育児や介護などに理解があり、会社の成果も上げる上司「イクボス」を生み出したNPO法人ファザーリング・ジャパンが新たな上司像を探る「推しボス★プロジェクト」。
その総決算が11月25日、26日に行われた「ファザーリング全国フォーラムin北海道」の分科会として行われました。
これまでもその真実にせまって来たパパしるべ編集部の「POR」(パパしるべ推しボス調査班)は、なんと北海道へ!
そこで発表された意外なアンケート結果とは!?
冬の札幌が熱くなったパパたちの2日間
このシリーズは、いつもの記事とはテンションがだいぶ異なることをどうかご理解いただけると助かります。
冬の札幌はまぶしい。
中心街にある観光名所大通り公園ではイルミネーションが輝き、冷たく澄みきった空気の中で一層際立っている。
とはいえ、現地の人によると、例年よりは冷え込みが厳しくないという。
それはもしかしたら、このイベントのせいかもしれない。
父親支援のNPO法人ファザーリング・ジャパンが、全国各地の自治体と組んで実施してきた「ファザーリング全国フォーラム」。
今年の舞台となったのが他でもない北海道の札幌である。
日本中で男性の子育てを取り巻く環境について、熱い思いをもって活動している人々が集結したのだ。
2日間にわたって開催されたフォーラムは、サイボウズ株式会社の青野慶久社長による講演などが行われたメインステージの他に、様々なテーマで分科会が行われた。
そのひとつが、我々が追い続けてきた「推しボス★プロジェクト」に関するモノである。
タイトルは「イマドキ部下や学生たちが求めるボス像とは~『推しボスプロジェクト』に見る、これからの上司と部下・チームのカタチ」。
果たして、どんなカタチが見えてきたというのだろうか?
我々は会場にこっそり会場に潜入した。
このシリーズではすっかりおなじみ、ファザーリング・ジャパンの理事で推しボス★プロジェクトの仕掛け人である塚越氏である。
もちろん今回もメインキャストとして、小気味よいトークで分科会を進行する。
プロジェクトの概要が終わると、驚きのデータが発表された。
それは、この数ヶ月にわたって独自に行われてきた「推しボスの条件」に関するアンケートの結果である。
10代の学生から中高年まで幅広い世代と様々な立場の人たちを対象に、それぞれが考える「こんなボスなら推せる」という条件を聞いてきたのである。
まずは、全世代の上位10項目がこれだ。
「こんなボスなら推せる」ベスト10
- 1位:考えが柔軟
- 2位:仕事をサポート・バックアップしてくれる
- 3位:チームをひっぱっていってくれる
- 4位:部下・後輩にやさしい
- 5位:情に厚い・親身になってくれる
- 6位:頭がきれる
- 7位:コミュニケーション能力が高い
- 8位:ポジティブシンキング
- 9位:責任感が強い
- 10位:部下・後輩を鼓舞してくれる
正直、項目を見る限りでは、それほど予想できないようなものではないが、1位が「考えが柔軟」というのは、時代の流れのようにも感じる。
古いドラマなどをイメージして上司像を考えると3位に入ったような「チームをひっぱっていってくれる」というものが圧倒的な1位のような印象があったからだ。
重視しているポイントでジャンル分けをするとすれば・・・
バックアップ重視
- 考えが柔軟(1位)
- 仕事をサポート・バックアップしてくれる(2位)
リーダーシップ重視
- チームをひっぱっていってくれる(3位)
- 頭がきれる(6位)
- 責任感が強い(9位)
- 部下・後輩を鼓舞してくれる(10位)
人柄重視
- 部下・後輩にやさしい(4位)
- 情に厚い・親身になってくれる(5位)
- コミュニケーション能力が高い(7位)
- ポジティブシンキング(8位)
多少の偏りはあるものの、それぞれのタイプがほどよくランクインしている状況から、全体的なバランスが重要であると塚越氏は分析していた。
しかし、問題はここからである。
40代以上とは違う20代以下の圧倒的1位
この結果を塚越氏はさらに深く分析。世代ごとのランキングを割り出すと、そこには大きなギャップが見えた。
まず、40代以上の上位10項目は見ると...
