きょうだいが増えることは家族にとってとてもうれしいことですが、困るのは上の子の「赤ちゃん返り」。
いったいなぜそんなことが起こるのか?
親としてどう関わっていけばいいのか?
アドラー心理学に基づくコミュニケーションの専門家で、アドラー式子育ての熊野英一さんに、上の子が「赤ちゃん返り」する理由と、親の対応方法についてアドバイスをもらいました。
赤ちゃん返りの目的は「注目」
去年、長女が生まれてから、ある程度予想はしていたものの、長男が「アレもできない、コレもできない」と赤ちゃんアピールをしてきます。
最近は、起きるときも泣きながらママを呼び、抱っこしてもらわないとリビングまで出て来られません。
このままで、大丈夫でしょうか?
「大丈夫でしょうか?」という問いに対する答えを先に言えば、「大丈夫です!時が解決してくれます!」と自信を持ってお答えしましょう。
ただし、親の関わり方次第で、解決するまでの時間のかかり方は、かなり変わってくる可能性もあります。
「赤ちゃんがえり」は、とても自然な事象ですので、それ自体に過度に注目し過ぎないよう、気をつけてください。
過度に注目するとは、「なんで赤ちゃんみたいなことするの!やめなさい!」と叱ること、あるいは、「わかった、わかった、抱っこしてあげるから泣かないで!」と、その子の要求に召使いのように何でも従ってあげること、両方をさします。
これらは、両極端の反応に見えますが「赤ちゃんがえりをすることで、親の注目を引こうとしている子どもの作戦にまんまと引っかかり、子どもの狙い通りに注目を与えてしまっている」という意味では、実質的に同じことをしています。
ですから、親がすべきことは、「赤ちゃんがえり」という「注目を得るための不適切な作戦」には乗らずに、「そんなことしなくても、ちゃんとあなたに注目しているよ」と、丁寧に説明してあげることです。
赤ちゃん返りには共感!でも同意はしない
3歳の長男くんの気持ちになってみてください。
彼の目でこの状況(親が下の子ばかり世話を焼いている)を見て、彼の耳でこの状況(下の子が泣くと、すぐに親が抱っこする)を聴き、彼の心でこの状況(下の子ばっかり、可愛がられて、僕には誰も注目してくれない!)を感じてみるのです。
これを「共感ファースト(まず、自分が相手に共感を示すこと)」と言います。
どうですか?
長男くんが、止むに止まれず、赤ちゃんみたいなフリをして、なんとかしてパパとママの注目を得ようとしている、涙ぐましい努力に気づくことはできましたか?
長男くんの「パパとママに注目してもらいたい!」という「気持ち」には、「共感」しましょう。
でも、「赤ちゃん返りして、アピールする」というその「行為」に、「同意」する必要はありません。
その「行為」に「同意」することは、子どもの不適切な要求に応えてしまうことにつながり、その「甘え」を助長することに繋がってしまいます。
「下の子と同じように、君もちゃんと注目してもらいたいんだね!」
「パパとママが、赤ちゃんのお世話に時間を取られて、君には「後でね!」と言ってしまうことが多かったかもね」
「でも、パパとママは、君のことを、とても大切に思っているよ!」
「だから、わざと、赤ちゃんみたいにならなくても大丈夫だよ!」
「普通に、パパ!ママ!と声をかけてね!」
と、穏やかに伝えてみてください。
不適切な方法(赤ちゃん返り)を選択しなくても、適切な方法(普通に、声をかける)を選択すれば良いのだ、と納得できたら、長男くんの「赤ちゃん返り」は、間もなく減っていくでしょう。
熊野さん、ありがとうございました!
改めておさらいすると…
ポイント
- 赤ちゃん返りは親の注目をひくための自然な行動
- 赤ちゃん返りしている子どもに共感!
- そんなことをしなくても注目していることを伝える
赤ちゃん返りだけでなくイヤイヤ期など、周りからは「そのうち落ち着くよ」と言われるものの、当事者からすれば「今すぐどうにかしたい」と思うもの。
でも、あくまで成長過程のことですからグッとこらえて長い目で見て向き合っていきましょう!
また、熊野さんのアドラー式コミュニケーションの講座では、家庭はもちろん仕事でも使えるコミュニケーションのコツを学ぶことができます。
こちらも気になった方はぜひチェックしてみてください!