夫婦だからこそ、言わずともわかってもらいたい時だってあるかもしれません。
でも、コミュニケーションの基本はやっぱり会話。
夫婦であろうとお互いにちゃんと言葉で伝えて欲しいところですが、なかなかそうはいきません。
今回は「妻の気持ちが分からない」という夫の悩みに対して、コミュニケーションの専門家でアドラー式子育ての熊野英一さんに、どう対応したらいいのかアドバイスをいただきました。
夫婦ともに心の内を察することは難しい
妻のことで悩んでいます。
普段は明るいタイプですが、時々あからさまに不機嫌な時があります。
人間なのでそんなときもあるとは思いますが、理由を聞いても教えてくれません。
自分が何か原因だったのであれば改善しますし、相談もしたいのですが、話してくれないことにはどうにもできなくて困っています。
どうしたらいいでしょうか?
おっしゃるとおり、人間ですから常に同じテンションでいるのはなかなか難しいこと。
ほんのちょっとしたことでも機嫌が悪くなってしまうことはありますよね。
これを仕方が無いことだと考えるのはとても大事です。
まず、前提として「女性ってこういう感じだよね~」と思いがちですが、実はお互い様。
男性だって気がつかないうちに同じようなことをしているケースは結構多いと思います。
もしかしたら、質問者の妻も同じ事を思っているかもしれないのです。
なので、先入観を持たずに考えていきましょう。
客観的にこの状況を見て、まずは妻と夫、両方に共感してみましょう。
妻はおそらく「言いたくない」「言わなくてもわかってほしい」と思っているように感じます。
もちろんそういう気持ちには共感できます。
一方で夫の「言ってくれないとわからないから言ってほしい」という気持ちも充分に共感できるでしょう。
ただ、この状況で考えたときに、どれほど努力をしてもどれほど特別な修行をしても、言ってくれない人の本当の気持ちを察することはできません。
エスパーでも無い限り。
一方で、言いたくない気持ちがあったとしても、言うことで相手に思いを伝えることはできます。
であれば、やはり言葉にして伝えることは、意思疎通を図る上では必要なことだと考えられますよね。
そしてこれはお互いに同じです。
妻が言わない理由。その裏側の気持ちとは?
では、なんであえて「言わない」という行動を選択しているのでしょうか?
先ほども書いたように、察することが不可能な中では言った方が伝わることは間違いないのに。
その裏側には「怖い」という気持ちが見え隠れしているように感じます。
言葉で言うこと、つまり思いを主張することには、明確に反対される可能性もあります。
そもそも主張が間違っていると指摘されることも考えられます。
つまり、せっかく言ったのに断られたり、批判されたり、違う意見をぶつけられたらどうしよう?という怖さを感じることがあります。
そんな、思い通りにいかなかったらどうしよう?という思いが勝手な妄想で大きくなってしまったら、それは言わずに進めたくもなりますよね。
何も言わなければ、自分の意見が否定されることはまずありません。
自己防御的な目的の表れとも考えられるのです。
ちょっとタイプは違いますが「これが普通でしょ?」という押しつけもまた普通という言葉を借りて相手をマウントして否定されないようなやり方で、恐れから来ているものと考えられますよ。
ただ否定されるのが怖いからといって、互いに言葉にしないでいても、何の解決にもなりません。
やっぱりそこは大人として、できるだけ言葉にして伝える必要はあるでしょう。
では、どうしたらいいのでしょうか?
夫の立場で考えると、まずは言いたくないという妻の気持ちに共感した上で、「私にわかってほしいことがあるなら言葉で伝えてほしい」と自分の気持ちを率直に伝えましょう。
この時に「あなたが言わないからわからない」というように相手を否定する必要はまったくありません。
「言いたくない気持ちはわかるけど、それだとここからうまくいかないから、望む結果にはならないかもしれないけど、言ってほしい」と伝えてみることをおすすめします。
そもそも、言いたいことを言わないのは、過去に自分がちゃんと話を聞かなかったり、否定したりしたことで言わなくなってしまった可能性だってあります。
言わないことをダメだと責めるのではなく、あくまでこれから良くなるためという目的を共有して、こうしていこうという提案をしたらいいんじゃないでしょうか?
最も近い関係の夫婦だからこそ、互いにわかってくれるんじゃないかと期待してしまうところもありますが、近い関係だからこそ丁寧に言葉で伝えるコミュニケーションをすることが余計なすれ違いを生まないためにも大切だと思います。
熊野さん、ありがとうございました!
改めておさらいすると…
ポイント
- 男女に関わらず、察することは無理なので、お互い言葉にちゃんと伝える
- 言いたくない妻の気持ちに共感した上で、言ってほしいという自分の気持ちを伝える
- 言わなかったことを責めるのではなく、これからのためという目的を共有して言いたいことを伝えるように一緒に努力していく
仕事をはじめ、家以外のところでは、言いたいことをグッと飲み込まないといけないことがたくさんあると思いますから、せめて家の中では言える関係でいたいですよね。
また、熊野さんのアドラー式コミュニケーションの講座では、家庭はもちろん仕事でも使えるコミュニケーションのコツを学ぶことができます。
こちらも気になった方はぜひチェックしてみてください!