけではないという前提からの苦言が多いようです。
また、大学となると子どもたちだけでなく、大人になってから通うケースも含めた考えもあるというのは、盲点でした。
子育て世帯が教育無償化に手放しで喜んでいる訳ではない
最後に、教育無償化に期待することや懸念など率直な思いを聞きましたが、その多くは懸念でした。一部抜粋して紹介します。
- 家庭環境に左右されず学びたいことを学べる環境が人生の充実と結果的に経済成長に繋がることに期待。無料だからと時間を無駄に過ごすことには懸念を感じます。(40代)
- 金銭面で埋没する才能を吸い上げることはできると思いますが、いっそのこと上履き、制服、革靴、教科書などの利権も見直し、それらを購入する費用も無償化すべき。(40代)
- 公立に行くメリットが少なくなり、設備の充実した私立に行こうとする流れが地方で生まれることが懸念されます。(30代)
- 今後の日本を支える若い人材育成に国として可能な限り投資をして欲しい(20代以下)
- 子どもを産まない理由に経済不安を挙げる人も多いが、教育費負担を減らしても他の理由を探して産まない人は産まないと思う。つまり少子化対策につながるとは思っていない。(40代)
- 財源を適切に活用できるかが不安。国(役人)だけではなく、当事者たち(親と子)への聴き取りも十分に行った上で運用してほしい。(30代)
- 私立と公立の格差ができる、無償化への財源は、今は他の施策に優先すべきなどのご意見は承知しています。ただ、大きな流れとして教育が無償になるということは良い。良い方向への動きなので、賛成です。課題は1つずつ対応方法を検討すれば良いと思います。(40代)
- 上っ面の改革をしようとするからどんどん変な方向に進んでいると思う。無償化するなら義務教育化すればいい。若しくは中卒でも支障ない生活出来る社会にするとか。何のための義務教育とそれ以外なのかから整理すべきだと思う。(30代)
- 無償化ではなく税金・公金化と表現すべき。また、対象が教育費全額ではなく授業料相当であることも正しく表記すべき。税金負担になることで質の低下や、不当な値上げがないようにしなければならないが、それを監視するために国などに委員会などを設けるならその運営や管理もコストになる。いずれにしても、実際の生徒や保護者の不利益にならないようには確実にしてほしい。(30代)
- 無償化は取りやめてほしい。せめて国公立大学の研究費や教員の給料に税金を使ってほしい。どうしても国の学力を下げたい、衰退させたいと見える。(20代以下)
- 無償化を折り込んで私立高校がさらに値上げし、結局個人の負担は軽くならない懸念。公立高校が私立に遜色ない教育を提供するようになる可能性には期待しています。(40代)
値上がりの流れもあり厳しい家計状況の家庭も多い今、子育て世帯にとって教育費は頭が痛い問題です。
もしかしたら、それを無償化することで、多くの人が喜んでくれるだろうという考えから進んでいる取り組みかもしれません。
しかし実際は、当事者であってもこのように懸念点が噴出している現状であることは、ぜひ制度を考えている人たちにも届いてほしいと思います。
今回もご協力いただきありがとうございました。
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