子育て方針が合わない夫婦。対立ではなく歩み寄るために必要なこと

夫婦とはいえ、価値観の違いで子育て方針に食い違いが生じることはよくあります。

そんな時、対立するのではなく、どうやって意見をすり合わせていったらいいのでしょうか?

今回は、コミュニケーションの専門家でアドラー式子育ての熊野英一さんに、夫婦で話し合うときに必要な心構えなどのアドバイスをいただきました。

夫婦の食い違いはそれぞれの「メガネ」が原因

質問者
来年小学校に上がる息子がいます。

本人はとても活発で、公園に行った時もいろいろなことに挑戦したがるのですが、心配性の妻は「危ない」と常に止めています。

私としてはもっとのびのびやってみて経験を積んだ方がいいと思うのですが、この考え方の違いを埋めるにはどうしたらいいのでしょうか?

男女を問わず、どちらかが心配性で、どちらかが挑戦させたいというギャップがある夫婦の話はよく聞きます。

そもそもそれほど違う価値観を持った2人が、惹かれ合って結婚するということ自体がとっても不思議なことですが、違うからこそ惹かれ合うという部分もあるかもしれません。

アドラー心理学では、人はそれぞれ自分だけのオーダメイドのメガネをかけていて、いつもそのメガネを通して物を見ているという考え方があります。

つまり、価値観や考え方はそれぞれという当たり前のことではあるのですが、問題はそのメガネの存在をそれぞれが忘れてしまいがちということです。

例えるならこっちは普通のメガネで相手がサングラスをかけていたら、そりゃ見え方が違うことも理解できますよね。

物理的にかけているメガネははずことができますが、価値観や考え方のメガネははずすことが難しいどころか、そのメガネを通じて見える世界が、いつしか当たり前となり、それがみんなにとっても当たり前だと感じてしまいます。

自分からしたら絶対にこれが正しいと思うのに、なぜ相手は違うものが正しいというのか?

それはかけているメガネが違い、見えているものが違うからです。

今回の質問の場合で考えると、例えば公園にある大きなすべり台を夫婦でそれぞれが見た時。

「心配性」のメガネをかけた妻には「ケガをするかもしれない危ないもの」に見えて、「挑戦バンザイ」のメガネをかけた夫には「楽しい経験が出来る魅力的なもの」に見えるというような具合です。

そう考えれば、2人が子どもに言うことが違うのは納得がいくのではないでしょうか?

ただ、だからといってそのまま違う状態のままではいられないことだってあります。

そんな時はどうしたらいいのでしょうか?

夫婦で歩み寄るにはどうすれば良いか

改めて夫婦の目的を考えてみると、心配性の妻は子どもがケガをしないために止めていて、挑戦させたい夫は子どもの成長のために促しています。

しかし、いずれも「子どものため」というところでは一致していると考えられます。

そして、どっちの考えも間違っているとは言えないでしょう。

であれば、まずは夫婦の間でどちらの方が正しいか?という議論は必要ないですよね。

得てしてこういう時にはお互いに自分の方が正しいと主張してぶつかり、論破することで自分の主張を通そうとしてしまうことが多いと思います。

そこを冷静に考えて「対話」というステージにあがることをおすすめします。

対話とは、互いの意見をしっかりと聞き、受け止めることがベースにあります。

もちろんその時に相手がなぜそういう考えに至ったのか?ということに思いを馳せて共感することも必要です。

興味を持つべきは相手の意見のいいところです。

例えば夫の立場でいえば、挑戦することが優先だと思いますが、ケガをしないという安全を考慮することにも良さはありますよね。

そこに目を向ける冷静さを持つ努力はしましょう。

その先にある落としどころについては、いくつか考え方があると思います。

まず、互いの主張を受け止めた上で、「今回はどうするか?」というところにフォーカスしてみることもひとつです。

どっちも間違っていないのであれば、どちらの意見を選択しても問題はありません。

そう考えれば、今回は相手の意見を尊重してみる、つまり譲り合ってみるということもあり得ることだと思います。

さらには、両方の考えを踏まえて、第3の選択肢を考えることもいいですよね。

もっと言えば、無理に夫婦で結論を出さずに子どもの選択を聞くこともできます。

どうですか?そう考えると選択肢が広がったと思いませんか?

夫婦の意見が違うことに対して、それでは子どもが迷ってしまうという意見を持つ人もいると思います。

もちろん、それも否めないところではありますが、一方では、いろいろな考え方もする人がいることを知る大事な経験とも考えられます。

そういった違う二つの選択肢を知ることで価値観が広がり、また、その時に夫婦が互いの意見を尊重している様子が伝われば、違った意見を持ってもいい、それをどう折り合いをつけていけばいいのか?というケーススタディにも繋がるのではないでしょうか?

アドラー心理学は常に未来志向。

現状を踏まえて、ここからどのように仲良くしていくかを考える特徴があります。

夫婦で意見が違うことを憂うのではなく、違う意見があることを強さに変えていくことができれば、家族はより豊かな時間を過ごせる可能性は広がってくことをぜひ伝えたいと思います。


熊野さん、ありがとうございました!

改めておさらいすると…

ポイント

  • 夫婦の意見が食い違うのはお互い違うメガネをかけているから
  • 相手の意見のいいところに興味を持ち、論破するのではなく対話をする
  • 意見が違うことで価値観が広がることに気づき、強みに変えていく

熊野さんによると、今回の質問は「どうやったら人は仲良くなれるか?」ということがきっかけでうまれて体系化された、アドラー心理学の原点とも言える問いだということです。

一番近くにいる夫婦という存在だからこそ仲良くなりたいものですが、なんだか一番難しいものですね。

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