子どもへの虐待なぜ増えている?親の心理をアドラー心理学で紐解く

以前から社会問題のひとつとされてきた、子どもへの虐待

新型コロナウイルスの感染が広がり、制限された生活を送ることが多くなって以降、さらに増加しています。

今回は、コミュニケーションの専門家でアドラー式子育ての熊野英一さんに、アドラー心理学の視点から見た子どもへの虐待について、親の心理や対処方法などを聞きました。

虐待の原因を探っても解決にはならない

ニュースで児童虐待のことを見る度に本当に心が痛みます。

多くの場合、こういった事例を聞くと、その原因はなんなのか?と思いを巡らせると思います。

しかし、アドラー心理学においては、原因を追及するという形のアプローチはしません。

例えば、子どもへの虐待の加害者の多くである親が、かつて幼い頃に虐待を受けていた経験があることなど過去に原因だと考えられることがあったとしても、過去を変えることは出来ず、あくまで解説にしかならないと考えます。

アドラー心理学の原理原則は「目的論」。

つまり原因を探るのではなく、目的を考えます。

一口に児童虐待といっても様々なケースがあると思うので、あくまで一般論についての推察になる前提ですが、子どもへの虐待を行うケースの多くは、心が健全ではなく、勇気がくじかれている状態にあると考えられます。

特に自己受容。

ありのままの自分を受け容れることが出来ていないと想像します。

高い自己理想を掲げて、そこに到達できないことで自分をダメだと感じる。

そしてそんな自分を許すことができないままに、発達途上で未熟な我が子に対しても同じようにダメだと捉えて罰しようとするところがあるのではないでしょうか?

そう考えると、まずは、親自身がありのままの自分を受け容れ、認めて癒すことが必要だと考えられます。

もしかしたら、誰かに「ダメでもいいんだよ」と言ってもらいたいという目的が根底にあるとも考えられるかもしれません。

また、共感することが基本なので、虐待をした人に対してもその思いには共感することが大切です。

ただし、虐待したということに対しては同意をする必要はありません。

しっかりと共感と同意を分けることは忘れずに。

親は自らを認めてご機嫌になることを心掛けよう

では、どうしたらいいか?とても難しい問題です。

まずは、児童虐待をしている人の性格(アドラー心理学ではライフスタイルと呼びます)を見つめて、不適切な思い込みがないかを知ることや、本当の目的を知ることで改善する方法は見えてくるかもしれません。

時間がかかることかもしれませんが、決めるのはその人自身なので、本人が変わらないと解決には至らないと思います。

児童虐待をしている人に他の人からダメだと言っても仕方ありません。

また、もう少し広い視点で見ると、社会の空気も変えていった方がいいと考えられます。

経済成長を重視して、仕事をすることや利益を出すことにフォーカスしてきた中で、心をおざなりにされてきた傾向があるようにも感じます。

その結果、多くの人が疲弊してしまい、こわれつつあるようにも感じます。

これは虐待に限らず、いじめやハラスメントが増えていることにも繋がっているとも考えられるので、今こそ見直すタイミングではないでしょうか。

そして、児童虐待は他人事ではありません。

同じように追い詰められてしまった場合には誰しもしてしまう可能性があります。

だからこそ、まずは自分自身の心の健康や体の健康に、もう少し気を遣うことから始めてみることがおすすめです。

自分がご機嫌の状態であれば、家族やパートナー、同僚など半径1mから5mにいる身近な人たちに対しても穏やかに接することができますよね。

それが連鎖することで、身近な空間が穏やかになることに繋がります。

ならば、自分自身との付き合い方を見直して、とにかく自分がやりたいことをして自分のご機嫌をとることを考えてみましょう。

その方法はそれぞれで、運動でも、趣味に興じることでも、おいしいものを食べることでもいいと思います。

例え何かがうまくいかなくても、そんな自分を認めて、受け容れ、そして、ご機嫌であることを心がける。

これは今すぐ出来ることです。

そういうことができる人が増えたらきっと変わってくると思います。

周りの人を変えることはできません。

まずは自分から動き始めてみてください。


熊野さん、ありがとうございました!

改めておさらいすると…

ポイント

  • 虐待をする人は、その人自身の心が健全ではない勇気がくじかれた状態
  • 虐待をしていることを責めずに、共感し、本当の目的を考えてみる
  • 他の人を変えようとするのではなく、まずは自分を見直し自分の機嫌を取る

これまで、周りの人の機嫌を取ることや周りに気を遣うことが大切だと感じていた人は多いと思います。

でもその前にまずは自分の機嫌も大切なんだということは、なかなか気づきにくいですよね。

無理をして周りばかり見ずに自分を見るように心がけていきましょう。

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