都市部を中心に、運営が難しくなってきているという「町内会などの地域コミュニティ」。
今回は子どもが産まれたことをきっかけに、地元の町内会の運営側に入ったパパからのご相談です。
古くからのしきたりが多く、高齢者の先輩たちにも新しい提案を受け入れてもらえず、コミュニケーションに苦労しているパパ。
アドラー式子育ての熊野英一さんから、お互いに歩み寄るためのアドバイスを聞きました。
先輩たちとうまく調和するために大切なことは、どんなことなんでしょうか?
まずは町内会での自分の立ち位置を見直そう
会議などにも出ているのですが、子どもたちが喜ぶような行事がほとんどないので、いろいろなことを提案しているのですが、先輩たちは全然聞く耳を持ってくれません。
こういう人たちとうまくやっていこうということ自体が無理ゲーなんでしょうか??
地域でのつながりが強かった時代は、重要な位置にあった地域コミュニティですが、都市部を中心に入会しない人が増えるなど、運営に困っているところも多いと聞きます。
そんな中で、まず入ろうとしたことは素晴らしいことだと思います。
簡単なことではないと思いますが、無理ゲーと決めつけずに方法を探っていきましょう。
視点が違うだけでどちらも正しい
地域の行事がなんだか高齢者たちだけが楽しいイベントばかりになっている、という声はよく聞きます。
ですが、高齢な先輩たちが集まって考えたことであれば、そうなることも理解できるところです。
若い世代から見たら、その状況はどうかと感じると思いますし、もっと子どもたちのための行事をやってほしいという気持ちもまたよくわかります。
地域コミュニティの目的を改めて考えると、地域で暮らすあらゆる世代の人たちのためになることをしなければいけません。
“あらゆる世代”、つまりそれは“子どもたちのため”のものでもなければ、“先輩たちのため”のものでもない。
反対に考えると、“子どもたちのため”のものも“先輩たちのため”のものも、両方あっていいということです。
だとすれば、視点が違うだけでどっちも正しいのです。
「正義の反対は別の正義」と言いう言葉もありますが、だからこそ「どっちが正しい」と論破、説得をすること自体がナンセンスだと思います。
要は高齢者たちが楽しむことだって地域には必要。
それのどこが悪いというのでしょうか?
ただ、問題はそれだけになってしまうのはどうかということだと思います。
聞いてもらえる関係性を作る
とはいえ、それを伝えることが難しいと感じているのではないかと思います。
年を重ねると頭が固くなって聞き入れることができない、という言い方をする人もいますが、それまで長年にわたって地域のことを考えてきて、いい形を作ってきたという成功体験と自負があるとも考えられます。
そこに後から入ってきた自分よりも経験の浅い若者が、「もっとこうした方がいい」と言ったら、なかなか受け入れにくいもの。
例えば、あなたの会社によく知らない高校生が来て「これじゃダメですよ」と言われたら、どうでしょうか?
質問を見る限り、あなたは他の地域から引っ越してきたか、もしくは住んではいたけど地域活動には参加してこなかったと思います。
変えたい気持ちはわかりますが、まずは、先輩たちが何を考えてきたか、どんな苦労をしてきたかを知る必要はあると思います。
アイデアを伝えるためには、まずは聞いてもらう関係性をつくることが大切ではないでしょうか?
町内会の先輩と折り合うために大切なこととは
先輩にも共感ファースト!
