新型コロナの影響などもあり、全国で減少傾向にある両親学級などの妊娠期の夫婦に向けた講習。
パパしるべではこの状況をなんとか打破するために、特にパパに向けて産前産後の知識や心構えを伝える取り組みをスタートさせます。
今回は始めるにあたった経緯などを、編集長からお伝えします。
つまずく経験をする前こそスイッチが入りやすい
子どもが産まれる前の男性に「パパ」と呼んでも振り向かない
パパしるべ編集長のジョージこと杉山錠士です!
子育て業界に関わって15年くらい。
おかげさまで、その間にいろいろなところで「パパの子育て」について話す機会をいただきました。
中でも、特に印象に残っているのが、4年ほど担当させていただいた東京都大田区が主催する両親学級の講師です。
地域によっては「パパママ学級」など呼び方は様々のようですが、要は妊娠後期の女性とそのパートナーを対象に、産前産後の知識や心構え、僕が経験した子育ての実態などを伝える講座です。
僕が知る限り、男性の講師が産前産後の話をするのはとても珍しいとのこと。
これはきっと今もあまり変わっていないことでしょう。
ホルモンの話や体調の話など、妊婦の話が中心になるので仕方ないのかもしれません。
だからこそ、男性からはどう見えるか?どう感じるか?というリアルな体験を踏まえて、できるだけ男性にわかりやすく伝えることを意識していました。
そうすると、120分の講義が終わる頃に男性たちの雰囲気が変わるのです。
もちろん全員とは言いませんが、おそらく半分以上の男性が変わった実感がありました。
講義は夫婦横並びではなく、男女に前後分かれて座るスタイル。
スタートするときに「今日はパパたちが前の席でママは後ろの席です」と座り位置を指示すると、反応が男女で違います。
女性はスッと後ろの席へ移動していくのですが、男性はパートナーについていってしまう人が多いのです。
なぜか?言い方を変えてみました。
「今日は男性が前の席で、女性は後ろの席です」そうすると、すんなり移動してくれます。
子どもが産まれる前の男性に「パパ」と呼んでも、ピンと来ないようです。
街中で「そこのイケメン!」と誰かが言ったときに振り向くのは、自分がイケメンだと思っている人だけのはず。
つまりその時点では「自分がパパ」という自覚がないのです。
はっきりと覚えていませんが、きっと自分自身もそうだったと思います。
それが終わる頃には「ここはパパたちも覚えておいてください」というと、しっかりとこっちを見ている。
そういう変化があるんです。
男性がパパを自覚した、スイッチが入った瞬間に立ち会わせてもらった、という感覚。
これは本当に大事なことだと思っていました。
そしてこれは産まれる前だからこそのことだと感じます。
右も左もわからず産後につまずいて傷つき、苦しい時間を過ごした後に立ち直るのは簡単ではありません。
ましてや、夫婦の関係にまで影響していたら、より修復は大変です。
2022年10月によみがえったその感覚
時を経て、去年10月。
新型コロナの影響で両親学級のような妊娠期に学ぶ機会が減っている中、妊婦さんやそのパートナーに向けたイベント「妊フェス」が神奈川県川崎市で行われました。
そこで、主催した助産師の大久保美保さんにこうお声がけをいただきました。
「男性たちに産前産後の心構えを、同じ男性目線で伝えてほしいんです」
かねてから、産前産後の男性たちの状況に課題を感じていた大久保さんからのオーダーはこうでした。
そこでふと両親学級をやっていたころを思い出し、当時の資料を引っ張り出して準備をしました。
イベント当日、各回5名程度と少人数でしたが、それを4回実施。
休憩時間もほぼない状態で実施しましたが、同じようにほとんどの男性が変わっていく姿を見ることができました。
「子どもが産まれる前に知れてよかった。子育てが楽しみになりました」
ある参加者にかけられたうれしい言葉。
これはもっと多くの人に伝えないといけない!そう思うようになりました。
産婦人科は、男性を父親にすることには無頓着
ちょうど同じころ、以前から取材したことがあるファザーリング・ジャパン多摩の中西さんが男性の子育てを支援する一般社団法人Daddy Support協会の設立に関わるということで、代表理事の平野翔大さんに話を聞く機会がありました。
平野さんは産婦人科医としての経験の中で男性の育児に関して課題感を持っていて、様々なサポートをしていこうとしています。
印象的だったのは「産婦人科医は女性を母親にすることにかけてはスペシャリストですが、男性を父親にすることにはかなり無頓着だと思います」という言葉。
妊娠から出産に至るまでの間では、無事に出産を終えることが最重要課題です。
産婦人科医という領域で考えれば、女性に目が向くことも当然と言えば当然なのですが、そこから子育てをしていくためには男性に対しても目を向けていかなくてはいけないということでした。
まさに!と共感するとともに、なるほど、医療の現場でもそう感じている人がいるのだという勇気になり、いよいよ行動に移すことに繋がりました。
全国の産婦人科の皆さん!一緒にやりましょう!
