電車で騒ぐ子どもと、それを注意しない親を見ると「同じ親として我慢しているのに…」とモヤモヤしてしまうこと、ありませんか?
今回は、自分たち親子はちゃんとマナーを守っているのに、好き放題をしている他の親に腹が立つというというパパからのご相談です。
注意すべきかどうかの判断基準や、怒りの背景にある心理、そして他人に振り回されないための考え方を、アドラー心理学のスペシャリストの熊野英一さんが解説します。
電車でうるさい子供に注意した方が良いのか、悪いのか。
マナーと感情のバランスに悩む子育て中のパパ・ママに届けたいヒントが満載です。
うるさい子供に注意することで何が起きるか?
我が家では公共の場所で騒いではいけないと口をすっぱくして言っていることもあって、娘は大人しくしていましたが、途中で乗ってきた同じくらいの年の男の子が大騒ぎをしていました。
しかも親が注意をしない様子を見て、こういう人がいるから子育てしている人の肩身が狭くなると思って、無性に腹が立ちました。
すぐに降りる駅だったので注意はしませんでしたが、少しは注意した方がよかったでしょうか?
電車の中でベビーカーを畳まないパパママに対して、厳しい声があがった「電車内ベビーカー問題」もありましたが、子育て中の人たちにとって、いろいろな人がいる公共の場所での過ごし方は悩ましいものです。
今回は質問をくれたパパ自身が周囲から何か言われたわけではありませんが、モヤモヤしてしまった理由や対策についてお伝えしようと思います。
注意するのであれば礼儀をもって伝える
注意した方がよかったでしょうか?
という質問だったので、まずはそれについて回答をするとすれば
注意しなくてよかったと思います
現場の状況を詳細まで知ることはできないので、あくまで質問を見た範囲での回答です。
理由のひとつはあなたが「腹が立った」と質問に書いていたことがあります。
怒っている状況では、言いたいことを伝えようとした時に必要以上に威圧的になってしまいがちです。
そうなると、そもそも当人以外の電車の中にいる人にとって不快になるケースも十分に考えられます。
もちろん注意をしてはいけないということではありません。
ひとつ深呼吸をして心を落ち着かせてから、穏やかに「もう少し静かにしてもらえませんか?」と伝えることができるのであれば、それもありだと思います。
コミュニケーションは相手に何かを伝えることですが、こちらの言いたいことを一方的に言うだけでは成立しません。
相手にもちゃんと聞いてもらう必要があるので、そこは相手への礼儀を忘れてはいけないのです。
無意識のうちに腹が立つことはない
とはいえ、そもそもマナーが悪い人に対して腹が立つ気持ちにはほとんどの方が共感できると思います。
「みんなが平和に過ごせる公共空間」はみんなが望んでいるものですが、それを無視して自分勝手に行動する人を見たら、それは子育て世代でなくても腹が立ちます。
気になるのは今回「無性に」と書かれていることです。
我々も普段から「つい」という言葉をよく使います。
それは制御できないもの、つまりあくまで無意識のもとだと感じているかもしれませんが、アドラーはこんなことを言っています。
アドラー心理学のポイント
意識と無意識に境界線はない。どちらも一つの目標に向かう力だ。
アドラー心理学の「全体論」では、人の心や意識に矛盾はなく、すべて自分自身であるという考え方があります。
意識することはもちろん無意識も自分自身であり、両者を分ける必要はなく、そもそも分けることなどできないと説いています。
つまり、無意識に腹が立ったわけではなく、理由があるわけです。
では、その理由とはなんでしょうか?
やるべきことは「注意すること」ではなく「模範を示すこと」
自分たち親子は電車のマナーを守っているのに...
先ほども書きましたが、理由の一つは「みんなが平和に過ごせる公共空間」を阻害していることがあると思います。
ただ、今回の場合はそれだけではないと思います。
子どもたちの自由な行動に決して寛容とは言えない社会の状況の中で、あなたは子育てをしていない人の気持ちを汲んで、しっかりとマナーを守っている。
また娘もそれに応じている。
本当は騒ぎたいのにそれを我慢しているんだと思います。
それなのに、自分勝手な親子を見たので「こっちはこんなに我慢しているのに、そっちはなんで我慢しないんだ」という思いが怒りに繋がっているのではないでしょうか。
もちろん、それで腹を立てる気持ちは理解できます。
しかし、一度冷静に考えてみてください。
そのマナーの悪い自分勝手な親子は、あなたとは関係ありません。
また、そういう人がいることが、必ずしも親子連れのイメージを悪くするとも限りません。
もちろん、いいイメージになることはないと思いますが、根に持って「だから親子連れはダメなんだ」という人は一部だと思います。
そういう中で、ちゃんとマナーを守っているあなたたち親子のことを見て「親子連れの中にもちゃんとマナーを守る人がいる」と感じる人もいる可能性は十分にあります。
またマナーを守っていることがことさら評価されるべきかというと、そうでもないかもしれません。
マナーを守ることにとらわれ過ぎてしまうと、もしも子どもが何らかの理由で騒ぎ出した時に、あなた自身が子どもに向かって「マナーを守れ!」と強く言いかねないような気もします。
マナーを守るのは社会生活でとても大切なことですが、そこに縛られ過ぎないこともまた大切なことだと思います。
他人よりも自分たちはどうすべきか考える
直接的に被害を被っていないのであれば、わざわざ注意しにいって、余計な争いを生んでしまったら、それこそ「みんなが平和な公共空間」を害することになります。
マナーが悪い人にフォーカスするのではなく、自分たちにフォーカスしてみましょう。
自分たちがすべきことは何か?
それはきっと、自分たちが公共機関で大切だと思っているマナーをそのままちゃんと守り続けることだと思います。
それはきっと、わが子に対して模範を示すことにもなりますし、周りの人から見てもとても気持ちがいいものです。
関係ない人の行動を改善するために、パワーを使うのはもったいないと思います。
マナーが悪い人に対して湧き出た怒りのエネルギーを、理想の社会を築くために使いましょう。
熊野さん、ありがとうございました!
改めておさらいすると…
ポイント
- 怒っている状況で注意しようとすると、ぶつかるだけで余計な争いをうんでしまう
- マナーを守ることは素晴らしいけど、それにとらわれ過ぎる必要もない
- 関係ない相手にパワーを使うより、自分ができることをすればOK
「最近の親はマナーが悪い」という先輩方の声を聞くことがありますが、実際にそうかどうかはわかりません。
ただ、その声を少しでも減らしたいのであれば、自分がしっかりすればいいということなんでしょう。
みんながそう思えばきっと悪いイメージも減っていくはずだと信じましょう。
著書のご紹介
また、熊野さんのアドラー式コミュニケーションの講座では、家庭はもちろん仕事でも使えるコミュニケーションのコツを学ぶことができます。
「子育てが思い通りにいかない」「仲良くしたいのに夫婦関係がギクシャクしてしまう」「職場の人間関係がうまくいかない」など、悩みを抱える方は自分で解決できるためのコミュニケーション術を学びます。
こちらも気になった方はぜひチェックしてみてください!
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