パパしるべの記事でも幾度となく伝えていますが、アドラー心理学では「共感」こそがコミュニケーションで最も大切だと考えます。
それは妻や子どもにも大切なことですが、地域の先輩に対しても同じです。
「共感」とは「相手の目で見て、相手の耳で聞いて、相手の心で感じること」。
つまり自分の価値観をいったん置いておいて、相手に憑依するような感覚になることです。
そうすると、あなたの価値観をもって相手の言っていることを正しい、間違っているとジャッジすることはなくなります。
先ほども言ったように自負があり、経験があり、なかなか考えを変えるのが難しい相手の声を聴き続けるのはなかなか大変なことではあると思います。
しかし、それをすることはあなたにとって“聴く力を育む修行”くらいに思って、とにかく最後まで聴き続けてみてください。
話を真摯に聴くことは相手にとって、敵じゃないことを示すことができます。
本来はみんなが楽しく暮らせる地域をつくっていくというゴールは同じはずなので、敵じゃないことが伝わり、また同じゴールに向かっていると感じてもらうことができれば、そこではじめて話を聞いてくれるかもしれません。
雑談も積極的にしてみる
忙しい中では効率を上げることが大切だと、仕事では考えられます。
きっと仕事に家庭に忙しい中で時間を作って地域の会議に出ている人からすると、もっと効率的に決めるべきことを決めたいと考えると思います。
もちろんそれも大切ですが、地域でしていることは「行事」だけではありません。
また、そもそも人の生活は誰もが地域のことだけではないし、仕事だけでも、家庭だけでもありません。
それぞれの人の趣味もあれば、地域と関係ない友達だってたくさんいますよね。
ただ、何かでぶつかっているときは、そのぶつかっている内容だけしか見られなくなっている場合も多いと思います。
あなた自身は先輩に対して「行事の提案を受け止めてくれない頭の固い人だ」と感じているかもしれませんし、先輩は「いきなり無茶な提案をしてきて失礼なヤツだ」と感じているかもしれませんが、それはあくまでそれぞれの一つの側面だけを見て感じていることですよね。
もしかしたらその先輩も仕事では後輩の意見をたくさん取り入れる人かもしれないし、あなただって家庭では慎重に話をするタイプかもしれません。
先輩の視野が狭くなっているように感じるかもしれませんが、まずはあなた自身ももう少し視野を広げてみてはどうでしょうか?
簡単に言えば、今議題に挙がっている「地域の行事」以外の話をしてみたらどうかと思います。
いわゆる雑談、世間話です。
実は同じサッカーチームが好き、実は同じお店によく通っている、実は妻同士が同じ美容院など、意外なつながりや共通点が見つかることもあるかもしれません。
一人の人間を多角的に見ることで、意見が合わない側面もあれば、共通している側面もあることを知り、互いの意見に対しても聞く耳を持てるようになるのではないでしょうか?
話し合えるようになれば、先輩が主張する「A」という提案と、あなたが主張する「B」という提案があったときにどちらかを選ぶのではなく折衷案である「C」という形に落とし込むことだってできるかもしれませんよね。
本来選択肢は無限にあるはずなので、新たなものに落ち着いてもいいじゃないですか。
そんなことをするのは面倒くさい、そう思うかもしれませんが、今のままでいるのが嫌なのであれば、面倒とは思いつつも少しずつ歩み寄ってみたらいいと思います。
とはいえ、先輩たちはなかなか強敵であることがほとんどだと思います。
じっくりと焦らずに動いてみてください!健闘を祈ります!
熊野さん、ありがとうございました!
改めておさらいすると…
ポイント
- 互いの主張は互いの視点が違うだけで、どっちも間違っていない
- 先輩にも共感ファースト!まずは相手の話を最後まで聞いてみる
- 議題になっている話だけではない雑談でお互いに多角的に見てみる
- 話せるようになったら「A」か「B」かにこだわらず新たな「C」も考えてみる
町内会だけでなくPTAなども、ネットなどを見ていると良くない評判を目にすることがあります。
それを真に受けて「きっと良くない」と決めつけるのはちょっともったいないと思います。
まずは自分で体験して判断してみることも大切ですよね。
また、熊野さんのアドラー式コミュニケーションの講座では、家庭はもちろん仕事でも使えるコミュニケーションのコツを学ぶことができます。
「子育てが思い通りにいかない」「仲良くしたいのに夫婦関係がギクシャクしてしまう」「職場の人間関係がうまくいかない」など、悩みを抱える方は自分で解決できるためのコミュニケーション術を学びます。
こちらも気になった方はぜひチェックしてみてください!
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