パパしるべだからできる“パパ目線”とは
改めて、パパしるべだからできるパパ目線の両親学級とはどういうものなのか?考えてみました。
1.子育て経験、両親学級の講師経験のある男性講師が担当
先ほども書いたように女性に関する内容が中心なので、男性講師が少ない現状があります。
そんな中で、両親学級の講師そのものを経験したことがあり、また自身も子育て意見がある講師が担当するものはかなり希少なケースだと思います。
産後うつ、産後クライシス、女性のホルモンバランスなど両親学級では定番の内容について、情報やデータは女性講師と同じものになると思いますが、「男性はその状況をどうとらえたらいいか?どう対応したらいいか?」という部分を伝えられるのは男性ならではだと思います。
2.研究データや理論など、エビデンスベースで男性に伝わりやすい
必ずしもそうではないと思いますが、仕事などをしている中では理論やデータを使うことが多いので、やっぱり男性は理解や納得がしやすいと思います。
もちろん女性でもそういう人はたくさんいると思います。
また内容については、現役産婦人科医や助産師などのスペシャリストに監修していただきます。
3.先輩パパが子どもの産まれる前に知りたかった内容
以前、パパしるべ総研で「両親学級で教えてほしかったこと」についてアンケートを実施しました。
-
-
両親学級に参加するメリットは!?父親に聞いた感想と教えて欲しかったこと
子育てを始める前に知りたかったことってたくさんありませんか? 地域の保健センターや産院などでプレパパプレママ向けに開催される両親学級もありますが、そこではどんなことを学ぶのでしょう? 子育て中の父親た ...
その中で挙がった項目、「妻の体調や精神的な変化」「産前にパパがした方がいいこと」などについてもしっかりとフォローしていきます。
妊婦さんに優しい自宅参加可能なオンライン
以前、両親学級をやっていた時にも感じていたのですが、特に妊娠後期の女性が会場に来るだけでかなり大変です。
ましてや感染症のリスクも考えると、デリケートな時期に大勢の人が集まる場所に行くのを控えたいという方もいると思います。
もちろん、我々は男性に向けた講座を作っていますが、パートナーの妊婦さんを置いて出てきてもらうのも気が引けます。そこで、一般的にも広がったオンラインでの講座をすることにしました。
また、僕が伝えたいと思っている「パートナーが妊娠している時に近くにいる時の男性がどんなことを感じているか?」ということは、妊婦さん自身が知るチャンスはほとんどありません。
だからこそ、できれば一緒に聞いてほしい内容なんです。
そういう意味で「父親学級」ではなく「両親学級」としています。
出産を控えた夫婦が自宅でリラックスした状態で参加できる。
これはとても大きなメリットだと感じています。
一方で、開催する側にとってもメリットはあります。
両親学級などは自治体や産院などで行われることが多いですが、対面で行う場合「実施場所の確保」「スタッフの確保」「予約管理」など手間がかかることもたくさんあります。
オンラインであれば、場所やスタッフの確保は必要なく、予約管理も実施するこちら側で行うことができます。
無料受講を実現するために産婦人科とタッグ
一時金などが出るとはいえ、出産はお金がかかります。
だからこそ、妊婦夫婦が無料で参加できる環境を整えたいと思っています。
そのために産婦人科や助産院などの医療機関に月額で登録してもらい、その医療機関にかかっている妊婦夫婦は無料で参加できるというシステムでいきたいと思っています。
受講する側にとって無料で参加できることはありがたいですが、医療機関にもメリットはあります。
まず、パパしるべのサイト内に登録してくれた医療機関を掲載し発信することで、「男性が子育てに関わることに前向きに取り組む産婦人科」といったブランディングやPRにも寄与できればと思います。
出生数が減る一方で、育児に前向きな男性は増えている中で、これから「選ばれる産婦人科」になることは大切な視点だと感じています。
また、子育てスタートの時点でしっかりと認識を合わせて協力体制を整えることで、出産後のトラブルの中には回避できるものもあるでしょう。
さらに、男性の家事育児時間が長いほど第二子以降の出産が多いというデータもあるので、少子化対策にも貢献できる可能性が大いにあります。
一緒に実施してくれる医療機関を探しています!
現状、両親学級で伝えることなどの資料を作ったり、様々な環境を整えている段階ですが、出産は待ってくれません。
こうしている間にも赤ちゃんが生まれている中で、一刻も早くサービスをスタートさせたいと思っています。
そのためには!ともにこの取り組みを進めてくれる産婦人科、助産院など医療機関を見つけなければいけません。
出産を行っていなくて、妊婦健診だけをしているところも含めて、妊婦さんが関わる医療機関であれば規模を問わず、ご一緒出来ればと思っています。
興味を持ってくれた医療機関の皆さんは、コチラの仮登録フォームに詳細がありますので、ぜひアクセスしてみてください!
どんな両親学級になるのか、イメージが付きやすいように10分程度のサンプル動画もあります。
また、興味を持ってくれそうな医療機関とつながっている方や、こういった取り組みを応援してくれるという方は、ぜひこの記事のシェアをお願いします!
一人でも多くの男性が子育てのスタートを上手にきれるように。
そして、それによって妻も子どももハッピーになることを願って進めていきますので、ぜひ今後にご期待ください!
現在、父親支援のクラウドファンディングを実施中!こちらもぜひチェックしてみてください!