40代以上
- 1位:考えが柔軟
- 2位:チームをひっぱっていってくれる
- 3位:仕事をサポート・バックアップしてくれる
- 4位:コミュニケーション能力が高い
- 5位:頭がきれる
- 6位:責任感が強い
- 7位:公平性が高い
- 7位(同率):ポジティブシンキング
- 9位:部下・後輩を鼓舞してくれる
- 10位:情に厚い・親身になってくれる
全体のランキングと大きなギャップがないように感じるかもしれない。
続いて、20代と10代のランキングを見てほしい。
20代
- 1位:部下・後輩にやさしい
- 2位:仕事をサポート・バックアップしてくれる
- 3位:情に厚い・親身になってくれる
- 4位:チームをひっぱっていってくれる
- 5位:メンタルケアが手厚い
- 6位:考えが柔軟
- 7位:部下・後輩を鼓舞してくれる
- 8位:温和
- 9位:責任感が強い
- 10位:ポジティブシンキング
10代
- 1位:部下・後輩にやさしい
- 2位:考えが柔軟
- 3位:チームをひっぱっていってくれる
- 4位:情に厚い・親身になってくれる
- 5位:仕事をサポート・バックアップしてくれる
- 6位:頭がきれる
- 7位:コミュニケーション能力が高い
- 8位:ポジティブシンキング
- 9位:メンタルケアが手厚い
- 10位:公平性が高い
両世代で圧倒的な1位だったのは「部下・後輩にやさしい」。
実に20代では回答の2割を超えています。
しかし、振り返ってみれば40代以上のランキングにここは入っていない。
他にも「メンタルケアが手厚い」「温和」「公平性が高い」といった40代以上には入っていない。
これは明らかに大きなギャップである。
客観的な印象ではあるが、やはり10代20代のいわゆる若い世代からは豪腕を振るうようなボスが求められていないように感じられる。
しかし、塚越氏はさらに深い分析のうえ、こう語った。
『部下・後輩にやさしい』という項目が1位だったからといって、安易に『甘い』『優しい』ということばかりが求められるとは言えない。
なぜなら、『チームをひっぱっていってくれる』などのリーダーシップ重視の項目や、『考えが柔軟』などのバックアップ重視の項目もまた上位に入っていることも見逃せないからだ。
やはり推される上司像にはバランスが重要であることは、変わらないところもある。
なるほど、確かに納得できるところだ。
とはいえ、やっぱり「やさしい」が上司の条件でトップになることからは、時代の変化を感じざるを得ない。
推しボスたちのその後
分科会では、10月に行われた推しボスアワードの報告もされた。
その中では、受賞者から届いた感想や後日談が語られたのだが、特に塚越氏がテンション高く紹介したのは「モチベーションを急増させてくれるで賞」を受賞した、有限会社阿久津左官店の後日談。
当日のプレゼンで推薦者の遅澤さんは、上司の遠山さんに対して厳しく教えてくれるボスへの感謝と、その恩返しのために来たるべき左官の全国大会での優勝を誓っていた。
そしてなんと!実際に優勝!
しかも栃木県内の女性としては初の快挙と言うことだ。
「上司と部下がいい関係を築いて高め合い、そして素晴らしい結果を出す。
これぞまさに推しボス!」と塚越氏も興奮を隠せなかった。
他にも、様々な声が紹介された。
学生審査員を輩出した教育機関などの感想としては...
直上の上司に認められるボスは社内で高く評価されてきましたが、部下から推されるボスも社内でもっと評価されるべきだと、このアワードを通じて気づかされた。
法政大学キャリアデザイン学部キャリアデザイン学科 松浦民恵教授
学生たちが会社の採用HPではなかなか知り得ない推しボスの姿を見ることで、未知ゆえの不安を払拭するだけでなく、多様なボスの姿を通じて自分が、ボスに求めるもの、きにしないポイントをより具現化した形で整理できたことに大きな意義を感じています。
株式会社スリール 広報
他にも「ボスのイメージが変わった」「女性が女性を推している姿に勇気をもらった」などの声が多く寄せられたようだ。
また、今回登壇した北海道在住の会社員でパパ育休プロジェクトの河端氏は、推しボスアワードについてこのように語った。
「身近な人を推すのはなかなか気恥ずかしいものでもある。
それができる関係性であることは素晴らしいし、それを踏まえて参加した企業の勇気はすごい。
それだけでも賞に値するのではないか」
さらに北海道の地方公務員で、ここ2年は自らもボスという立ち位置で仕事をしているFJ北海道の関根さんは、自身の経験や熱い思いを語りました。
「かねてから部下が上司を評価する制度がないことには違和感があったので、自分が上司になった時には、部下に自分が目指すことを伝えて、それについて評価してもらうことにした。
結果、いろいろな声を聞くこととなり、気づきになった。
今はボスになりたくないという人も増えているが、こういうボスになりたいと思ってもらえるような姿を目指していきたい。」
「以前は上下という縦関係だった上司と部下の関係が、今は対等に並ぶ形の横の関係に変わることが求められてきている。
役職ではなく役割として分担しているような意識。
そのためには上司が部下のことを理解することだけでなく、部下が上司のことを知ることもまた重要であり、互いに理解し認め合う関係こそがこれからの姿なのではないか。」
なるほど。もはや、共感しかない。
数ヶ月にわたって推しボスアワードを追いかけてきて、感じることがある。
それは、推しボスという考え方を知った人たちの気持ちや姿勢が変化していることだ。
上司と部下、かつては、夜の居酒屋で互いに別々にそれぞれの愚痴を言っていたようなイメージがあったが、推しボスという概念が広がることで、その光景は変わっていくことになるのかもしれない。
そう感じている我々調査班の気持ちも、以前のような推しボスへの懐疑的なものが無くなりつつある。
これも大きな変化なのだろう。
分科会のあと、我々は北海道の雄大な青空のように、なんだか清々しい気持ちになったことをここに報告しておこう。