子どもが何人か欲しい!という人はたくさんいると思います。
でも大変なのが、生まれた時に誰もが経験する上の子の「赤ちゃん返り」...!
今回はアドラー心理学に基づくコミュニケーションの専門家でアドラー式子育ての熊野英一さんに、子どもが「赤ちゃん返り」する理由やそんなときの対応の仕方を教えてもらいました。
赤ちゃん返りはキャラ設定の途中経過
3歳の次女が産まれてから、5歳の長女の情緒が不安定になることが増えました。
完璧主義傾向のあるママに似たのか、失敗を過度に恐れて、最初は楽しんでいたはずのピアノや水泳などのお稽古も「できないところを先生や友達に見られたくない」と「影練(隠れて練習すること)して、できるようになってから行く」と言います。
一方、いわゆる「赤ちゃんがえり」が発動し、お着替えなど簡単にできることまで「できない!」と駄々をこねて親を困らせるような日もあり、私は振り回され気味。
どうしたら良いのでしょうか?
愛する娘の言動に、右往左往してしまうパパの健気な様子が目に浮かびます。
親としてどう対応すべきか?
を考える上で、まず、子どもはどのように人格を形成していくのかをわかりやすく説明します。
子どもは、毎日、親や兄弟といった周囲の他者との対人関係の中で「自分のキャラ(人格)」を確立すべく試行錯誤を重ねています。
アドラー心理学では、概ね10歳頃までの間に、子どもは、甘えてみたり、頑張ってみたり、あるいは引っ込み思案なふりをするなどして、どのような行動が自分の「目的」を達成する(例えば、玩具を手に入れる、称賛を得る、失敗を避けるなど)ことに有効なのか、自分なりの成功パターン(つまり、自分にとって心地よいキャラ)を繰り返しながら身につけていくと考えます。
ご質問のパパの長女は5歳ですから、今まさに、トライ&エラーを繰り返しながら、自分にふさわしいキャラを探しているところです。
この時に大きな影響を与えるのが、パパ、ママそれぞれのキャラや、それによって出来上がる家族の価値観や雰囲気、そして兄弟姉妹の有無やそのポジショニングです。
ママが完璧主義傾向にあるとのことですから、このママのキャラがベースになっている家族の価値観や雰囲気(例えば、何事も「ちゃんとやる」「早くやる」「言うことを聞く」とほめられ、そうできないと叱られる)が、長女の人格形成に何らかの影響を与えている可能性は高いですね。
実際、本来は「失敗したり、教えてもらったりする場所」であるはずのピアノやプールのお稽古の場で、先生や友達に完成途上の自分を見せることを嫌がり「影練」をしたがる、というのは、典型的な完璧主義者の思考回路です。
もちろん、負けず嫌いで努力を惜しまないそうした姿勢をプラスに見ることもできますが、過度に失敗を恐れるようになると、ズルをしようとしたり、「100点取れないなら0点と一緒!」みたいな極端な考え方に傾倒し、むしろチャレンジを避けるようになるかもしれません。
これに加えて、2歳違いの妹が産まれた、となると、長女の心中は穏やかでないかもしれません。
それまで「ひとりっ子のプリンセス」として家庭内に君臨していたのに、ある日突然、自分よりも可愛らしく、家族全員の注目を一斉にあびる次女が家庭にやってきたのですから!
今まで以上に、家族の価値観を忖度して「しっかり者の、できる長女キャラ」を極めようとするかもしれませんし、何らかの挫折を大げさに捉えて自己否定感が強まり「(できないことで注目を得ようとするような)長女だけど甘えんぼキャラ」を選択したり、家族内のギスギスした雰囲気を緩めようと「お調子者キャラ」を選択することもあり得ます。
上の子のありのままを受け容れよう
では今、私たち親にできることは何でしょうか?
子育ての目的は、子どもの自立を支援することです。
子どもへの対応で何か迷いが生じたら、いつも「今、目の前にいる子どもにどんな関わりをすれば、この子の成長・自立にとってプラスになるか?」を自問しましょう。
この子は、今、ありのままの自分らしいキャラを探しているところです。
そんな時に、自分の気持ちを無理に押し殺して親に合わせようと強要したり、兄弟姉妹で無駄な競争をあおったり、不完全な状態ではダメだと思い込ませるような経験をさせていませんか?
こうした対応を繰り返していると、子どもの勇気はくじかれ、自分らしくないキャラを選択し、そのキャラを更にひねくれた形で使うようになってしまいます。
その子の「ありのままの姿」を受け入れましょう。
不完全な部分、苦手な部分があることを素直に認められるように、過度に結果にこだわるのをやめましょう。
不完全でも存在価値があり、十分に愛されていることを事ある毎に伝えましょう。
兄弟姉妹で比較したり、過度に性別や誕生順位で役割を強要したりすることを控えましょう。
そうすれば、長女の情緒はすぐに安定し、穏やかで健やかに、その子らしい成長を見せてくれることでしょう。
熊野さん、ありがとうございました!
改めておさらいすると…
ポイント
- 10歳くらいまでに自分の成功パターンを見つける
- 親の価値観が子どものキャラ作りに影響する
- ありのままの姿を受け入れることで安定する
子どもが起こすいろいろな困る行動には目的があるんですよね。
親としては過敏に反応しちゃうと思いますが、そこはグッとこらえて…大変だけど頑張りましょう!
また、熊野さんのアドラー式コミュニケーションの講座では、家庭はもちろん仕事でも使えるコミュニケーションのコツを学ぶことができます。
こちらも気になった方はぜひチェックしてみてください!