夫婦の良好なコミュニケーションは誰もが求めるものですが、なかなかうまくいかないという人も多いと思います。
今回は、常日頃から威圧的な態度で接してくる妻に困っている夫からの相談。
なぜそんなに威圧的なのか?
実はその威圧的な態度の裏には、“弱さ”や“劣等感”が隠れているかもしれません。
今回はアドラー心理学の視点から、妻が威圧的になる背景や心理、夫としてどう向き合うべきかを丁寧に解説します。
もしかしたら、その関係をつくっている原因は自分自身にもあるかもしれません。
関係改善のヒントを一緒に探していきましょう。
威圧的な妻と受け入れる夫、どちらも弱さがある
結婚して10年。二人の子どもを育てていますが、ずっと妻の態度が気になっています。
自分に対しても子どもたちに対しても常に強い口調と態度で接してきて威圧的なんです。
これはもう妻の性格なので仕方ないのでしょうか?
世の中にはやけに威圧的な人がいます。
それは妻に限らず、夫の場合もあるでしょう。
確かに性格なものもあるかもしれませんが、そうではない可能性もあるように感じます。
その背景にあるものを探っていきましょう。
「弱い」からこそ「強く」見せる
アドラー心理学の創始者、アルフレッド・アドラーは「劣等感」という言葉を広めたことでも知られています。
「自分の理想」と比べて何か劣っていると感じたら、それを成長のモチベーションにすることが建設的。
しかし一般的には、「優れている他者」と比べて劣っていると感じることと認識されることが多いと思います。
人が威圧的になる可能性のひとつに、この他者と比べた「劣等感」があると考えられます。
自分の弱さを隠し優越感を誇示する方法として威圧的になるというのです。
というのも、自分に自信を持っているのであれば、わざわざ威圧的にならなくてもちゃんと伝えることができるはず。
自分はできない、劣っていると感じている「弱さを隠すため」の方法だと考えられるのです。
つまり、ありのままの自分を認めることが出来ず、適切な方法にチャレンジすることを恐れている「勇気がくじかれた状態」であると考えられます。
言い返すより「弱い」方がラク
一方で、威圧的な態度を取られがちな人もいますよね。
もしかしたら質問をくれた方もそうかもしれません。
こういった人たちは、「嫌だけど、とりあえず言うことを聞いてしまう」という傾向があるケースが多いように感じます。
その背景にあるのは、やはり「勇気がくじかれた状態」と自分の意見はダメだという「劣等感」だと思います。
もしかしたら過去には嫌だと言い返した経験があるかもしれませんが、それを威圧的な態度で理不尽に跳ね返されたり、論破されてしまったり、意見を無視されたりして「言い返しても無駄」と感じているのかもしれません。
そして、結局のところ、その状況に慣れてしまって「言うことを聞いておいた方がラク」と感じている可能性があります。
言うなれば、質問にあった夫婦は、強めに言えば意見が通ることに慣れた妻と、言われたことだけやっておけばいいと思っている夫という「上下関係」にある夫婦。
本当にこれでいいのでしょうか?
互いに勇気がくじかれた不適切な関わり
よくこういった夫婦に対しては威圧的な態度をとる側が責められることが多いと思いますが、こうして客観的に見ると、双方に問題があるように感じます。
そしてそれぞれが「勇気がくじかれた状態」であることから、適切なコミュニケーションをとる勇気がなく、慣れ親しんでしまった不適切な関わり方になっています。
本来、夫婦は互いに言いたいことを言い合える「対等な関係」であることが望ましいのは言うまでもありません。
実際に質問によると、おそらくあなたたち夫婦の関係が親子の関係にも影響して、妻は子どもたちに対して威圧的で、子どもたちはあなたのように言うことを聞けばいい状態になっているように感じます。
これはもう性格として割り切るわけにはいかないと思います。
まずは自分から妻に「共感」してみる
二人に欠けている「協力」する意識
アドラーはこんな言葉を残しています。
アドラー心理学のポイント
人の弱さが社会をつくり、社会の協力がその弱さを支える
この言葉は、他者と協力し合う意識が劣等感を克服するカギになることを示しています。
家族全体の利益を考えた時に、この上下関係であることは決していいことではありません。
なので、その状況を脱するためには協力し合って関係改善を目指す必要だということです。
だからといって、妻に対して「威圧的な態度はやめろ」と言ったところで、それはあなたの一方的な言い分。
逆に「あなたがこういう態度を取らせているのよ!」と火に油を注いでしまいます。
ただ、妻の言い分にはもっともなところがあって、要するに「あなたが強く言わなくてもわかってくれるのであれば威圧的な態度はとらない」という言葉の裏返しだったりするのです。
コミュニケーションは「わかってほしい」のせめぎ合いです。
自分が伝えたいことを伝えるために、まずは妻の「わかってほしいこと」は何かにフォーカスしてみてはどうでしょう?
同意はしなくてもいい
妻の「わかってほしいこと」を知る方法として「共感」があります。
相手の目で見て、相手の耳で聴いて、相手の心で感じる。
「自分だったら」という考えはいったん置いておいて、妻に憑依してみましょう。
すぐには難しいかもしれませんが、とにかく妻目線に立つことできっと段々とその「わかってほしいこと」や妻が「困っていること」が見えてくるはずです。
もちろん、それに同意する必要はありません。
それまでのように、言われたことに対して納得していないのにのってしまっては、関係性は変わりません。
しっかりと相手の意見を聞いた上で、自分の考えを適切に伝えてみましょう。
自分の考えを伝えることは勇気がいることかもしれません。
ただ、対等な関係を築いていくためには主体的な言動や行動は欠かせません。
この時に一方的に自分の考えを伝える意識ではなく、家族全体の利益のために協力する姿勢で臨みましょう。
自分だけ折れるような形は嫌だと感じることもあると思いますが、意地を張っていては前には進めません。
まずは妻に共感し、適切な伝え方でも伝わる経験をしてもらうことで威圧的な態度が収まり、そうなれば言いたいことも伝えられるようになると思います。
実践することですぐ劇的に改善するものではないかもしれませんが、スモールステップを積み重ねていくことできっと変わっていくはずです。
長い目で家族の未来を見据えてぜひチャレンジしてみてください!
熊野さん、ありがとうございました!
改めておさらいすると…
ポイント
- 上下関係になってしまっている背景には互いの「弱さ」がある
- 互いに協力できる関係を作るためには、まず「共感」からはじめる
- 適切な方法で伝わる経験が、対等な関係に繋がる
夫婦だけでなく仕事の現場でも威圧的な人はいますが、きっと根本は同じなんだと思います。
家の中でも、外でも威圧的な人がいたらまずは「共感」!
なかなかすぐにできないかもしれませんが、一緒にチャレンジしていきましょう!
著書のご紹介
また、熊野さんのアドラー式コミュニケーションの講座では、家庭はもちろん仕事でも使えるコミュニケーションのコツを学ぶことができます。
「子育てが思い通りにいかない」「仲良くしたいのに夫婦関係がギクシャクしてしまう」「職場の人間関係がうまくいかない」など、悩みを抱える方は自分で解決できるためのコミュニケーション術を学びます。
こちらも気になった方はぜひチェックしてみてください!
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