“夫婦はたくさん会話をした方がいい”という話はよく聞きますが、うまく話ができない状態では意味がありませんよね。
そこで今回はアドラー心理学を基にした子育てメソッドを広めているアドラー式子育ての熊野英一さんに、夫婦の会話に悩める人からの質問に改善方法など回答していただきました!
夫婦の会話を男女差で片付けない
妻との会話が苦痛になることがあります。
主語もなく、突然話が始まり、こちらの興味の有無などお構いなしで速射砲のように話が止まりません。
断片的な情報から全体像を想像し「それは、ここが問題なんじゃない?」「じゃ、こうすれば?」と提案すると機嫌が悪くなります。
解決策は聞いていない、と。
「え、じゃ、この時間は一体なんだったの?」
さすがに最近は、火に油を注ぐようなこんなツッコミは控えることができるようになりましたが、最近、5歳になる娘の話し方が妻とソックリになっている気がして、家庭で男ひとりの私は、どうしたら良いのか?
女性との会話を上手にこなすためのアドバイスをお願いします!
「男脳・女脳」のような脳のつくりの違いと男女の言動傾向の違いを取り上げた本や、「話を聞かない男、地図が読めない女」というようなタイトルで男女の違いを面白おかしく描写する本がよく売れます。
私は、性別で人間を二つに分けて理解するのはジェンダー・バイアスにつながる可能性をはらんでいることから、実生活で異性と接する際に、この類の本の内容をやみくもに当てはめることには慎重でありたい、という立場を取ります。
しかし男と女がまったく異なる生き物であることも間違いありません。
女性の性染色体がXX型であり男性のそれがXY型と異なることにより、性器のような器官が異なり、一部では脳に男女差があるという研究の結果もあります。
また、男性ホルモン、女性ホルモンの分泌量が異なることや生理の有無が、男女の行動特性の差として現れるのは事実でしょう。
ただし、こうした生得的な性差は平均的な男と女の違いの傾向を示しているだけです。
私の立場は、こうした平均的な性差だけをもって「男と女は違う」と主張することではありません。
むしろ注目すべきはその先です。
つまり、女性の中にも社会文化的に「男っぽい」と思われる特徴を有する人もいれば、男性の中にも「女っぽい」振る舞いを自然にしている人もいる、というように、性別に関わらず、一人一人の人間はそもそもまったく異なる個性、ライフスタイルを有しているという点を大切にしたいのです。
ですから、妻や娘との会話上の悩みを「男と女の問題」として捉えないようにしてください。
夫婦のコミュニケーションを効果的に改善するには
コミュニケーションは「わかってほしい!」のせめぎ合いです。
相手に理解を求める気持ちに男女の差はありません。自分の思いをわかってもらい、同様に相手の思いをわかるために、人間は言葉を獲得しました。
「言う」と「聴く」の繰り返しがコミュニケーションの本質です。
もし、夫婦間でコミュニケーションの課題を抱えているのであれば、相手を責める前に、自分の「言う(伝え方)」と「聴く(捉え方)」を改善してみる方が、よっぽど効果的に課題解決につながるでしょう。
そして、夫婦がともに、家族間のコミュニケーション改善を図り、仲良く穏やかな会話を楽しんでいる姿を子どもに見せることができれば、これ以上、ステキで、かつ効果的な、子どもへの教育方法はないのでは?と思います。
だって、子どもに一番伝えたいことって「自分の意見を大切にしながら、他者にも思いやりの気持ちを持って、家族や友達、社会の多様な人たちと、自分らしく楽しく、幸せに生きていくこと」じゃないですか?
5つのポイントで夫婦の会話すれ違いを無くそう!
2020年12月に出版した「急に『変われ』と言われても」(小学館クリエイティブ)に、夫婦の会話の難しさについて、パートナーシップの専門家である林田香織さんと話し合ったやりとりが掲載されています。
その時に私が提案した「夫婦の会話の5つのポイント」をご紹介しましょう。
- 挨拶をしっかりしよう
- 相手の状況をちゃんと考えよう
- 目的を最初に伝えよう
- 共感ファーストを実践しよう
- 感謝を伝えよう
親しき中にも礼儀あり。
まずは、家族間で「おはよう」「おやすみ」「いってらっしゃい」「お帰りなさい」と言った基本の挨拶がおろそかになっていないか、確認しましょう。
次にこちらの都合だけを押し付けずに、相手が忙しくないか、こちらの話を聴く時間と心のゆとりがあるかを、お互いに確認するようにしましょう。
そう、普段、会社で「ちょっといいですか?」と声をかけているように。
「アドバイスが欲しいのか?」「ただ聴いて欲しいだけなのか?」これからの話に自分が何を求めているのか、会話の目的を最初に相手に伝えれば、夫婦の会話のすれ違いはかなり減ると思いますがいかがでしょうか?
そして、私のコラムではおなじみの「共感ファースト」です。
相手の話の内容に同意できるかどうかは、一切関係ありません。
あなた自身の意見表明は、一旦控えましょう。
そして先ずは「相手の目で見て、耳で聴いて、心で感じる」という共感的態度で話を聴きましょう。
相手の関心に関心もって接すれば、その次にあなたがどう思うかを伝えても相手は聴く耳を持ってくれる可能性は高まります。
他者との関係を円滑にする最もパワフルな言葉は「ありがとう」です。
そこにいることが当たり前になりすぎている家族だからこそ、意識的に感謝の気持ちを言葉でしっかりと伝えるようにすることで、こうした会話のルールも守りたい気持ちも高まるものです。
もう一度、5つのポイントを読み返してみてください。
夫婦だけではなく、きっと5歳の娘だって、保育園や幼稚園で先生やお友達と、同じようなことを日々、実践しながら身につけようとしているのでは?
最後にもうひとつ。
「タイム・トゥ・トーク(TTT=Time to Talk)を大切にしなさい」
これは、私のアドラー心理学の師匠であるヒューマン・ギルド代表・岩井俊憲先生の、そのまた師匠であるペルグリーノ博士(モントリオール個人心理学研究所所長)のセミナーに参加していた時に、教えてもらった言葉です。
「大切な人と語りあう時間を持ちなさい。いつも“TTT”と頭の中で唱え、意識しなさい」というアドバイスでした。
「家族だからいわなくてもわかるだろう」というのは、甘ったれた幼稚な考えです。
言葉を惜しまずに、意見の相違を恐れずに、素直に気持ちを伝えあう努力を怠っていては、夫婦や親子のコミュニケーションの課題(アドラーでは“愛のタスク”と言います)」を克服することはできません。
熊野さん、ありがとうございました!
ポイント
- コミュニケーションは「わかってほしい」のせめぎ合い、男女差は考えない
- 夫婦の会話の5つのポイントを意識
- 家族でも話さなくてはわからないことがある
参考になりましたでしょうか?
ちなみに熊野さんが夫婦について書いた最新刊「夫婦の教科書」の発売日が、10月15日と決定!
こちらも要チェックです!
また、熊野さんのアドラー式子育ての講座では、親子、夫婦だけでなく、様々なシチュエーションで役立つコミュニケーションのコツを学ぶことができます。
気になった方はぜひチェックしてみてください!
また、このように調べてほしい!聞いてほしい!という質問や悩みがある方は、パパしるべの問い合わせフォームからメッセージを送ってください。